ひょっとしたら、あのディープインパクトの再来ではないのか、ケタが違うぞ、モノが抜けてるよ、全部勝たれるかも知れんぞ、強さを表す様々な形容詞のまさに博覧会。先週の「きさらぎ賞」は、武豊騎手が騎乗した今年最大級の大物、オーシャンエイプスに話題が集中。なんとなんと、新馬を勝ったばかりの馬が、重賞競走に出て、いきなり1番人気。それも1・3倍というぶっちぎりの単勝オッズ。
いいのかい?大丈夫なのかい?1回しか走ったことがないだろう?私の頭の中は、そんなごく常識的疑問が駆け巡ります。
それでも、あの衝撃的な新馬戦が、天馬ペガサスのような圧倒的な強さが。それは、次元を超えた異次元の馬のように思えて、私もその1・3倍というオッズの世界にのみ込まれていたのです。
ところが、勝負の世界は、時に薄氷の氷のように薄っぺらで、軽薄なドラマの結末的ストーリーを迎えることがあります。
●他が追いかけてこない
天馬、オーシャンエイプスはゆったりと構えて、出走馬8頭の4、5番手を追走。主導権を取ったのはアサクサキングス。この日、アサクサに騎乗予定の四位騎手が怪我で、バトンを渡されたのは武幸騎手。ところが、他の騎手はどうしたものか、楽に先手を取り、離して逃げるアサクサキングスを、一向に追いかけないのです。しかも、離して逃げていながら前半5Fが61秒7のスロー。この緩い流れで「後ろを見たら、かなり離れていたので、このまま押し切れると思った」と武幸騎手。
デビュー戦のオーシャンエイプスの想像を絶する強さを知っている騎手達は、徹頭徹尾、武豊オーシャンエイプスをマーク。直線で外からナムラマークス、内からサムライタイガースに挟まれる形で叩き合い。そんな経験も初めてだったエイプス。新馬戦で馬なりのまま、後続を豪快に突き放した次元を超えた脚は、そこにはカケラも見ることが出来ませんでした。
とはいえ、新馬戦の伝説の迫力走が幻でなければ、競馬のコツを摑むと、一気に、それこそペガサスの様に、桧舞台に駆け上がって行くはずです。それを楽しみにしていたいものですね。