中山の最終週はなにか異様な空気が漂っていました。9レースの若竹賞で圧倒的な1番人気に推されたサトノフェラーリがドンジリ負け。デルフィーノと接触したことが応えたのか、お手上げ状態の最後方。大外から一気に末脚を伸ばしたイタリアンネオが優勝。同じように直線やや外目を走ってきたゲットアテープが2着。後方から外をしぶとく伸びたデルフィーノが3着。前半5ハロンが63秒7、いわゆる超スローの展開で、ラスト11秒6-11秒9の決着。明らかに先行馬には有利な戦いだったのにもかかわらず、先行勢が総崩れ状態。これは馬場のインとアウトの差が想像以上にある。とくに直線でインに入ることは致命的かも知れないと考えていました。それゆえ、これは先行態勢をとると、直線でインサイド寄りに入る可能性が高く、失速してしまう可能性が、私の脳裏をかすめたのです。
その不安は私の予想外の結末につながって行きました。当初、私はクリスマスCの圧倒的な強さからマイネオーチャードが良さそうだとも考えましたが、出走メンバーを確認して、最終結論をサダムパテックに移動させました。サトノシュレンの単騎逃げで間違いなく超スロー。このサトノシュレンは大きく離して逃げるタイプではないことから、各馬一団、団子の展開になるとの読みでした。そこで、一瞬の決め手に長けるサダムパテックに注目したのです。
今年はマイル戦、1400mという距離を専門に走ってきていますが、弥生賞を快勝して、皐月賞ではあのオルフェーヴルの2着。さらに菊花賞で5着。マイラーと決めつけるのは早計だと判断。ただし、スタートの甘い馬なので、出遅れる可能性が多々ある、できれば互角に出て欲しい。私は祈るような気持ちでゲートを見つめていました。
なんとその願いが通じたのか、ポンと抜群のスタートを決めたサダムパテック。コスモファントム、ダノンバラード。これに併せるかのようにサダムパテックが予想外の先行態勢。そして外からジンワリとサトノシュレンが浮上。その外にはチョイワルグランパ。
1コーナーで先頭に立ったのがサトノシュレン。これにチョイワルグランパが続き、その直後にダノンバラードと外にはサダムパテック。その直後にはトゥザグローリーがいて、それを見る形で内にサクラアルディート、外にレッドレイヴン。ケイアイチョウサンと外に2番人気のヴェルデグリーン。内ピッタリ走るフェイムゲームと、外にはフェイムゲームが続き、最後方をポツンとマックスドリーム。
前半の半マイルが48秒7で、予期されたとはスローペース。これは1000mを過ぎても61秒1、前半の6ハロンを1分13秒4とゆったりした流れ。先行各馬もこの流れに手応えは十分。
3コーナー過ぎに外に出したサクラアルディートが外からジワジワと先行勢の直後まで進出してきました。その後ろにはレッドレイヴンと、これをマークするようにヴェルデグリーン。
そして、運命を分けた4コーナーです。ここで先行、好位にいた馬が当然のようにコースのやや内側に進路をとります。まず逃げたサトノシュレンを捉えたダノンバラードが先頭に立ちかけます。その外にサダムパテック。ところが馬場中央からインサイドよりが、やや脚をとられるようなコンディションであるために、それゆえ押しても叩いても前に進みづらい状況なのです。
そこへ後方から待機馬がどっと強襲。サクラアルディートが勢いよく並んできたかと思うと、外からヴェルデグリーンの迫力ある伸び脚で先頭争い。そこへレッドレイヴンが2頭の間に割り込んできて、その内には4角で外目に出したフェイムゲームがグイグイ接近。大外からフラガラッハも伸び脚良く肉薄。
まさにハンデ戦なみの攻防。それでも勝負強さ、距離の適応力からヴェルデグリーンが、食い下がるサクラアルディートを首差退けて優勝。さらに首差でフェイムゲーム。人気のレッドレイヴンはプラス20Kという馬体造りが最後で響いたか頭差遅れて4着。大外強襲のフラガラッハはレッドレイヴンから首差で5着。見応えのある一戦でした。
私が注目していたサダムパテックは先行策から馬場の悪いところに入り失速。11着でした。同様に、昨年の優勝馬ダノンバラードも馬場に脚をとられて12着に後退。先行5番手以内で進めた馬たちが10着以下に敗退。このスローペースでこの結果。
あるテレビの競馬番組で、解説の担当者がその日の各レース馬場の差を独自の数値で出していますが、今回のAJCCのようにインとアウトで極端に違う場合はどうなるのでしょう。
いずれにしても、今回のAJCCからインで撃沈した馬に、次走での巻き返しが十分ありそうな予感がします。