それは20時10分発の凄いドラマでした。主役は無敵の快進撃を続けるスマートファルコン。夏の最大のチャンピオン決定戦でもある注目の「帝王賞」。昨年の帝王賞でフリオーソの前に6着に敗れたスマートファルコンが、今年は単勝支持率1・2倍という圧倒的な人気。
それもそのはずで、昨秋のGI・JBCクラシックから始まり浦和記念、レコード決着だった東京大賞典、ダイオライト記念。いずれも圧倒的な強さで無敵の4連勝。過去には6連勝を記録したこともあって、フリオーソが不在であれば死角なしのスマートファルコン。ファンの見方もそれを反映して断然の1番人気でした。
ただし、今回は一昨年のマーチSから、かしわ記念、南部杯、ジャパンCダート、フェブラリーS、かしわ記念と6連勝、Giを5連勝し、昨秋は本場米国のブリーダーズCクラシックに挑戦。王者エスポワールシチーとの、さしずめダート王決定戦が見物でした。エスポワールシチーの単勝が3・2倍。小数点の人気はこの2頭だけ。いつも3着が多いバーディバーディは今回が3番人気で10・6倍とJRA勢が上位を独占する人気。ちなみに4番人気のボンネビルレコードが64・0倍。この落差には驚くべきです。
「これは3連単で買うしか馬券の妙味はないだろう」と、思っていたら予想以上のことが起きていたのです。
何となく押し出されるようにして先頭に立ったスマートファルコンを追って、マグニフィカ、少し内と間をあけるようにしてピッタリとマークの外エスポワールシチー。その直後にバーディバーディも遅れまいと懸命の追走。あとは大きく離れて一団。
4角で武豊騎手がゴーサインを出すと、他の後続がそのラストスパートに付いて行けなくなりギブアップ状態。グングンと2番手のエスポワールシチーとの差を広げて、ゴールでは余裕綽々に9馬身差。圧倒的な強さを見せつけて堂々の5連勝。ただただ呆れるくらいの強さでした。JRAでの出走は3年前の8月10日、小倉オープンKBC杯1着からJRAの競馬場では見かけなくなりました。栗東トレセンの坂路調教で鍛え上げ、そしてレースは地方競馬へ、というパターン。
ただ、今年は秋に盛岡で行われていた「南部杯」が、東京競馬場で場所を移して急遽開催。ここに久しぶりにスマートファルコンの勇姿が見られるかも知れません。
2着に敗れたエスポワールシチーの佐藤哲三騎手は「現状の体調を考えたら精一杯走っています。また、秋には体調を整えて巻き返したいと思います。それにしても、9馬身かあ・・」とポツリ。スマートファルコンの強さに舌をまいていました。
ともあれ、注目の3連単は1着スマートファルコン、2着エスポワールシチー、3着バーディバーディで、なんと290円。これにはビックリ。人気通りとはいえ余りにも低い配当。3連単を1000円ぶん買っても2900円。
溜息ともつかない周りの雰囲気に、自動払い戻しの機械から「ジャラジャラ」というコインの音だけが響いていました。