
「助かったー!」と、笑顔で胸を撫で下ろしたのが、この日の「
天皇賞」で1番人気に推されたキタサンブラックでした。
中距離の頂点、伝統の「
天皇賞・秋」は、前週の「
菊花賞」に続いて、台風の襲来に、寒冷前線とダブルで日本列島を襲いました。
それでなくとも、10月はほとんど雨降り続き。10月の連続雨降り日としては、なんと127年ぶりの異常気象だそうです。
この日、午後になって雨足が強くなり、みるみるうちにダートに水が浮かんで、まるで水を張った田んぼのような状態。
そして、
天皇賞がスタートを迎える頃には、ときに横殴りの雨が人馬に容赦なく打ちつけます。
そして、定刻通りに
天皇賞がスタート。ところが、スタンドから悲鳴が聞こえそうだったのが1番人気キタサンブラック。
武豊騎手が言う「ゲートで突進して遅れてしまいました」と、コメント。これで後方に置かれる大きなアクシデント。
一気に飛び出したのが予想通りロードヴァンドール。最内からサクラ
アンプルールが続きます。ネオ
リアリズムとリアルスティール、ミッキーロケット、シャケトラが並んで3番手を争います。その後に内からサトノクラウン。ヤマカツエース、ソウルスターリングが追走。その背後のインにレインボーラインで、真後ろにキタサンブラック。ステファノスと続き、その後が内にグレーターロンドン、外にマカヒキ。サトノアラジンが最後方。



各馬一団の展開でインサイドを大きく開けて雨の中を走り抜けて行きます。
そして、3コーナー、前半1000m通過タイムが64秒2。さすがにスローで展開。そしてポッカリと開いた内から、追い込みのグレーターロンドンが前に馬がいないのでスルスルと2番手。これも内から労せずにキタサンブラックが好位に浮上。
4コーナーで大きく外に広がる中で、内から押し出されるようにグレーターロンドンが先頭に立ちます。続く直後にいたキタサンブラックが2番手。外にサトノクラウンとサクラ
アンプルール。内からレインボーラインと、それに馬体を併せたリアルスティール、外に主導権を取ったロードヴァンドール。インサイドのネオ
リアリズムとシャケトラはステッキが入ります。
ステファノス、ソウルスターリング、ミッキーロケットが中団から懸命に前を追いますが、不良馬場に脚を取られてなかなか思うように前に進んで行けません。後方はマカヒキ、サトノアラジンもこの馬場で厳しい戦いです。
直線早めに抜け出しかけるキタサンブラック。内のグレーターロドンはさすがに脚色が鈍くなってきました。サクラ
アンプルールもギブアップ。



抜け出したキタサンブラック。外のサトノクラウンが2番手。そして先頭に立ったキタサンを必死に追います。ところが、苦しいのか内にモタレながらキタサンの内側に入り、M
デムーロ騎手が懸命のステッキ。これにキタサンブラックはGIで培ってきた二枚腰で応戦。なんとかクビ差サトノクラウンを振り切り天皇楯をゲット。
3着が2馬身半離れてレインボーライン。そこから5馬身も離れリアルスティール、マカヒキがいました。
キタサンブラックは大変な道悪巧者でした。本来の
スピード競馬を豪雨と不良馬場に助けられて、各馬インサイドを敬遠する中、ポッカリ開いた内を労せずして経済コースを走り、好ポジションを早めにキープ。不良馬場が味方したような一戦でした。
勝ちタイムが2分8秒3、ラスト3ハロンが38秒7。例年よりも10秒以上も遅い決着になりました。
もし、良馬場で行われていると、出遅れたキタサンブラックは外をまわるしかなく、厳しい結果になったような気がします。
武豊騎手の安堵の笑みは、そんなところにあったのでしょうか。

