まさかでした。単勝支持率1・5倍。ダントツの人気を集めたダートの帝王トランセンド。フェブラリーSの昨年の覇者であり、昨年のジャパンCダート優勝馬。まさに日本を代表するダートの帝王。
その帝王がよもや7着に敗退するとは予測できませんでした。レース前はトランセンドの安田隆調教師が「今なら、かかってきなさい!と言えます」と豪語。これは相当な自信と考えて、トランセンド人気に拍車がかかったようでした。
ところが、思わぬ事態が発生したのです。東京ダート1600mは、ダートでありながら1400mや2100mと違って、スタートの部分が芝になっています。つまりスタートしてから、ダートに出るまでに芝を走らなくてはなりません。
逃げ、先行馬はここで後手にまわると、挽回して前に出るまで相当な脚を使わなくてはならず、長い直線が待つ東京では最後に失速してしまうケースがあるのです。
今年はそのトランセンドにとっては悪夢ともいうべき事態が起きてしまいました。セイクリムズンが抜群のスタートを決めて一気に先頭に立ちます。トウショウカズンやグランプリボスが勢いにまかせて追走。15番枠のトランセンドは気持ち出負けしたこともあって、挽回しようと藤田騎手も懸命にシゴいて前に出ようとするのですが、芝でもありスピードに乗った先行馬を追走するだけで四苦八苦。
逃げるセイクリムズン、2番手にはトウショウカズン。その内にグランプリボス。主導権を取れなかったケイアイテンジンがいて、その外にトランセンド。内には武豊騎手が騎乗したエスポワールシチー。
前半12秒2-10秒9―11秒6-11秒9。3ハロンが34秒7で、半マイル、4ハロンが46秒6。昨年、トランセンドが逃げ切ったときが35秒7で半マイルが47秒9。このペースの違いは結果的にトランセンド凡退の引き金になったようでした。
相手に主導権を握られ、さらに昨年を大きく上回る速い流れ。トランセンドにとっては最悪の形となってしまったのです。
1000m通過が58秒7、ちなみに今開催の東京新聞杯が芝1600mで、半マイルが46秒9、1000m通過は58秒6。芝の重賞と見間違うほどのペース。
結果はおのずと差し追い込み馬のペース。先行馬が次々に失速。ダノンカモン、ワンダーアキュートがしぶとく伸びてきたところを、外からグングン伸びてきた後方待機のテスタマッタが一気に先頭に立つと勢いを駆って2馬身差の圧勝。最後方近くから直線大外から矢のように伸びたシルクフォーチュンがワンダーアキュートを捉えて2着。
ただ、1分35秒4の勝ち時計は、3年前のサクセスブロッケンがレコード勝ちした1分34秒6に遠く及ばず、一昨年のエスポワールシチーの1分34秒9(2馬身半差=2着テスタマッタ)にも届きませんでした。
ということは、トランセンドが本来の力を出し切れず、テスタマッタ、シルクフォーチュン、ワンダーアキュートが持てる力を出し切ったということかも知れません。
私は初めてのダートながら、その馬格とパワーからグランプリボスを本命。芝とはいえマイルGIで2勝。東京は京王杯2歳S優勝、NHKマイルC優勝と2戦2勝。内田博騎手がわざわざ今回のために栗東入り。ペースも速くなりそうだったことから、あのNHKマイルCで見せたグランプリボスの末脚に期待したのですが、まさか積極的に先行するとは思いもよりませんでした。
「普段スタートがよくないので、タメて行こうと作戦を立てていたのですが、スタートが良すぎちゃって・・。しかも、外枠だったので前に壁を作れず、行きたがってしまったね。内枠だったら結果は違ったと思うけど・・」と悔しそうでした。
私もグランプリボスの末脚を見られないで残念!!(T_T)
東京ダート1600mという特殊性に抹殺されたダートの帝王!
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