皐月賞は圧倒的1番人気のヴィクトワールピサが快勝。多くのファンの喝采を浴びました。弥生賞で中山の2,000mを経験し、重馬場もクリアしているとはいっても、弥生賞とはまた異なる顔ぶれ。なによりGI馬ローズキングダムの初対決。加えて、今回は主戦の武豊騎手の負傷欠場で、テン乗りになる岩田騎手にバトン。彼はポーカーフェイスで冷静を装っていましたが、内心は穏やかならぬものがあったと思われます。
パドックの気配は落ち着き、堂々した雰囲気で、さすがに皐月賞1番人気としてのオーラを感じていました。ところが、13番枠を引きながら中団よりやや後ろのインサイドに位置したときは、これはヴィクトワールピサ敗退!というシーンが浮かびました。この枠であれば、中団の外でいつでもスパートできる態勢をとっておくことが、普通に考えられる策だろう、と見たわけです。それがインサイドでは勝負どころで前が詰まって追い出せない、あるいは外から被せられて、蓋をされてしまうこともある、というビクトワールには最悪の状況がありえたわけです。
ところが、そんなことは百も承知だ、と言わんばかりに岩田騎手はインコース取りにこだわりました。「前半のレースに乗って馬場状態を調べておいたので、どこを突くか考えていました。確かに内は荒れていたけど、外は水分があるからイン狙いに決めました」と、岩田騎手。
4コーナーで前が壁になるようなシーンで、立ち上がらんばかりの追い方で進路を作ろうとします。「あのところは、1頭分のスペースしかなかったので、ここが勝負どころだと考えて目一杯に追いました。そしたら馬が反応して突き抜けてくれました。豊さんが仕込んでくれていたので、本当に乗りやすかったですよ。このまま無事にダービーに行って欲しいですね。今日は旨い酒が飲めそうです」と、ホッとしたと同時に上機嫌。
岩田騎手ならではの勝負勘で70回の皐月賞を制覇。あの窮屈な4角イン狙いは、地方競馬の小回りコースで培ってきた技術と度胸。そして大胆さが生かされた集大成があったものだという印象を受けました。
私の本命は6番人気のヒルノダムール。デビュー戦でアリゼオと首差のマッチレース。ラジオNIKKEI杯2歳Sでは内の厳しい位置からヴィクトワールピサの0秒2差。更に年明けの若駒Sでは、注目のルーラーシップをラスト33秒1の破壊力で完封。間違いなくGI級の器だと確信していたからです。トライアルの若葉Sは馬体がプラス6K。明らかに本番前の一戦という見方をしていました。で、皐月賞はマイナス10K。完璧な仕上げで臨んできたのです。
ところが、直線で外に持ち出したいところで、前のガルボが邪魔になり、仕方なくその内に入り、また窮屈なところに入ったので追い出しが遅れてしまい、そこから藤田騎手の豪腕に応えるべくヒルノダムールは猛追。不利なく追い出せれば、かなり際どかったと思います。結果2着とはいえ内容の濃い一戦でした。
3着の11番人気のエイシンフラッシュはトライアル組以外のレースから臨んだ馬には不利、という条件のなかで、内田博騎手の好判断もあって3着。立派な内容です。
ローズキングダムは馬体の回復がないままの出走。438Kの体になっていましたが、さすがに勝負強さ、能力は一級品。悪い馬場コンディションにもかかわらずヒルノダムールから鼻・鼻の4着。今後は馬体の回復が大きな課題となりそうです。
3番人気のアリゼオは18番枠が痛かったですが、わずか0秒3差の内容ですから、悲観材料にはなりません。5番人気で予想以上に馬場が応えた走りだった6着リルタヴァルを含めて、広い東京、良馬場での巻き返しが期待されます。
確かにヴィクトワールピサは強かったけど、大胆な岩田騎手の秘策!!
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