大混戦が予測された皐月賞。それでも、弥生賞で優勝したサダムパテックが1番人気で2.5倍のオッズは、出遅れ癖がある同馬にとっては、岩田騎手騎乗とはいえ少し買いかぶり過ぎではないか・・という危惧がありました。
24年ぶりに行われた東京競馬場での皐月賞。距離芝2000mというコース上の特殊性から断然内枠が有利。なおかつ開幕週ということからインの経済コースを、きっちり走れる馬にとってはゴールに一番近い、と思われたのです。それゆえ枠順が明暗を握っている皐月賞ともいえました。その点で、恐らく8枠の3頭、7枠の3頭は厳しい。きさらぎ賞を強烈な末脚で勝ったトーセンラーは気がかりだけど、16番枠で勝ち負けは無理かも知れないと考えていました。
こういった諸々の条件を踏まえて、前で対応できる馬が有利だということは、各ジョッキーも承知の上。内枠を引いた騎手はこの利点を生かすには、先に行かないと・・という心理が働くのでしょう。
そんな心理が1番枠のステラロッサの川田騎手にも大きく影響していました。「枠が枠なのでスタートして強引にでも出して行きました。その分ハミ噛んじゃいましたね」という川田騎手。私の本命はこのステラロッサ。1勝馬ですがキャリア4戦で、スプリングSでは優勝したオルフェーブルを4角大外から猛追。0秒2差まで肉迫した馬でした。ラストは最速の34秒3で、私の目にはこのステラロッサが一番強いレースをしたように思えました。2戦目で勝ったときが東京コース。当時の勝ちタイムは翌週の共同通信杯で優勝したナカヤマナイトと0秒1差、4着のベルシャザールよりも時計、上がりタイムとも上回っていたのです。
皐月賞はこの1番枠をフルに生かそうと、角居師、川田騎手が策略を練っていたはずでした。それが、強引にでも先に行かせる作戦だったようです。2番枠のダノンバラードの武豊騎手もスタートと同時に押して先行策。エイシンオスマンにベルシャザールも加わってきて、考えていたよりも緩みなくすすむ展開。
ようやく落ち着いたのがレースの中盤でした。逃げるエイシンオスマン、2番手にベルシャザール、その内にステラロッサ。プレイとダノンバラードがいて、中団にナカヤマナイトとサダムパテック。それを見る形でオルフェーブル。
大きく逃げ脚を伸ばすエイシンオスマンを、直線でベルシャザールが外から並びかけようとして、エイシンオスマンに寄ったために、内ピッタリにいたステラロッサが前に出られず窮屈な状態。そんなときに外から好位置にいたダノンバラードが伸びてきたのですが、直後に迫っていたオルフェーブルの末脚が強烈で、あっという間に先頭に立ち、後続を置き去りにグングン加速。サダムパテックも必至に追いかけたのですが、今ひとつ迫力のある伸び脚がなく、なぜか直線外に出したナカヤマナイトも最後の切れが鈍って案外の5着。結局オルフェーブルが3馬身差のワンサイドレースでした。オルフェーブルが強すぎたのか、他が走らなかったのか不可解なところですが、いずれ答えは来る日本ダービーではっきりするでしょう。
2着のサダムパテックの安藤勝騎手は「勝ち馬とはスタートの差が出てしまった」といい、2番人気のナカヤマナイトの柴田善騎手は「乾いた馬場ならもっと違っていたと思う」と悔しい表情をしていました。
ステラロッサは10着。最後は川田騎手が諦めた感じ。直線で前が急にカベになりその恐怖感。初めての恐怖体験がキャリアの浅いステラロッサの脚を止めたのかも知れません。それでも2着サダムパテックと0秒7差。まだまだ射程内の着差です。とはいえダービー出走は絶望的。秋の飛躍に期待したい1頭です。