
豪華版のグランプリ「
有馬記念」。その日、新装の中山競馬場は11万余りの観衆に揺れました。
人気の中心はファン投票第1位の
ゴールドシップ。そして
ジャパンCを圧倒した
エピファネイア。
一方で、この日がラストランになる
ジャスタウェイ、そして
ジェンティルドンナが順で続きました。
今年の
有馬記念は典型的な逃げ馬が不在。2番枠を引いた
ヴィルシーナが現役最後のレースを、逃げに夢を託すことは間違いところでした。
エピファネイアが引っかかったりしない限り、おそらく流れはスローになると推測したのです。
実際、それは私が想像した以上に遅いペースでした。スタートと同時に内から
ヴィルシーナが難なく主導権。そして
ジェンティルドンナ、外から
エピファネイアが出て行きます。その直後に
トーセンラー、
ラキシス、
トゥザワールド、
フェノーメノ、
ゴールドシップが相手を牽制しながら好位置を狙っています。その後にワンアンドオンリー、外に
ジャスタウェイ。直後のインには私の夢を乗せた
ラストインパクト。外側には
ウインバリアシオン。最後方には
デニムアンドルビーと
オーシャンブルー。離れたシンガリを
メイショウマンボが追走していました。

前半の1000m通過が63秒0。約半分の1200m通過が1分16秒4。これは異常に遅い流れです。2つ前に行われたグッドラックハンデ(1000万・2500m)が、1200m通過で1分14秒2のスロー。それよりも2秒以上遅い流れ。
1周目のスタンド前を通過して2コーナーから向う正面。少し離し気味に
ヴィルシーナの逃げ。2番手に
エピファネイア。3番手には内から
トーセンラー、外に馬体を併せる形で
ジェンティルドンナ。
戸崎騎手は「前にカベをつくれず少し気負っているように感じました」と、レース後コメント。
また少し離れて
ラキシスと内のワンアンドオンリーがその後に続きます。その直後に
トゥザワールドと外に
フェノーメノ。真後ろのインには
ラストインパクトが上手に折り合っています。
ゴールドシップがその後に続きます。
ウインバリアシオンがいて、その後ろに
ジャスタウェイ。
福永騎手は「右回りの中山と言うことで、コーナーで加速が出来ず、そこで離されてしまいました」とコメント。この超スローでも加速ができない
有馬記念という独特の一戦。

2コーナー手前から13秒6-13秒2-13秒0。3ハロンで39秒8。ほとんどキャンターのような流れ。
3コーナーでもペースがそれほど上がりません。逃げる
ヴィルシーナ、2番手の
エピファネイアの2頭が、3番手以下を離し気味に先行。
トーセンラー、
ジェンティルドンナがゴーサインを待ちます。これはマズいとばかりに、外から
ゴールドシップが動き出します。

そして、勝負どころの4コーナー。逃げた
ヴィルシーナを捉えた
エピファネイアが先頭に立ちます。それを待っていたかのようにジェンティルドンナと
ラキシスが進撃開始。大外まわって
ゴールドシップが
トーセンラーに馬体を併せてきました。
トゥザワールドがその後ろのイン。外に
フェノーメノとウインバリアシオン。そして中団の内に私の夢、
ラストインパクト。外へ
ジャスタウェイも上昇。
実況風に「
エピファネイアが先頭だ。外から
ジェンティルドンナが並びかけてくる。その後ろには
トーセンラーだ。中を割って
トゥザワールドが伸びてきたぞ!その内には
ラキシスもいる。おお、外から真っ白な馬体で
ゴールドシップが迫って来た!狭いところを
ラストインパクトだが進路がない。大外から
ジャスタウェイがグングン追って来た!さあ、残り200mを過ぎて先頭は
ジェンティルドンナ。内で
エピファネイアが頑張る。外から
ゴールドシップ、その内から
トゥザワールドだ。先頭は
ジェンティルドンナ。
ジェンティルドンナだ!これがラストランの
ジェンティルドンナです。
トゥザワールドと
ゴールドシップ、大外から凄い勢いで
ジャスタウェイだ!間をついて
ラストインパクト。先頭は戸崎
ジェンティルドンナだ。
ジェンティルドンナが優勝です。見事に花道を自ら飾りました。おめでとう
ジェンティルドンナ!」

2着争いは熾烈を極めました。「ハナ・クビ・ハナ・アタマ・クビ差」のハンデ戦なみに、
トゥザワールド、
ゴールドシップ、
ジャスタウェイ、
エピファネイア、
ラキシス、
ラストインパクトの横並びの順で0秒1差の大激戦。
場内からは左手を高々と上げた
戸崎騎手の
ジェンティルドンナに、やんやの喝采の嵐。4着に敗れたラストランの
ジャスタウェイにも惜しみない声援が飛びます。
あるファンは「ジェンティルドンナと
ジャスタウェイを応援していました。この2頭で1、2着がベストでしたが、それでも最後のレースを見られて幸せです」と涙ながらに語っていました。

私の夢、
ラストインパクトはラスト200mのところで前がカベ。どうしょうか、と迷う若き
菱田騎手。前の馬を避けて外に進路が取れても、時すでに遅し。もの凄い脚で馬込みの中に突っ込んで行きましたが・・無念です。

日が沈み、冬独特の闇がサーッと広がる中で、
ジェンティルドンナが登場。黒い覆面からピンクの覆面に衣装替えした
ジェンティルドンナ。そして、
戸崎騎手を先頭に、
岩田騎手、
川田騎手の
ジェンティルドンナの背中の恋人たちが登場。場内は割れんばかりの拍手。
旅立ちのセレモニーは、その別れを惜しむように流れていきました。
