昨年の中京記念で58キロのハンデ頭ながら1番人気に推されたダノンヨーヨーが7着に敗退。直前の安田記念で出遅れて4着。ゴール前の末脚は断然他を圧していたのです。そんな格上の脚がありながら、この敗退は何故なのか、反動か、ハンデ差か、真夏の中京マイル戦での難しさを、まざまざと見せつけてくれた一戦でした。
その昨年の中京記念で優勝したのがフラガラッハ。最後方を進み、直線勝負に徹して末脚を温存。ラスト34秒台の威力で、ものの見事に直線一気差し。ツボにハマったときの破壊力の凄さをアピールしたものでした。
今年のフラガラッハは昨年の2番枠と違い、なんと大外16番枠。この枠順では常に外々をまわって、4コーナーも大外をまわらざるを得ない展開になることは確実。しかも、強力な逃げ馬が不在。後方一気タイプのこの馬では、明らかに不利と感じたのでしたが、勝敗というものは実にドラマチック。そして摩訶不思議なもので、一陣の風のように勝利の女神が訪れることがあります。
今回のフラガラッハもそれでした。2月の阪急杯で8着。続く六甲Sで10着。そして前走の京王杯スプリングCが16着。まあ、成績からはボロボロのような状態。
ところが、コースが東京から中京に舞台が変わると、天馬になるというような実録版の大変身を見せたのでした。
スタートと同時に、一旦、ドナウブルーが行きかけたのですが、外からミッキードリーム、シャイニーホーク。内からワイズリーやフレールジャックが前に出て来ると、内田博騎手のドナウブルーは控えて、押し出される形でフレールジャックが主導権。その外からシャイニーホーク。ドナウブルーとミッキードリームが直後。それを前に見てワイズリーとオセアニアボスがイン。となりにはリルダヴァル。この日、1番人気に推されたランリョウオーが中団の内で機を窺います。外にセイクリッドセブンがいて、アカンサス、サトノパンサーと続き、出負けしたフラガラッハは後方の外をまわる形。
3コーナー手前で外からシャイニーホークが並びかけようとすると、先頭に立っていたフレールジャックがズルズルと急減速。そこを難なくドナウブルーが先頭に立ちます。半マイルが47秒2。そして1000m通過が58秒7。明らかにスローペース。
そして、4コーナーで最内からオセアニアボスが先頭。後ろにランリョウオー。その3頭ぶんの外側にワイズリー、リルダヴァル、ドナウブルー。外のシャイニーホークと放射状に広がる形。セイクリットセブン、ミッキードリームも接近。その外からグイグイとフラガラッハが肉迫してきました。最後方にいたザラストロも一団に追いついて激戦。
ゴール前のデッドヒートは内からリルダヴァルがしぶとく伸びて、中をドナウブルー、その外にミッキードリーム。大外からフラガラッハ。これらが激しい叩き合い。
そして、ミッキードリームの外に馬体を併せたフラガラッハ。この2頭が抜け出し、末脚では一枚上のフラガラッハがグイと差し切って、昨年に続き中京記念を見事に制覇。
最近の凡退が嘘のような快走劇でした。夏の中京、そしてマイル戦が、よほどフラガラッハにはドンピシャなのでしょうか。そしてまた昨年の時計を1秒6も更新してみせました。
一方で、1番人気のランリョウオーが10着。初めての重賞ということもあったのですが、同じようなタイプが多いレースでは、少し荷が重かったようです。とはいえ、勝ち馬と0秒6差。3着のリルダヴァルと0秒3差。まだまだ目を離せません。
ドナウブルーが4着。見せ場は十分でしたが最後の詰めに甘さが出てしまいました。また、この日の馬体が442キロ。ヴィクトリアマイル以来で12キロ増。仕上げに余裕を感じました。
注目していた10番人気のセイクリットセブンは、団子状態の展開で、終始内と外から包まれる形。そして、ヨーイドンは向かない印象です。
離れた最後方から大外を回り、7着に押し上げたザラストロ。夏向きのタイプ、新潟2歳Sレコードで優勝。この夏は軽視ができません。