3年前の2010年、テスタマッタ、サクセスブロッケン以下に圧勝したエスポワールシチー。その前年のフェブラリーSでレコード勝ちしたサクセスブロッケン相手に4着だったエスポワールシチーは、1年後に見事な巻き返し劇を演じてくれました。
それから2年後、つまり昨年、再びフェブラリーSに参戦したエスポワールシチーは、3番人気に推されながらテスタマッタの5着に敗退。当時7歳だったことから、もはやこれまでか、という思いがファンの間にも広がりました。
それでも、7歳馬エスポワールシチーは頑張りました。昨春のかしわ記念でフリオーソ、テスタマッタ以下を圧倒。さらに帝王賞でゴルトブリッツの2着。さらに札幌のエルムSでローマンレジェンドのクビ差2着。そして10月の南部杯で堂々の4馬身も突き離す独走劇。まさに、それは不死鳥のように甦ったのです。
ところが、最強のコンビを組んでいた佐藤哲騎手が、レース中の不運な落馬で重傷。現在も入院して加療療養中なのです。それで大一番のジャパンCダートは武豊騎手に手替わり。2番人気推されたものの10着と惨敗。続く暮れの東京大賞典でも5着に敗退。再び年齢的な限界説が首をもたげてきたのです。
5歳でフェブラリーSを優勝してから4年目、8歳を迎えたエスポワールシチーには停滞したムードが漂っていた中で、騎乗する松岡騎手は「色々と小細工するよりも思い切った競馬をさせたい」と、強気の競馬で臨むことを断言。同様にタイセイレジェンド陣も「何が何でも行く」とアピール。
私はこの日、1番人気に推された強豪カレンブラックヒルも、これまで通り正攻法で臨んでくるという予測から、先行馬にはキツい流れになるという読みで、8歳のエスポワールシチーは失速すると考えたのでした。
一方で同じ8歳でも根岸Sを叩いた上積みと、昨年のフェブラリーSを2馬身差の圧勝劇からテスタマッタに大いに食指を動かされていたのです。しかも、今回は主戦の岩田騎手が騎乗。斤量も59→57Kと大きく好転。持ちタイムもあり、もう負けようがないくらいの気持ちでいたのでした。
ところが、競馬というものは実際にゲタを履くまで分からないもので、それは入り組んだ迷路に入ってしまったような予想外のドラマが待ち受けていたのでした。
タイセイレジェンドが予想通りに先手を主張。これに隣りの枠のエスポワールシチーが続きます。その後ろに内からマルカフリート、外にガンジス、さらにその外にはカレンブラックヒルとガルボの初ダート組。それを抜群の手応えでマークするように内ピッタリにグレープブランデー。ナムラタイタンとヤマニンキングリーが馬体を並べて追走。ワンダーアキュートとダノンカモンが中団。スタートで今回も大きく出遅れたイジゲンが追いついてこの位置。後方にセイクリムズンとテスタマッタ。最後方は指定席のシルクフォーチュン。
前半が34秒6、半マイルが46秒5。昨年が34秒7で同じようなペースで流れましたが、これは平均ペースではないのか、という思いがしています。
それというのも、同じ日の東京9レースに3歳馬によるOPヒヤシンスS(ダート1600m)がありました。ここで主導権を取ったセイウンチカラが、前半34秒0-45秒7というとてつもないペースを計時していたのです。仮にセイウンチカラがフェブラリーSに出ていたとしたら、数字上は大きく離して逃げていた格好なのです。
今年の東京ダートは例年よりも高速馬場ではないかということを、根岸Sの結果からも感じていたのですが、それゆえこの34秒6というペースは、先行馬が頑張りきる流れだったと思います。
直線で先行したタイセイレジェンドの脚色が鈍くなってきたところを、まだ早いとばかりに追い出しを我慢させるだけの余裕でエスポワールシチー。カレンブラックヒルとガルボがすぐ後ろに迫っていました。内にはマルカフリートとガンジス。さらに抜群の手応えで内にグレープブランデー。中団のイジゲンは手が動いていますが今ひとつ鋭さが見られません。その内にはワンダーアキュート。そのとき後方から一気に詰め寄ってきたのがテスタマッタ。勢いで馬込みの中に突入して行きます。シルクフォーチュンも迫ってきました。
残り300m付近で先頭に立ったエスポワールシチー。2番手グループにいたカレンブラックヒルが外からガルボに被せられると急激に失速。内から外にジワジワ出てきたグレープブランデー。前が開くと一気にスパート。中団内にいたワンダーアキュートが外を狙って、馬体を並べてきたテスタマッタの前に入り込み、これでテスタマッタの岩田騎手が立ち上がり急ブレーキで手綱を引く大きな不利。
先頭のエスポワールシチーを捉えたグレープブランデーが抜け出して優勝。追い込むワンダーキュートを振り切ったエスポワールシチーが2着。シルクフォーチュンが5着で、手痛い不利のあったテスタマッタが諦めず追い上げたものの不利が大きく7着。それでも勝ち馬とは0秒4差。本当に惜しい競馬でした。
1番人気のカレンブラックヒルは15着と惨敗。初めてのダートか、久しぶりなのか、初めて喫する大敗でした。
8歳馬エスポワールシチーとテスタマッタ。かしわ記念に登場すると、熟年パワーでまたまた盛り上がりそうです。