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後藤騎手の涙…


 3月4日、日曜日。
070306  最終レースが終わり、4時20分発走の阪神12レースをみてから、検量室に行き、誰もいなくなったジョッキーの控え室前に階段上がると、そこに、ひょっこりと後藤騎手がやって来ました。
「お疲れさま、惜しかったね~(12R3着)」と私。
「はい、もうちょっとでした」と後藤騎手。
「そうそう、先週の中山記念、おめでとう。あのインタビューでの涙は、こっちまで胸が熱くなっちゃったよ」
「そうですか。わかっちゃいましたか…」と、頭を掻きながらはにかむ後藤騎手。
 中山記念で後藤騎手はローエングリンで見事に逃げ切りってみせた。ローエングリンは伊藤正徳きゅう舎。後藤騎手がデビューから在籍したきゅう舎でした。競馬とは無縁の世界から、憧れていた騎手としてデビュー。周囲はほとんど知らない人ばかり。それでも持ち前の明るさで、がむしゃらに頑張った後藤騎手。唯一の支えは、親代わりとなる調教師のはずでしたが、若き彼は強烈な冷水を浴びせられることになったのです。
「うちの馬で勝てるような時は、お前は乗せないからな!」
 自分のきゅう舎の馬で1勝でも多く勝ちたい。できれば重賞を、クラシックを、小さな胸は、大きな夢でいっぱいに膨らんでいたときに、この一言は、彼を奈落の底に突き落としたのです。
「悔しいです。アベコーさん、ボクは何を夢みて騎手を続ければいいのですか?」と、聞かれて、何も言えなかった私がそこにいました。
 そして、いつしか彼はフリー宣言。

「でも、あのときがあったから今の自分がある」と思います。
「そうだね、いい経験したよね。大きくなったなあーと、先生は一番喜んでいるのかも知れないな…」
 中山記念のローエングリンの優勝をきっかけに、今年も後藤騎手は大きく飛躍するはずです。応援しましょう。