
「
江田照男も面白いことをやるよな~。でも、競馬はこういうのがないと、つまらないよ。ね、そうでしょう。阿部さん!」と、GI連勝中の
横山典弘ジョッキー。
5月17日、東京競馬場、15時45分。この日、場内アナウンスに驚きの声、悲鳴にも似た声が駆け巡りました。
3連単が2070万5810円!!GI史上、最高額が読み上げられたのでした。たった1枚の100円コインで2000万円台。筋書きのない競馬と言うドラマは、ときには衝撃的な結果をもたらします。

18番人気
ミナレット。最低人気で単勝は3万円近いオッズ。
重賞は未勝利。やっとオープン入りできたような馬でした。それゆえ、その程度の馬が大逃げを打ったからといって、後続の
騎手は追いかけることはしません。それゆえノーマークで単騎一人旅。それも、騎乗した
江田照男騎手は、スローペースに落とすことなく、半マイルが45秒5と、ポンポンと小気味のいいペースで飛ばして行きます。おそらくスローに落としていたとすると、直線ヨーイドンの競馬では、抜群の決め手を持った馬に軍配が上がっていたでしょう。
江田
騎手は、そのことを十分に理解していたはずでした。「逃げても
吉田豊の
ケイアイエレガントは競りかけて来ないだろう。思い切って行って、粘れるだけ粘ってやろう」江田
騎手はそう考えていたはずでした。
抜群のスタートを決めた
ミナレットが躊躇せずに外から先頭に立ちます。このとき
ケイアイエレガントの
吉田豊騎手は、
ミナレットが前に出て譲りそうもないことを察知すると、わかっていたように2番手で折り合いに専念。これでこの
ヴィクトリアマイルの劇的な結末の大半が決まりました。

3コーナーを大きく差を広げて先頭でまわる
ミナレット。離れて2番手の
ケイアイエレガント。そこからまた差が開いて
リトルゲルダ、その内にレッドリヴェール。それを見るように
ストレイトガールが、引っ掛かるくらいの気合で追走。中団に控えたベルルミエール、その外に1番人気のヌーヴォレコルト。いつもより消極的な位置取りです。さらに内には
カフェブリリアントがいて、後方に出負けした2番人気の
ディアデラマドレ。そして最後方に
スマートレイアーが追走。
後続を大きく引き離して逃げる
ミナレット。
ケイアイエレガントの
吉田豊騎手も、あまりにも
ミナレットの差があるので“これはまずい”と思ったのでしょう。直線、ラスト400mあたりから懸命に前を追います。後続の馬たちもマークしている馬たちが近辺にいるので、追い出しが遅れてしまいました。


3番手以下が大きく離れています。ゴール前までラスト200m。まだ
ミナレットが先頭。必死に追う
ケイアイエレガント。そして残り100m過ぎに先頭の
ミナレットに並びかけると、一気に抜け出しを計ろうとしたところ、外からもの凄い稲妻のような脚で飛び込んで来たのが
ストレイトガール。好位置で末脚を温存して、直線に勝負に賭けた
戸崎騎手の作戦が見事に決まりました。アタマ差でした。
一旦先頭に立ってGIが手中に入ったと、一瞬考えた
吉田豊・
ケイアイエレガントが悔しい2着。3着には今回のある意味での殊勲賞的存在の
ミナレット。私の◎レッドリヴェールは4着。ちぎれた縦長の今日のような展開は向かないようです。

5着が
カフェブリリアントで、ヌーヴォレコルトは6着。
岩田騎手は「こういうことなら、もう少し前に出て行けばよかった」とコメント。後の祭りでした。


同様に最後方近くから直線大外を鋭く伸びてきた
ディアデラマドレが7着。ラスト32秒8はメンバー最速のタイムです。ショウナンパンドラは中団のまま動けず8着が精一杯。
春の日のドラマ、まさにメイ・
ストーム。五月の嵐でした。
