おそらく今年の朝日杯FSは過去10年を振り返っても最弱クラスの一戦だったような気がします。もっとも、来年に大きく成長するようなことでもなれば別ですが、今回の朝日杯FSはあまりにも低レベル過ぎました。
優勝馬はアジアエクスプレス。初めての芝、初めての中山。ダートで2連勝してきた馬にとっては、決して楽な条件ではなかったはずです。終始中団のインで末脚を温存。4角で馬群の外目に出だすと、直線の坂を上がってからグイグイと接近。ゴール寸前で前の馬を捉えると一気に抜き去って快勝。見事な無傷の3連勝を達成。今年の2歳チャンプの栄冠を手にしたのです。おそらく今年の年度代表馬に選出されることは間違いなし。
といっても、今回の朝日杯FSの勝ちタイムが1分34秒7、レースの上がり3ハロンが36秒1と、あまりにも平凡なタイム。降雨がなくパンパン馬場の条件下にしては、来年のクラシックを云々するような時計ではなかったと思います。
ちなみに、前日のひいらぎ賞・500万を制したのがミッキーアイル。朝日杯FSにも登録があり抽せんで惜しくも除外の適用。そのミッキーアイル。2戦目に未勝利を脱出。レコードで圧倒したことからも、当然ながらひいらぎ賞は圧倒的な1番人気。内枠からすーっと先頭に立ち、スローに持ち込んで余裕で3馬身半差のワンサイド劇。このときマイル1分34秒2の勝ちタイムで、ラストが余裕綽綽に34秒7。ひいらぎ賞のミッキーアイルの時計が朝日杯FSのアジアエクスプレスよりも0秒5も速かったのです。しかも驚いたことに上がり3ハロンが34秒7のミッキーアイルに対して、レースの上りが36秒1の朝日杯FS。メンバー最速の末脚を見せたアジアエクスプレスがラストが35秒3だったことを考えると、明らかに朝日杯組のレベルには首を捻りたくなります。
3年前の朝日杯FS優勝馬グランプリボスが1分33秒9で優勝。一昨年のアルフレードが1分33秒4、昨年のロゴタイプも1分33秒4。それらに比べて大きく見劣りするようなタイム。過去10年で9番目に遅いタイムだったのです。
何故これほどまでに時計が伸びなかったのでしょうか。主導権を取ったのが3番人気のベルカント。牝馬ながら牡馬陣恐れるに足らずとばかり、果敢に挑戦してきたのです。しかも、中山マイル戦の最内枠と実にラッキーな枠。
外からウインフルブルーム好スタートを決めたものの最内からポンと飛び出したベルカント。少し外に寄れて他馬に迷惑をかけたものの他の馬が控えたこともあって楽に主導権を取って一人旅。内からマイネルディアベル、外にエルカミーノレアルが2、3番手。好スタートから引いたウインフルブルーム下げます。代わって2番人気のプレイアンドリアルがかかり気味に進出。枠順もあって1番人気のアトムが中団のイン。ショウナンアチーヴが外から前をのぞむ位置。4番人気のアジアエクスプレスが中団馬群の内で追走。
3コーナーを先頭で通過するベルカント。前半の3ハロンが35秒1、半マイル通過が46秒8。昨年が33秒9で速かったのですが例年34秒台前半。この引きつけたペースはベルカントの形でしたが、プレイアンドリアルが3番手、直後にはウインフルブルーム、その後ろにはショウナンアチーヴが虎視眈々。アトムが中団からインを通って前を窺います。そのアトムの直後にアジアエクスプレスが抜群の手応えで追走。
最終4コーナーを先頭でまわったベルカント。そこを目がけて追い出しに入ったプレイアンドリアル。それを見てウインフルブルーム、その外からショウナンアチーヴが追い出しをかけました。4角内からアトムが前を狙いますが、先行した馬が邪魔になって追い出しを待たされます。
直線でベルカントを捉えたプレイアンドリアルの外に馬体を併せたウインフルブルーム。その外にピッタリとショウナンアチーヴが馬体を寄せています。そのとき外からグイグイと迫ってきたのがアジアエクスプレス。
ゴール前お叩き合いはプレイアンドリアルが脱落。ウインフルブルームの白い鼻が顔を出しましたが、懸命食い下がるショウナンアチーヴ。そこへ猛然とアジアエクスプレスが外からやって来て前を捉えると一気に突き抜けました。前日のひいらぎ賞をミッキーアイルで優勝したR・ムーア騎手がそこにはいました。
ゴール板を過ぎてから2着ショウナンアチーヴの後藤騎手に握手を求められるとニッコリ微笑むムーア騎手。
時計が平凡だったとはいえ、ダートで2連勝。いきなりの芝でGI制覇。来年の活躍が大いに楽しみな1頭であることには違いがありません。