ハーツクライにドリームパスポート、メイショウサムソンやレインボーペガサス。そしてトーセンラーにあのオルフェーヴル。ワールドエースなど数々の逸材を送り出した注目の「きさらぎ賞」。
今年は新馬戦を独走し、続くエリカ賞も圧倒的強さで5馬身。バンドワゴンがダントツの1.5倍という人気。対するトーセンスターダムはデビュー戦を首差、京都2歳Sで頭差と接戦をものにして、勝負強さを売り物にこちらも2連勝中。9頭立てということもあって、マッチレース的色合いの強い一戦でした。
スタートで飛び出したのがオールステイ。これを内からセセリが追います。スタートが鈍かったバンドワゴンは3、4番手で、和田騎手が内に入れることを嫌ったのか外に出します。するとスルスルと前に出て、2ハロン目で先頭に立ちます。オールステイは控えて2番手。少し離れてセセリが3番手で、ピークトラムと直後にエイシンエルヴィン。その外にはトーセンスターダムが控えて、出遅れたサトノルパンが最後方から1頭抜いて8番手。
前半の3ハロンが35秒8。バンドワゴンが馬まかせで一気に後続を離して逃走劇。3角では後続に3、4馬身くらいのリード。2番手が変わらずオールステイ。セセリ、ピークトラムが続き、内にエイシンエルヴィン、外で脚を温存する形でトーセンスターダム。その後にブラックカイトで、少し離れてサトノルパン。また離されて最後方をダンツキャノンが追走。
1000m通過が59秒9で、パワーを要する稍重馬場。時計差はおそらく1秒くらいと考えると、明らかに緩みない流れです。
そして4角をまわって悠々とバンドワゴンが先頭。ここから再加速とばかりにアクセルを踏んだ和田騎手。内回りの4角の柵あたりからバシッ!とステッキが入ります。それは結局ゴール前まで続くのです。バシッ!バシッ!バシッ・・。35、36発とステッキが振り下ろされました。
直線中ほどから外から迫ってきたのが武豊騎手のトーセンスターダム。2番手に進出してバンドワゴンを追います。また直線の入り口で外に出せなかったエイシンエルヴィンが進路を内にとって、これも確かな末脚で先に2番手に上がったトーセンスターダムを追います。
3馬身、2馬身、1馬身と迫られたバンドワゴン。和田騎手の振り下ろされる執拗なステッキで、なんとかゴールに逃げ込まんと懸命の粘り腰。迫るトーセンスターダム、その内からエイシンエルヴィン。
結局、内にバンドワゴン、外のトーセンスターダムが鼻面を並べてゴールイン。頭差だけトーセンスターダムの末脚が優っていました。大健闘だったのがエイシンエルヴィン。直線で仕方なく馬場のボコボコした内をついたにもかかわらず、馬場の比較的しっかりしている直線外を走ったトーセンスターダムと、およそ1馬身差は勝ち馬に匹敵する内容だったと思われます。
4番手が3着から3馬身離れてピークトラム。出遅れたサトノルパンは6着。道悪馬場の内々。良馬場向きのタイプのようです。
それにしても、異常とも思える和田騎手のステッキ連発。英国であれば騎乗停止ものです。
代替開催となった東京競馬の月曜日。最終レースが終了して、メインの白嶺Sをレーザーバレットで優勝した横山典騎手と遭遇。
ジョッキーの騎乗談になり「外国人のB騎手はひどいよ。もっと達者だと思ったんだけどなあ……」と、首を捻ります。
そして、きさらぎ賞のバンドワゴンの和田騎手について「なんで、あんなにステッキを入れるんだろうな。オレにはまったくわからない。馬にもよくないしね。うん、絶対よくないな」と、がっかりした様子。
横山典騎手流の哲学を持ち、現役のトップクラスで活躍する日本を代表する騎手。それゆえ一言一句に重みがあるのです。