それはそれは驚きました。1月21日のことです。早朝、携帯電話の呼び出し音に起こされて、電話に出ると、いきなり電話のかけ主はこんな事を言うのです。
「アベコーさん、おはようございます。BSNラジオのHです。今からラジオに生出演できますか」と、ディレクターのH氏。
「ふぁ?! おふぁよう…です。ふぁジオ?」と、まだ夢ご心地の状態で、頭脳がテキパキと働いていない状態。
というのも、その日は突然の急ぎの原稿の仕事で、朝6時近くまで原稿を作成中。そうでなくても木曜日から新聞やら自らの携帯の予想やらで、根を詰めていたせいかバタバタ状態。どうにか仕事をやり遂げたあとは倒れるように夢の世界。
「アベコーさん、今日はスポーツライターのOOさんにお話を聞く予定でしたが、事情で急に来れなくなって、出演できなくなったんですよ。なにぶんにも急だったものでして、それじゃ困ったときのアベコーさん、ということで急いで電話を掛けさせてもらったわけなんです」とH氏。
「ふぁい、えーっ、これからですかー!」と私。
「そうなんですよ。で、競馬の楽しさ、馬券などをからめて、お話しして頂ければと思いまして。ただ、時間帯的に主婦の方が対象になるものですから、競馬を知らない方にもわかるようなお話をお願いしたいんです。尺は10分ちょっとなんですが…」
「そうなんですか、分かりました。じゃあどれくらいで…」と言うか言わないで、
「アベコーさん、本番まであと5分しかありません。」
「ヒェー!! あのあ、あと5分!? まだ寝床…」
「お願いします。お相手はご存知の近藤アナです。それじゃ5分後に改めてお電話します」と、締めくくったHディレクター。
「わあー、大変だ! 大変だ! 歯磨きに、えーとシャツにネクタイ?! あっ、それはいらない。起抜けだから声が、声が、あー、いー、うー、えー、ほー。じゃない、おー。口がうまく回らないかも。お、え、う、い、あー。あっあっあー、山のアナアナ、アナタもう寝ましょうよ。おー、寝ちゃまずいんだ!」
で、番組は9時スタート。電話の向うに私を紹介する声が…。
「ワンダフル競馬でお馴染みのアベコーさんで~す」と近藤アナ。
「おはようございま~す。突然でビックリしていま~す」と返すと、笑い上戸の近藤アナが独特のガマの鳴くような声で、
「ガハハハ…ガハハハ…」
で、話は先週1週前の話に「いやね、15日の火曜日、古くから付き合いのある馬主の方や、親しい知人、調教師さん等と、TCK大井競馬場に行ったんです。着いた場所は『Diamond Turn』といって、そこはバイクング形式の食事をしながら、競馬を観戦できるスペースで、馬券も買えるんですね。先に着いていたIさんが、どうしても馬券が当たらない。どうにか助けてよ、というものですから、こう言ったんです。じゃあ、全部買っちゃえば…と」
「実はこのレースは8頭のレースだったのですが、1頭が回避したので7頭立て。3連単、つまり1着と2着と3着をキッチリ当てる馬券があって、この3連単を全通りの組み合わせを買うことを勧めたわけなんです。そうしたら、そのIさん、わかったわかったといって、210点、100円で2万1000円を投資。そうしたら、そのIさんは大丈夫かな? 本当に大丈夫? というわけなんです。ハハハ…大丈夫。必ず当たるわけなんですからと、言っても不安そうなんです」
「やはり、自信をなくしているんですかね。で、どうなりました?」と近藤アナ。
「いやあ、応援が面白いんですよ。おお、そのままと言ったり、それでもいい、と言ったりね。結局、全部買っているわけですから、人気薄の馬が来てくれたほうが配当がいいわけなんですけどね。それで、結果は3連単が8万8940円也! 勧めたほうがビックリしました。大儲けですよ」
「まあ、競馬はこんな風にいつもうまくいくとは限りませんが、競馬を通して応援したり、感動したり、会話を楽しんだり、結果として現金のプレゼントがあるかも知れない。ストレス解消。たったワンコイン100円で、素敵な夢が買えるんです。人生に1度は競馬というものに参加しましょうよ。お待ちしています」と、寝起きにもかかわらず熱弁。
BSNラジオの近藤文靖の独占ごきげんアワーは、かくして持ち時間いっぱいとなったのでした。