日本一長い直線コースを使用して行われた真夏のスプリント・チャンピオン決定戦「アイビスサマーダッシュ」が、新潟競馬場で熱い戦いを繰り広げました。
距離が芝1,000mのストレートコース。このレースを2年連続して制覇しているカノヤザクラと、前走のCBC賞4着のメリッサ。ともに6歳の牝馬が人気を集める真夏のローカル重賞ならではのレース。なかでもアイビスSDが3連覇のかかるカノヤザクラは牝馬で57Kの斤量。一昨年のこのレース2着のシンボリグランの58Kも8歳馬には、こりゃ応えそうだ、と考えていたら確かに厳しい結果が待っていました。
結果はカノヤザクラが10着と敗退。その前に入ったのがシンボリグランで9着。また1番人気のメリッサが、どうしたものかレース中に戦意喪失。ズルズルと後退して離れたシンガリで入線。過去に直線だけの1,000mなんて経験したことがない馬なので、前半からの馬たちのギラギラ状気配や鋭い闘争心に、きっと驚いたのかも知れません。
そして優勝馬はケイティラブ。1,600万の準オープンに入ってからどうしても勝てずに、準オープンでウロウロ。アイビスSDに登録した24頭中、下から数えて22番目という敷居の高さ。出走上位にいた馬たちが何頭か回避したため繰り上がり当選出走。だから運とは、どこにころがっているのか分かりません。騎乗した西田騎手にしても以前、新潟で乗って勝っていることでの騎乗。いわばピンチヒッターでの騎乗だったのです。
「ダッシュ力の良さでは去年の夏に、この新潟で乗って勝っているので分かっていたし、少し自信もありましたよ。思い切って行ってペースに持ち込めれば・・イメージ通りでしたね」と、西田騎手はにっこり。
ここ5年間の優勝タイムは54秒台、55秒台、昨年は56秒台のタイム。今回の53秒9は6年前のカルストンライトオと同タイム。ただ、カルストンがラスト3F31秒9だったのに対して32秒4。このあたりは器の違いなのでしょうか。
とはいえ、準オープンのケイティラブが6歳夏にして、初めて掴んだ重賞の栄冠。西田騎手も七夕賞優勝のサクラエイコウオー以来、14年ぶりの晴れの重賞勝ち。
12年前にスピード違反で、騎手免許を返上。山元トレセンに勤務して、一から出発して、自分自身の磨きに時間を注ぎました。このことが彼を、人間としてひと回りもふた回りも大きくしたようです。
騎手試験に再び挑戦。5年前に復帰を果たしました。当時、彼は私に「西田雄一郎、また騎手として頑張ることになりました。アベコーさん、どうぞ宜しくお願い致します。どんな馬でもひとつひとつ大事に乗って行きたいと思います」と、検量室前で大きく目を輝かせながら挨拶してくれました。笑顔が似合う、とても人当たりのいいジョッキーです。
今回のジョッキー勝利者インタビューで「こういう場には似合わない地味で華のない、頭も薄いジョッキーですが、これからもひとつひとつ頑張ります」と、謙虚でジョークを混ぜながらのコメント。その笑顔がいつまでも焼き付いて胸に残ります。
ところで、私の予想はジェイケイセラヴィに◎。かなり自信があって、スタートも上手く決まったのですが、2番手に付けられたことで、前のケイティラブは捉えられる、少しでも脚を最後まで残しておこう、という江田照騎手の思惑があったのだと思います。その気持ちの余裕が、ケイティラブを残してしまったのかも知れません。結構、奮発して単勝8・5倍を買っていたものですから、ムムム・・・お察し下さい。