マイネルラクリマという馬がいます。全5勝のうち直線坂のあるコースでは未勝利。過去4勝が福島と京都の芝で、函館のデビュー戦を勝ち上がった馬でした。
昨年の七夕賞以来、勝ち星から遠ざかっていたのは、大崩れが少ない反面、勝ち味に遅いという欠点があったのです。
その課題をどう克服するのか、そこにこの馬の大きなポイントがありました。そして、新潟で行われた「オールカマー」。内回り芝2200m。
今回、依頼を受けたのがリーディング・ジョッキーのトップを独走する戸崎圭太騎手。マイネルラクリマの長所と欠点を踏まえた上で、ボコボコした馬場、内回りの2200mをどう乗るべきか、出した答えは先行2番手策でした。
強力な逃げ馬が見当たらず、4番枠を引いたカレンブラックヒルが逃げることは織り込み済み。従って、カレンブラックヒルの2番手を躊躇なくキープします。内からムスカテール、1番人気のサトノノブレスも正攻法。この中にはクランモンタナ(3番人気)もいます。好位にはラキシスが抜群の手応えで追走。中団にニューダイナスティ。後方にはフラガラッハとアロマティコ。フェイムゲームもいます。
前半の半マイルは47秒6、1000m通過が60秒5。カレンブラックヒルにとってスローには落とさず自分のペースで一人旅。カレンブラックヒルを本命に推したこともあり、私には“ヨシヨシ”と力の入る展開でした。
2番手に付けた戸崎・マイネルラクリマ。4コーナーをカレンブラックヒルの直後でまわり、後続が一気に仕掛けて迫ってきます。それでも戸崎・マイネルラクリマは動きません。逃げるカレンブラックヒル。内からラキシスが迫って来ました。
このとき戸崎騎手が後続と一緒になって仕掛けていたら、ゴール前で差し込まれた可能性があります。それでもあまり辛抱していると、勝ち味の遅さが出てしまう。
戸崎騎手がとった判断は、ラスト100mからの追い出しでした。初めての2200mと休養明けで、さすがに苦しくなったカレンブラックヒルに並びかけて、抜け出すとそのままゴールに飛び込んだのです。
ポンポンと首のあたりを叩きながら、良くやった!とばかりマイネルラクリマを称える戸崎騎手。
ゴール前内から流れ込んだラキシスが2着。マイネルラクリマと半馬身差でした。間を割って伸びたクリールカイザーが頭差で3着。同じく頭差で外から追い込んだフラガラッハが4着。ハナ差で5着アロマティコ。以下、フェイムゲーム、カレンブラックヒル。優勝したマイネルラクリマからカレンブラックヒルまで0秒2差という大激戦。
それゆえ、勝ち味の遅いマイネルラクリマをトップでゴールインさせた戸崎騎手の頭脳プレーは見事!私も拍手を送りたい進境です。
狙ったカレンブラックヒルは自分の一番いい形を思い出したような印象で、これはこれで秋の戦線が楽しみです。