ヴィクトリアマイルは、単勝1・5倍と圧倒的な人気に支持された2冠の女王ブエナビスタが、絶好の位置から抜け出したヒカルアマランサスを、ゴール寸前で首差捉えて優勝。多くのファンの期待に応えました。
あまり表情に出さず、普段、派手なパフォーマンスを見せない横山典騎手が、高々と左手を上げたかと思えば、ファンのノリ・コールにも応えて、また左手を天に向けてアントニオ猪木よろしく“ダーッ!”さらには何度も何度も自分を鼓舞するようにガッツポーズ。
それは本当に珍しい光景でした。クールなトップジョッキーが見せた勝利の雄叫びに、スタンドから はやんや、の大歓声。
断然の1番人気だから優勝して当然という声もあるのですが、それに応えなくてはならない精神的なプレッシャーは相当なものがあったと思います。
しかもレース後、横山騎手が言うように「帰国後、決して万全の状態ではなかったと思いますし、今日は返し馬のときに、いつもに比べて硬い感じがしました。そのため出が少し悪かったですね。それに勝負どころで反応も今ひとつ。それでも、勝つのだからやはり本当に凄い馬ですよ」、表情は本当に勝てて良かったという安堵感が、こちらにも熱いほど伝わってきました。
そもそも今年のヴィクトリアマイルは、NHKマイルCの日本レコード樹立。そういった高速 馬場の状況下にあって、ハイレベルの時計の決着になることが予測されました。ただし、強力な逃げ馬が不在。前でも対応できる高速馬場に対応できる馬が有利と判断し、
内枠が有利も含めて出した答えがラドラーダ。単勝11・2倍。3番人気とは、直前の阪神牝馬S6着から意外でしたが、結果は残念ながら13着に敗退。何ということだ! これは間違いに違いない、とも考えたくなる結果。マイル戦は5戦で3勝2着2回。昨秋の東京、ユートピアSで典型的な超スローペース。3番手で流れに乗って有利に戦いを進めていたヒカルアマランサスを、中団からカミナリのような末脚でラスト33秒0の破壊力。まさに容赦なく差し切った内容は際立っていました。そのヒカルアマランサスが今回のヴィクトリアマイルで首差2着。
「いやあ、ゲートでボコッと出てしまった。しかも、道中はまったく行くところがなくて、ホントに不完全燃焼の競馬をさせてしまいました」と安藤勝騎手。一瞬の破壊力はブエナビスタともヒケをとらない強烈なバネの持ち主。それゆえ、何とも割り切れない気持ちです。
ブエナビスタの宿敵のレッドディザイア。結果は4着でした。高速馬場を意識して四位騎 手は意識的に早めの作戦。「前が止まらないこの馬場だから意識的に前に行こうと考えていました。それにこの17番枠なので、どうしても仕掛けて行くことになったんですが、その分、少しリキんで走ってしまいました。まあ、ボクが上手に乗っていたらもう少し際どかったと思いますが・・」と悔しそうに四位騎手。
とはいえ、優勝したブエナビスタとわずか0秒1差。枠順がブエナビスタと逆だったらミクロの決着になっていたかも知れません。
同じ日の8レース、500万クラス。優勝したクリールトルネードのタイムが1分32秒9で、2着がラルケットで首差。前半の半マイルが45秒6、ヴィクトリアマイルが45秒5と、ほとんど同じ流れ。ヴィクトリアの1分32秒4の時計と0秒5差。時計的に見て、今年のヴィクトリアマイルはハイレベルだとは考えづらいところです。そこに体調一息だったブエナビスタが優勝した運もあったような気もします。