昨年のスプリンターズSをレコードで完封。さらに、今年の高松宮記念もレコードで圧倒。香港スプリントも含めて目下、重賞4連勝中。短距離界の帝王ロードカナロア。その帝王が安田記念に登場。マイル戦は未勝利。以前、1度だけマイル戦を走って2着。この手のタイプが、マイルのGI安田記念に出走してくることは珍しいこと。それでも圧倒的に多くの競馬ファンは、4.0倍の1番人気で彼を信頼。
対するグランプリボス。マイルの重賞ではGIの朝日杯FSを含めて、NHKマイルC優勝。さらに先のマイラーズC1着。そして昨年の安田記念がクビ差2着。秋のマイルCSもクビ差2着。マイル戦では大将格の馬です。
さらに中・長距離系で実績を残しているショウナンマイティとダークシャドウ。ヴィクトリアマイルで優勝したヴィルシーナも加わって、今年の安田記念は例年よりも色々な意味で豪華版。
1番人気に推されたロードカナロアの岩田騎手は、当面の敵をグランプリボス1頭に絞っていたフシが感じられます。それゆえ“グランプリボスさえ何とか封じられれば勝てる”との思いを、岩田騎手は頭を巡らしながらボス封じ込め作戦を決行。この決断こそが、今回の安田記念の勝敗を左右する大きな分岐点になったような気がします。
スタートで何頭か出遅れるミス。その中にショウナンマイティがいました。大阪杯で1頭ケタ違いの末脚で、あのオルフェーヴルに半馬身差まで肉迫した日本一の豪脚を持つ馬です。私はこの馬のラスト32秒台の末脚に期待の◎。
スタートで飛び出したのがヴィルシーナとエーシントップ。内からカレンブラックヒルも好スタート。今日は何が何でも主導権を取りに行くと、押してムチを入れてシルポートがガムシャラに先頭に立ちます。2番手に控えてヴィルシーナ、エーシントップとカレンブラックヒル。そのあとにガルボ。高速馬場と初めてのマイル戦を意識したのかダークシャドウが早めの作戦。中団のインにサクラゴスペル。それに並ぶようにグランプリボス。そしてこのボスの外にピッタリとロードカナロアがフタをする形で相手を牽制。直後には内にマイネイサベルと外にダノンシャーク。後方にはダイワマッジョーレ、サダムパテック、ナカヤマナイトにショウナンマイティ。
前半3ハロンが33秒9で、半マイル通過が45秒3。過去3年と同じような緩みないペースで進みます。
そして4コーナーで2番手以下を離し気味に逃げたシルポートを追って、内にヴィルシーナとカレンブラックヒル、その外にエーシントップが2番手で仕掛けのタイミングを狙っています。ダークシャドウも直後にいるグランプリボス、ロードカナロアの動きを警戒しつつ前に接近。グランプリボスとロードカナロアの真後ろでダノンシャーク。ショウナンマイティはまだ後方。
直線中程でシルポートは失速。内からガルボ、ヴィルシーナ、カレンブラックヒル、エーシントップ、ダークシャドウが横に広がる展開。最内からサクラゴスペル。ダークシャドウの外からマイネイサベル。その外にからロードカナロア。それをマークする形でダノンシャーク。一方、グランプリボスは外にロードカナロアがいて、仕方なく馬込みの真っただ中に突入。どこか抜け道を探すのですが、どこもあいていなくてインを狙ったもののダメ。それでは外に行こうとしたのですが上手く行かず。
外からロードカナロアが先頭に立ちかけようとしたときに、直後から迫って馬体を併せに来たダノンシャークに馬体をぶつけます。ヒルんで外にフラフラと寄れるダノンシャーク。その寄れたアオリをまともに受けたのがショウナンマイティ。後方から大外をまわり猛追して迫っていたときなので、また外に振られる不利は致命的。
先頭に立ってゴールを目指すロードカナロア。態勢を立て直してグングン迫るショウナンマイティ。脚色は断然ショウナンマイティでしたが、クビ差まで急追したところがゴールでした。
ゴールを過ぎて岩田騎手の腰をポンと軽く叩いて祝福するダノンシャークのC・デムーロ騎手。岩田騎手も顔を見合わせて、なにやら話す二人の騎手。
悔しいのはクビ差届かなかったショウナンマイティの浜中騎手。絶好のチャンスでしたが、単勝、馬単、3連単を取り逃した私も実にショック。ダノンシャークが△だったので3連複は的中でしたが、いやあ、もったいない一戦でした。
それにしても、外からフタをされた形になって、まったく競馬ができなかったグランプリボス。仮にカレンブラックヒルが人気を集めていれば、岩田騎手はこのカレンの外に位置取りしたかも知れず、結果は大きく違っていた可能性があります。そういう意味では、グランプリボスやダノンシャーク、そしてショウナンマイティはロードカナロアの岩田騎手に封殺されたともいえそうです。
ちなみに、ロードカナロアの岩田騎手は最後の直線走路で斜行し、ダノンシャークの進路を妨害したことにより10万円の制裁金を受けました。