「最後方から行って4角で外に出し、いつものようにアクセルを踏めば勝てる。しかも、今回は先行馬が沢山いるし・・」という考えが、川田騎手にはあったのかも知れません。
圧倒的な1.2倍と言う主役ハープスターにとって、クラシック最初の関門「桜花賞」は負けらない、負けてはならない一戦でした。
予想されたようにスタートを切るやいなや激しい先行争い。そんな中でフクノドリームが大逃げを打ち、場内がどっとどよめきが起きます。これはマズいとばかりに、2番手のニホンピロアンバー、コーリンベリーが手綱を控えます。
3番人気のフォーエバーモアは先行争いを考慮したのか中団に控えたのですが、カーっとなり行きたがるような仕草。その外側にホウライアキコ。その真後ろにアドマイヤビジンがいて、内側にはレッドリヴェール。さらにマーブルカテドラルと内にレーヴデトワール。そこから3馬身差でベルカント。その後方にハープスターという恐ろしく縦長の展開。前半3ハロンの時点で、先頭のフクノドリームと最後方のハープスターとの差は時計にして3秒強。
33秒8-45秒3-57秒0。速いペースで一気逃げるフクノドリーム。2番手以下の後続が追いかけないので、4角では後続と10馬身差、さらに最後方に構えるハープスターまで20馬身近い差。まさに目を疑うレース。
さすがに1400m通過1分21秒2で飛ばしたフクノドリームも、ラスト200mで急激に脚色が鈍りだし、4角で好位置に進出したホウライアキコが、ここで先頭に立ちかけますが、その外からレッドリヴェールの脚色が良く、馬込みの中から進出したヌーヴォレコルトも急接近。そして外からは追い上げてきたマーブルカテドラルを並ぶところなく抜き去ったハープスターが、大きなスライドで猛然と襲い掛かって来ます。
長期休養あけとはいえ昨年の阪神JF優勝馬。懸命に最後の抵抗を見せるレッドリヴェール。戸崎騎手も自らの体勢を馬の背中に張り付くように懸命に伸ばします。それでもさすがにハープスターの威力はたいしたものです。一完歩ごとに詰め寄り、馬体を併せるとそこからグイと突き抜けました。
直線入り口でもまだ最後方。まさに全馬ゴボウ抜きのハデな勝ちっぷり。場内はやんやの拍手で騒然。
しかしながら、この異常な展開で、ハープスターはいつものように騎乗して勝てたとはいえ、どうも解せないのです。
それは競走馬の絶対値にかかわることだからなのです。ハープスターのラスト3ハロンが32秒9。これはほとんど競走馬として限界に近いタイム。これ以上に速く走れ、といっても無理があります。となると、この限界に近い脚を駆使してもこの僅かな着差(クビ差)。スローの団子の展開で決め手の勝負になると、他馬より一枚も二枚も優れたパンチ力で、突き抜けてしまう可能性があるのですが、レコード決着に近いタイムの争いでは、いつものように離れた最後方からという競馬では通じなくなる可能性もあるのです。
せめてレッドリヴェールやヌーヴォレコルトの位置取りで戦いをしないと、どこかで取り返しのつかない事態になる可能性も考えられます。
おそらくハープスターはゆっくりと走らせたほうが、持ち味がより生きるタイプなのでしょう。激しい流れでレコード決着には向いていないのかも知れません。
オークスは新潟2歳Sを圧勝したときと同じ左回り。直線の長い東京コース。距離不安説も出ていますが、桜花賞のような極端なペースにはなり辛いことから考えても、この馬の神業的、瞬発力が最大限に生きるはずです。
この秋には「凱旋門賞」遠征が伝えられるハープスター。桜花賞の疲労が早く抜けること、無事であることを祈るばかりです。