予想する立場の私にとって、それは最高の結末となった「宝塚記念」でありました。まさに天にも昇る思い、予想をした者だけが味わうことができる快感の境地、とも言うべき会心のレースだったと思います。
例年、宝塚記念で多くの連対馬を送り出している天皇賞、そして金鯱賞。この2つのレースが終わった時点で、私の脳裏は宝塚記念に矛先を向けていました。当初、強力4歳軍団の中でも、先の天皇賞が見事な負けっぷりだった?トゥザグローリーが、3戦3勝の阪神コース、距離が2200mに短縮して巻き返せるかも!と考えていたのですが、池江調教師の「夏負けの兆候が見られるので、当日まで気温が下がってくれないかな」とか、福永騎手の「どうも日経賞を勝ったときのような覇気がない。これが大人になって落ち着きならいいけど・・」と、首を捻っているような状態。
こんな状況では頭からは狙えない。よくGI直前になると、マークされないようにとかで、泣きの材料をわざわざ流すきゅう舎関係者もいて、いわゆる関西流の“口三味線”ではないか、とも言う人もいたほどですが、どうも1週前の調教気配から何かがトゥザグローリーに起きている印象がありました。
そのことを隠さず池江師はコメントしたのですが、あの名司会で泣きの徳光さんは、宝塚記念後のBSテレビの競馬中継で「ふ~ん、そんなことがあったんだ。だったら出すなよ」とズバリ!確かにこれは言えています。というよりも正しいです。
体調不安ということで、仕方なくトゥザビクトリーを△印に引き下げ。そこで、狙ったのがアーネストリー。昨年の宝塚記念でも◎に推して、先行してよく粘ったものの強力ナカヤマフェスタの前に3着。好位置でピッタリと経済コースを走った2着ブエアナビスタに先着されたとはいえ、これはブエナビスタの横山典騎手の頭脳プレー。それでもアーネストリーにとってはわずか半馬身差のこと。
更に、今回は登録があったキャプテントゥーレが回避。これで展開上での有利不利が出るはずだと考えました。強力な逃げ馬を欠いて、2番手か3番手で対応できるアーネストリーにとっては、まさに願ってもない形の競馬。ブエナビスタやルーラーシップ、エイシンフラッシュ、ローズキングダムはいつものように牽制しながら待機策。
先行しているアーネストリーは抜け出すタイミングさえ誤らなければ、昨年ブエナビスタと半馬身差の接戦だったことからも十分勝負になるはず。一方で、長期休養の金鯱賞を叩き、直前の坂路調教では鋭く反応して抜群の気配。
しかも、何んと昨年と同じ2番枠からのスタート。これは実にラッキー。騎手・佐藤哲三のイメージした世界で、彼の好きなように乗って来れると、私は結論付けてアーネストリーを本命。迷いはありませんでした。
そしてスタート。最内からナムラクレセント、これに並びかける形でアーネストリー。手綱をガッシリと引いて、牽制しながらの2頭。これは遅いぞ、と思って前半3ハロンのラップを見たら、驚きの33秒6という数字。ここ2年よりも1秒以上速いのです。主導権を取ったナムラクレセントの2番手で折り合ったアーネストリー。アサクサキングスとハードビートソングが3、4番手。ローズキングダムが5番手で、エイシンフラッシュが中団。その後ろにトゥザグローリー。ブエナビスタは後方でいつものように末脚を温存。最後方グループにはスタートで隣りの馬に寄られた影響でモタつき、後方に置かれたルーラーシップ。
1000m通過が58秒7。雨上がりの馬場でもあり、このペースはいかにも速い。これは待機馬のエジキになるかな、とアーネストリーを見ると、しっかりと2番手で折り合って、実にリズムよく、本当に気分よく走っているのです。
そして、4コーナーを回りローズキングダムが進出態勢、エイシンフラッシュも馬込みを割って上位に進出。トゥザグローリーはギブアップ状態。大外からルーラーシップが好位の直後まで押し上げてきて追撃態勢。勝負どころで置いていかれたブエナビスタが、外に出して猛然とスパート。
直線で一気に先頭に立ったアーネストリーが鋭く反応して、後続との差を広げんと、佐藤哲三騎手が渾身のステッキ。中からエイシンフラッシュが2番手に上がったものの最後の詰めが甘くなり、大外からルーラーシップをアッサリ抜き去ったブエナビスタが強襲。
喜びを大きく表現するでもなく、自分自身に言いきかせるようなガッポーズの佐藤哲三騎手。タップダンスシチーから7年ぶりの宝塚記念優勝。
2着は1番人気のブエナビスタ。3着にハナ差で3番人気のエイシンフラッシュ。単勝6番人気で1360円。3連単が1万7480円。
◎アーネストリーの優勝!会心のレースだったと思います。