人馬とも初重賞制覇に賞賛の嵐!!
それは初めてのことでした。馬も人も初めてのことでした。ゴール板を過ぎたところで、後ろから走り寄って来た黄色い帽色の男が、日焼けした真っ黒な顔に、際立つ真っ白な歯を満面に見せて「おめでとう!」と、右手を馬上から差し出しました。それに応えて振り向きながら「ありがとうございます」と返し、そして微笑みながら左手でガッシリと握り締めた若き獅子。19歳の松若風馬騎手がいました。 この日、小倉競馬場は夏の祭典「小倉記念」が行われました。1番人気がなかなか勝てない、ハンデ頭が優勝できないと言ったデータがある中で、松若騎手とコンビを組んだ6番人気のアズマシャトル。ともに重賞は未勝利で、初めてのコンビだったのです。 顔触れから一昨年の優勝馬メイショウナルトが主導権を取るだろうと見ていたのですが、なんと先手を主張したのがノボリディアーナ。内から3番人気のウインプリメーラ、その外にバッドボーイ。差なくメイショウナルトが続く展開。その後ろのインにはパッションダンス。1番人気のマローブルーは好位置をキープ。同じような位置にはこれをマークする形で2番人気のベルーフ。アズマシャトルは後方の外で、その内にはクランモンタナが併走。 前半3ハロンが34秒0で、半マイル46秒2、5ハロン通過が57秒9。ケタ違いとは言えないまでも緩みないペースで進みます。 動きがあったのはアズマシャトルが3コーナーから仕掛けて中団の外に進出したときから。4コーナーに向かってギューと後方待機の馬が詰め寄ってきました。ベルーフ、マローブルーも前を射程圏に入れて接近。 逃げたノボリディアーナに直線入り口で並びかけたウインプリメーラ。その直後からパッションダンス。そしてマローブルーとベルーフも末脚を伸ばして来ました。そして、直線大外からアズマシャトルがケタ違いの末脚で猛然と追い込んできました。その破壊力の違いは歴然。あっという間に先頭に立って、そのままグイと突き放してゴールイン。後方に待機していたグランモンタナも鋭い末脚で2着争い。 優勝はアズマシャトル。2着が凄い激戦。クビ・アタマ・クビで、ベルーフ、ウインプリメーラ、グランモンタナ、マローブルー、パッションダンスと続きました。 勝ちタイムの1分58秒0は、良馬場で行われた過去5年で最低。しかも、レースの上りタイムが36秒3と平凡。優勝したアズマシャトルは相手に恵まれた印象があります。とはいえ、ラジオNIKKEI賞2歳Sで、後のダービー馬ワンアンドオンリーの2着した期待馬。足踏み状態が長い間続きましたが、ようやく軌道に乗って来た印象です。秋の中距離路線が楽しみになりました。 レース後、クランモンタナに騎乗した浜中騎手から笑顔と握手のエールを受けた松若風馬騎手。スタンドの歓声にも応えていかにも嬉しそう。 小倉記念を終えた時点で、リーディングジョッキー22位。この初重賞制覇をステップに、一段の活躍が期待できる、夏の暑さに燃える若干19歳の獅子。楽しみです。
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