目の前に広がる有明海。スタンドから眺める光景は、それこそローカルならではの趣のある競馬場、それが熊本県北西部に位置する荒尾競馬場(荒尾市)です。
この荒尾競馬場が、とうとう廃止という決定がなされました。荒尾競馬場がこの地に開設されたのは、1928年(昭和3年)のことですから、地方競馬としては最古の競馬場でした。それだけに歴史的な価値は計り知れません。
9月5日、荒尾市の前畑市長は厳しい経営状況を理由に、荒尾競馬組合で調教師や騎手など約140人に廃止の決断を報告。
市長は「もうこれ以上、競馬事業に税金を投入することは、市民の理解を得られないだろう」として、本年12月までで閉鎖と決断したようです。
荒尾競馬組合は、昨年、馬主に支払う出走手当を削減。その経営努力が実って約4300万円の黒字経営を13年ぶりに計上したのですが、3月11日の東日本大震災などの影響を受けて、厳しい経営環境が続いていたようです。
廃止が決定してしまえば、一刻も早く馬の処分先を決めてしまいたい馬主関係者。あの中津競馬の惨劇が目に浮かびます。中津ではほとんどの競走馬が殺処分となりました。
その光景は、馬と共に家族同様に生きてきた調教師、騎手、そして、きゅう務員、心ある馬主にとっては、衝撃的だったに違いありません。ひとつの競馬場が終わりを迎えるということは、こういう悲惨な光景を生むのです。
更に、荒尾競馬の調教師、きゅう務員、騎手等の競馬従事者は、今後の補償を求めるのは当然。ですが、荒尾市は「皆さんとの間に雇用の関係はなく、補償はありません。これまでの協力に感謝して見舞金を支払いたい」と、にべもなかったそうです。
競馬場内の従業員、競馬専門紙の関係者を含めると300人以上、それぞれ家族もいるわけですから、補償ないとなれば、いきなり日々の生活という苦境、路頭に立たされてしまいます。
1992年に約160億もの売り上げで、荒尾市に大いに貢献した荒尾競馬。そんな恩も今は遠い昔のことなのでしょうか。私の目には、市が本気で荒尾競馬の改善、そしてアイデアといったクリエイティブな面に取り組んでいたら、もっと状況は違っていたように思えて残念でなりません。
荒尾競馬は12月の開催までだそうですが、処分先が決まって行く中での開催。頭数が揃うのかどうか、関係者の方々ならずとも気になります。
同時に、九州で唯一の地方競馬場になってしまった佐賀競馬場。この佐賀競馬と交流レースをしていたのが荒尾競馬。この九州ラインの終了は、今後の佐賀競馬に及ぼす影響は計り知れません。それは経営面で苦境に立つ地方競馬場、そして九州の生産者に与える事態が大きく懸念されるところです。
中津の惨劇再びか、歴史的価値の高い荒尾競馬の廃止に思う(T_T)
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