それは歴史的な圧勝劇でした。強力なライバルたちに3馬身半差。まさにゴールドシップにとっては桧舞台での栄光のゴールイン。昨年の有馬記念に続くグランプリ制覇。
7年前、単勝1.1倍というモノ凄い人気に指示された世紀の名馬ディープインパクトが、この宝塚記念を制したときが4馬身差の独走。もっとも、当時は春の天皇賞で12着と惨敗した直後のナリタセンチュリーが2着。相手に恵まれた印象があったものです。
ところが、今回はファン投票1番人気、大将格のオルフェーヴルが突然の病気で欠席したものの、昨年の牝馬3冠にジャパンCでオルフェーヴルを下した女傑ジェンティルドンナ。直前の天皇賞を圧倒したフェノーメノ。4歳世代の代表格ゴールドシップにしてみれば、相手に不足はなかったはずです。そこで3馬身半差のワンサイドレース。それも2着だったのが人気を分けたジェンティルドンナでもなければフェノーメノでもない、GⅡやGⅢで負け続けているGIとは無縁のダノンバラード。
いったい宝塚記念で何が起きたのか検証してみましょう。私は戦前から逃げ馬シルポートが、思い切った逃げを打つに違いないと考えていました。それしかこの顔ぶれでは活路がないからです。
それは案の定でした。スタートと同時に真っ先に飛び出し、考えていた自分の世界を作り上げに行きます。それに続いたのがダノンバラードで、外からジェンティルドンナが引っ張り切れないくらいの手応えで2番手を窺う勢い。トーセンラーもこの2頭の直後。そして一気に浮上してきたのが、スタートでダッシュがつかなかったゴールドシップが、やや掛かり気味に進出。ジェンティルドンナの外にフタをする感じで好位置をキープ。
あの安田記念で人気を分けた内田・グランプリボスを、外から終始フタをする形で封じ込めた1番人気の岩田・ロードカナロア。相手をボロボロにしてクビ差でGI制覇。その時の悔しさが内田騎手の脳裏にあったはずです。
ライバルたちを前に見てフェノーメノが仕掛けのタイミングを待つような走り。逃げるシルポートはまるでマイル戦を走っているかのようなスピードで後続との差をグングンと広げて行きます。こうなると2番手のダノンバラードがまるで主導権を取って逃げているように印象。
半マイル46秒6、1000m通過が58秒5と、シルポートはペースなどお構いなしに逃げ脚を繰り出します。パンパンの良馬場であれば57秒台前半?勝負どころの3角でもその逃げ足は衰えず、まさに大逃げのパターン。
人気の3頭はお互いを牽制しながら好位置で我慢比べ。4角を大きなリードを保って逃げ込みを計るシルポートも、さすがにガクッとペースがダウン。2番手のダノンバラードが仕掛けて先頭に上がろうとしたときに、外から一気に伸びてきたのがゴールドシップでした。3番手の間で懸命にシゴかれるジェンティルドンナ。外に出したフェノーメノも馬場に脚をとられていつもの鋭さが見られず。大外から伸びてきたトーセンラーも抜け出したゴールドシップの脚勢には影も薄い感じです。
力強く一気にライバルを突き放したゴールドシップは、あっという間に3馬身半の独走劇。ダノンバラードが懸命に頑張ってジェンティルドンナをクビ差抑えて2着を確保。そこから半馬身遅れてモガくようにフェノーメノ。そしてトーセンラー。
ゴールインと同時にゴールドシップの内田騎手が右手で「ヨシャー!」とばかりにガッツポーズ。内田・ゴールドシップのコンビでGI4勝目。“してやったり”の宝塚記念になったはずです。
そいえば、皐月賞のときも今回と似たような馬場。4角で各馬が外をまわる展開で、ガラッとあいたインから突き抜けたのが、やはりゴールドシップでした。
ところで、この宝塚記念は毛色別に並べると、1着芦毛、2着黒鹿毛、3着鹿毛、4着青毛という品評会のような順。栗毛のナカヤマナイトは残念ながら6着でした。
それにしても、優勝タイムが2分13秒2、レースの上がり3ハロンが38秒0。ここ2年は2分10秒台の決着。ラストが35秒台。これで驚くなかれ「良馬場」とか。ジョッキーの勝負服にハネた泥がついていても良馬場。これって本当に正確?3年前にナカヤマナイトが優勝したときが2分13秒0で、レースのラストが36秒5で「やや重馬場」。各騎乗した騎手も口々に「馬場が悪かった」とコメント。やはり「やや重」が正解ではなかったでしょうか?