「中山記念」で圧倒的、断然の1番人気に推されたヴィクトワールピサ。昨年のグランプリ有馬記念で女王ブエナビスタを破り優勝。中山は弥生賞、皐月賞、有馬記念と3戦3勝。春のGI戦線の分岐点、中山記念は長期休養明けの馬がゴロゴロいて、しかもGIを勝った馬が3年前の皐月賞を勝ったキャプテントゥーレたった1頭。そのキャプテンも昨秋の天皇賞以来、4ヶ月ぶりの実戦。
能力、実績、順調さ、勢いでは、どう見てもヴィクトワールピサの相手になるような馬は見当たりません。ただし、ヴィクトワールピサにとっては、3月26日に行われるドバイ・メイダン競馬場の「ドバイワールドC」にブエナビスタと挑戦。その日まで検疫等を挟んで1ヶ月。加えて、今回は久しぶりの芝1800m。ということを考えると、全力投球というよりはドバイに向けてのステップレースという見方ができました。そこに他の馬のツケ入るスキがあるとも考えたのです。
それで、私の狙いは、5番人気のレッドシューター。これまで14戦して5勝し、着外が1回という超堅実型。しかも、芝1800mで8戦して4勝とベストの距離。器用さがあり、中山内回りの1800mは、まさしくピッタリだと考えて◎。打倒ヴィクトワールピサを狙ったのですが、さすがにグランプリ馬、その壁は厚すぎました。
内枠ということもあって、主導権を主張したのがキャプテントゥーレ。昨秋の朝日チャレンジCでも先手を取り圧勝劇。このときと同じ小牧太騎手が騎乗。注目のヴィクトワールピサは有馬記念と同様に好位置をキープと思ったのですが、よほど自信があるのか、後方から3、4番手を進む消極策。
半マイル48秒5、1000m通過が60秒1。開幕週の重賞としては、大丈夫?と言いたいくらいの遅い流れ。スイスイと気持ち良さそうに逃げるキャプテン。3コーナーからじわりと進出するレッドシューター。それを見て後方から外を回って動き出すヴィクトワールピサ。
4コーナーでは逃げるキャプテントゥーレに、2番人気のリルダヴァルが続いて、外からレッドシューター。その外からヴィクトワールピサが猛接近。懸命に頑張るキャプテントゥーレでしたが、まさに格の違い、勢いの違いということは如何ともし難く、ケタ違いの加速力でヴィクトワールが突き抜けていきました。頑張り切ったキャプテンに2馬身半差。内容的には5馬身くらいの差があったような気がします。
1分46秒0は過去10年で3番目に速いタイム。レースのラスト3ハロンが34秒5で、過去10年で初めての34秒台。それゆえヴィクトワール自身のラスト33秒9は群を抜く時計でした。
この中山記念の快走がドバイワールドCにつながることを期待したいものです。
この日、管理馬リルダヴァルを出走させた池江泰郎調教師。実はこの日が調教師として最後のレース。中山記念の表彰セレモニーのあとで、持ちきれないほどの花束を手にした池江師。報道陣のカメラを前にしたときに、武豊騎手の計らいで池江夫人が恥ずかしそうに登場。そこでご夫妻揃っての記念撮影。恐らく競馬場では最初で最後のツーショットかも知れません。
いつも穏やかな笑顔で、ディープインパクト、メジロマックイーンといった名馬を送り続けてきた名伯楽。惜しみない拍手がスタンドのファンからも送られておりました。