田辺騎手が凄いことになっています。8月17日現在で52勝。関東関西騎手総合ベストテンの10位。今年はフェブラリーSでコパノリッキー(16番人気)に騎乗。初めてコンビを組みながら見事にGI制覇。ファンの度肝を抜きました。続くG1のかしわ記念も連勝。
そして、福島の七夕賞ではメイショウナルト(5番人気)と初コンビで見事な逃げ切り勝ち。いわゆる“優勝請負人的時の人”となりつつあったのです。
そして今回の関屋記念。田辺騎手はクラレントに騎乗。これも初めてコンビを組むことになりました。それまでクラレントに多く騎乗した川田騎手は小倉の阿蘇Sでタイムズアローに騎乗。また、昨年ずっと騎乗していた岩田騎手が関屋記念はNHKマイルC2着のタガノブルグに騎乗。
そういった周りの環境のなかで、田辺騎手にお鉢が回ってきたのがクラレントだったのです。安田記念で10着、中京記念で8着。ともに道悪馬場に足を引っ張られる形だったとはいえ、全盛時のクラレントを彷彿させる姿はそこにはありませんでした。
ただ、好位から抜け出せる器用さを兼備している馬で、強力な逃げ馬を欠いた今回の関屋記念は、良績ある左回りと合わせて、4番人気と支持するファンの方も少なくはありませんでした。
「先生からは別になにも支持はなかったです。前のビデオを見ていて、折り合いに重点を置いて乗ろうと考えていました」と田辺騎手。
田辺騎手の思いを乗せてクラレントはスタートを切りました。大きく出遅れたエキストラエンド。最内のサトノギャラントも出負けして後方に取り残され形。
ティアップゴールドがスタートから主導権を取りに行きますが、ラインブラッドの的場騎手が先手を主張。その2頭を見る形で1番人気のダノンシャーク。その斜め後ろに2番人気のマジェスティハーツ。その外にはクラレントで好ポジション。ブレイズアトレイル、タガノブルグが中団。その後ろに私の期待馬8番人気のエクセラントカーヴ。
先行するはずのシルクアーネストは何を考えているのか後方の大外。後方インにサトノギャラントがいて、ポツンと最後方をエキストラエンドが追走。
3ハロンが34秒9で、4ハロン、半マイルが46秒5。この流れは一昨年、ドナウブルーがレコード勝ちしたときが35秒0だったことを考えると、重馬場から稍重の馬場コンディション。日本一長い直線の新潟外回り。明らかにオーバーペース。
3角から4角にかけて外からシルクアーネストが仕掛けましたが、ここで脚を温存させたのが田辺・クラレント。このことが最後の最後で生きてきます。
前半1000m通過が58秒1という速いラップを刻んでいきます。直線では後方インからスルスルと浮上してきたのがサトノギャラント。ダノンシャークは馬場中央から抜け出す構えを見せています。
ゴール前200mはすざましい叩き合い。先行した馬が失速する中で内からサトノギャラントが、先頭に立ちかけたダノンシャークに並びかけようとしています。これをみて外に出したクラレントが大きなフットワークで、前の2頭を捉えに出ます。末脚の勢いは断然クラレント。外から一気に抜き去ります。
中団後ろの馬込みにいたエクセラントカーヴが、すぐ前を走るクラレントを急追。クラレントの外側に持って行こうとしたときに、外のシャイニープリンセスとやや接触するようなシーン。
激しい叩き合いの中からクラレントがダノンシャークを抑えて優勝。内で粘るサトノギャラント、大外からエクセラントカーヴが猛追。サトノギャラントがハナ差振り切って3着を確保。惜しかったエクセラントカーヴ。本当に惜しかったです。
クラレントは昨年春の東京、エプソムC以来の勝利。満足顔の田辺騎手。
「今年もまだ半ばです。まだまだ頑張ります。応援よろしくお願いします」と、流れる汗を拭き拭き笑顔を振りまいていました。
「彼は年々上手になって来ていたけど、今年は飛躍的に伸びたね」と、関係者がいう田辺騎手評価。30歳を迎えて大きく翼を広げてきました。