それは最高の笑顔でした。関屋記念の表彰式から引き上げてきたばかりの北村宏騎手 に「会心のレースだったんじゃない?」と水を向けると、履いていたブーツを洗いながら「はい、ありがとうございます」とにっこり。
この日の新潟の重賞「関屋記念」。1番人気はここ一連の安定した内容からマイル巧者のスピリタス。外回りの芝1,600mで持ち前の豪脚がフル回転するに違いない、という見方が大勢を占めていました。
私も新潟の外回りのマイル戦は、過去一連のデータから差し追い込み馬が断然優勢だったことから考察して、私もスピリタスと同じような脚質のムラマサノヨートーの末脚に賭けたのです。昨秋の東京、紅葉Sで見事なゴール前の一気差し。時計が 前週の重賞・富士Sよりも優秀だったことも後押しの材料で、大いに注目していたのですが・・。
ただ、気がかりだったのが流れで、私の描いた展開は、逃げるのがレッツゴーキリシマ。本当は主導権を取りたいフサイチアウステルが仕方なく2番手。3番手に積極策で米子Sを快勝したタマモナイスプレイと、その後にしぶとさが真骨頂のマッハヴェロシティ。やや平均よりも速い流れだろうと考えました。
ところが、半年ぶりの実戦になるレットゴーキリシマは主導権をとっても、長く休んでいたのでスローには落とせないはず、という見方は間違いでした。フサイチアウステルが最初から諦めたようなレースで、メリハリに欠けるレース。2番手にタマモナイスプレイ、その直後にマイネルクラリティで 坦々とした流れ。
前半の半マイルが48秒2で1,000m通過が59秒7。いかに新潟の外回りとはいえ絶好の馬場コンディションで、重賞のマイル戦としてはスロー、超スローペースといっても過言ではない遅い展開。結局このスローに持ち込んだ北村宏・レッゴーキリシマ。大外から鋭く迫ってきたセイクリッドバレー、その外のリザーブカードを振り切ってゴールイン。スピリタスがスローと人気を意識して早めの位置取りでしたが、外からセイクリッドなどの追い込み馬に差し込まれて6着。それでも勝ち馬と0秒2差。
一方、ムラマサノヨートーも4角が14番手のポジション。さすがに外に出しては間に合わないと感じた のか田中勝騎手が、イン狙いで追い込んできましたが7着同着。ラスト3ハロンを32秒4の豪脚を駆使しても及びませんでした。無念です。
また、このレースで僅差4着だったテイエムアタック。13番人気でしたがラスト32秒0の凄い脚で0秒2差。大収穫の内容です。もっとも、春の新潟・谷川Sでもメンバー最速の33秒4の末脚を披露。続く京王杯SCでもラスト32秒8の最速タイムを計時。6歳牡馬ですが本格化を見せています。ベストのマイル戦では要注目です。
「いやあ、アベコーさん、今年の夏の新潟は散々だったんですよ。勝てそうなレースを取りこぼしたり・・。なんかチグハグでしたね。やっとですかね」と北村宏騎手。
先週は土曜2勝。そのひとつがダリア賞のエーシンブラウン。私も◎で単勝を買って応援 していたのです。
「いい感じの馬ですね。前にも行けるし、ゴーサインを出すと、素早く反応してくれますね。クセのない利口な馬ですよ。確かに完成されている部分はありそうですが、楽しみな馬です。えっ!新潟2歳Sですか、まだ色々調整しなくてはならないので、どうなるかは未定ですね」と北村宏騎手。
暑い夏がピッタリの北村宏騎手。新潟の後半戦が今週から始まりますが、関屋記念の優勝で大攻勢となるのか、笑顔が似合う注目したい一人です。