
それはまさか、まさかでした。単勝1.9倍と断然の人気に推された
ゴールドシップ。今年、前半戦の総決算「
宝塚記念」。過去2年、
宝塚記念は2連覇。それも3馬身半、3馬身と圧倒的な強さを誇っていたレースでした。
加えて、
ゴールドシップは阪神コースで7戦6勝2着1回。断然の強さでベストの舞台。しかも、ジェンテイルドンナ、
ジャスタウェイ、ハープスターなどが引退。それに
エピファネイアが不在。強力なライバルたちの姿が見えない中にあって、王者
ゴールドシップにとっては負けられない、負けてはいけないレースでした。
ところが、先の
天皇賞でゴネまくりゲートに入るのを極端に嫌がり、完全にボイコット状態で抵抗。ようやく黒い覆面で頭から覆い、ようやくゲートに入るまで随分と時間を要していました。当時
ラストインパクトに騎乗した
川田騎手などは「ゲートの中でかなり待たされて、馬が意気消沈してしまった」とコメント。
ゴールドシップは何故、それほどまでにゲート入りを嫌がったのであろうか、私の脳裏にはそのことが、こびり付いて離れませんでした。
そして最後方から3コーナー手前一気に仕掛けて先行勢の直後に急接近。直線早めに抜け出して、追い込んだ
フェイムゲームの追い込みを封じて優勝。通常のレースでは考えられないような、いわゆる常識破りのレースに度肝を抜かされた思いがありました。
ゴールドシップは内面で“荒れている”。何が彼をそうさせるのか、円熟期に入った6歳という年齢からも、彼の内面で起きていることが解せませんでした。
「
ゴールドシップは走ることが嫌なのだろうか?!」答えを出せない中で、今回の
宝塚記念を迎えたのです。優勝すれば同一GI3連覇!いずれ種牡馬としてデビューする上で、大きな財産になるはずでした。

さあ、大きな夢を乗せて
ゴールドシップは、真っ先にゲート入り。前回のゲート再審査からイの一番にゲートに入らなくてはなりません。黒覆面を今回は最初からすっぽりと被されて、何の問題もなくゲート入り。ああ、無事に入って良かった、と安堵の気持ちが頭の中を駆け巡る中で、再び
ゴールドシップに目をやると、急に立ち上がり、隣のゲートの
ラブリーデイに話しかけるようにモタれ、脚を降ろして一旦、リセットをすると今度は後ろ脚で立ち上がり、そのときにガシャンとゲートが開放。大きく取り残される
ゴールドシップ。他の馬と2秒くらいのタイムロス。
3200mの
天皇賞ならいざ知らず、芝2200mの
宝塚記念では、完全に白旗状態でギブアップ。大きく離された最後方をポツンと走る
ゴールドシップ。
しかも、強力な逃げ馬が不在。押し出されるように
レッドデイヴィスが主導権。2番手に外からじんわりと
ラブリーデイ。追い込みの
オーシャンブルー、トーセン
スターダム、
ネオブラックダイヤが3番手グループ。中団の前方にはヌーヴォレコルト、その直後にショウナンパンドラ、ワンアンドオンリー、トーホウジャッカル。その後の外目を
ラキシス、内は出遅れた
カレンミロティック。そこから離れて
デニムアンドルビー。そして大きく離されて
ゴールドシップ。
前半の5ハロンが62秒5、そこの地点から12秒台にアップ。1400m通過が1分27秒7。3コーナーです。ここからさらに11秒台にアップ。
ガッチリと2番手を進む
ラブリーデイ。真後ろにトーセン
スターダム、その背後にヌーヴォレコルトが虎視眈眈。その後ろからショウナンパンドラ、外にトーホウジャッカルが前を追います。ワンアンドオンリーと
ディアデラマドレが接近中。後方には
ラキシス。その後ろが
デニムアンドルビー。そして最後方が
ゴールドシップ。
直線で
レッドデイヴィスを捉えた
ラブリーデイが抜け出してきました。それを追ってトーホウジャッカルとヌーヴォレコルトが追いかけます。内からショウナンパンドラ。
スローの直線だけでの競馬の印象でしたが、ラスト1ハロンが11秒6から12秒4にダウン。その落ちたところを大外から
デニムアンドルビーが猛然と追い込んで来ました。勢いは圧倒的にデニムの末脚でしたが、絶好のポジションで駒を進めた
ラブリーデイが、迫る
デニムアンドルビーをクビ差振り切り優勝。初GI制覇となりました。

3着にショウナンパンドラで
菊花賞以来のトーホウジャッカルが4着。GI馬ヌーヴォレコルトが5着。
ラキシスは予想外に重目残り(2走続けて10K→10K増の478K)が応えた印象で8着。残念でした。
カレンミロティックは出遅れが致命傷。本来の先行力を見せることが出来ませんでした。

それにしても、
ゴールドシップはブービーの15着に惨敗。ゲート入り直後は落ち着いていたものの全馬がゲートに入った一瞬の静粛に、後ろ脚で立ち上がり、一旦、戻って再び後ろのゲートにモタれかかるように立ち上がって、まるで走行を拒否するようなポーズ。大きな出遅れでファンをガッカリさせました。
円熟期に入って来た
ゴールドシップ。ここ2戦の彼の行動はまったく解せません。今年の
AJCCで格下相手に7着に惨敗した前科があるものの
天皇賞、
宝塚記念のスタート時の異常行動は意味不明です。
ひょっとして、走りたくない何かがあるのでしょうか。今年は過去2年と違って
AJCCからのスタート。
宝塚記念を制した過去2回は、その年3走目が
宝塚記念。今年は4走目。さらに
春の天皇賞で5着、7着だったときが
宝塚記念優勝。この辺の体調的な何かがあったのか、それともメンタル面で萎縮しているのか、
ゴールドシップが話せないだけに藪の中です。
