「あれはないよな。あんな乗り方はないゾ!」と、検量室から出て来るなり怒り心頭の音無調教師。
この日は、注目の天皇賞の前哨戦「毎日王冠」が行われました。人気は堀きゅう舎のエース級、ダークシャドウに安田記念を制したリアルインパクトの2頭。結局、1番人気はダークシャドウが2倍という圧倒的な人気。
同型馬が不在でシルポートの単騎逃げ。東京コースということもあって、スローで展開することは誰の目にも明らかでした。
予想通りシルポートの一人旅で、前半の1000m通過が61秒1という、なんと未勝利(翌日の未勝利が芝1800mで60秒4)よりも遅い流れ。これで後方にいた馬は絶望的でしたが、優勝したダークシャドウは出遅れたこともあって後方2番手。この位置から直線で馬込みの中に割って入って行き、あと1ハロンから前が開くと、ケタ違いの瞬発力で見事な差し切り勝ち。ラスト3ハロンが32秒7の破格の末脚。
3番手で流れに乗ったリアルインパクトが、ゴール前で先頭に立ち、そのまま押し切る勢いでしたが惜しくも首差の2着。
「ああ、あと3秒待てば良かったよ。あまりにも手応えが良すぎたから、勝負どころで一気に仕掛けて先頭に立ってしまった。あと3秒仕掛けを待てば・・」と悔やむ岩田騎手。
ゴール寸前で外から鋭く追い込んだミッキードリーム。目下3連勝中という上がり馬の勢いを見せつけました。
このミッキードリームと同きゅう舎のダノンヨーヨー。宝塚記念で初めての2200mにもかかわらず、人気のルーラーシップと0秒1差で渡り合ったことを評価。私はこの馬に◎印。スローが予測される展開で、マイラーズSでは好位置を追走。しぶとく3着に食い込んだことから、前で対応してくるものと見ていたのですが、あまりにも最悪のポジションにガッカリ。2コーナーのところでは中団あたりにインから付けていたのですが、どうしたことかジジワジワと下げて行って、3コーナーでは最後方の消極策。4角をシンガリで回ってきたときは、さすがに外に出す時間はないとみるや、仕方なく馬込みの中に突入して、前の馬を掻き分けて前に出ようとしますが、ラスト3ハロンが33秒6という究極の決着。ゴール前では前が壁になり、まさに不完全燃焼の一戦でした。優勝したダークシャドウと0秒3差の接戦ゆえ、あまりにも残念なレース。
検量室でパトロールフィルムを並んで見る音無調教師と北村友騎手。そのとき音無師の携帯が鳴り、終えたばかりの毎日王冠のダノンムローの走りについて説明している様子。
周りにも聞こえる声で話しています。「3、4コーナーをケツで回ってきて、上がりが33秒6では無理ですよね。本人には押してでもいいから中団くらいには付けろ、といっていたんですが・・」と音無師。
そのとき馬具を片付けに来た北村友騎手が、音無師の背後にまでに接近。それに気づかぬ音無師は、騎乗ミスであったことを認めて平謝り。後ろでバツが悪そうな表情の北村友騎手。
検量室から出てきた音無師。それを追って私が音無師に尋ねました。「今日は京都大賞典もありましたが、こっちだったんですね」と私。
「そう、こっちは2頭出していたから確率がいいと思ってね」と、ジョーク混じりのコメントで返す音無師。
「スローはわかっていたので、少し押してでもいいから前に付けて行け、と北村友には伝えておいたんですよ。そしたら3、4コーナーであんな位置だもの。上がり33秒台にどうやって対応するのよ。馬はみんな頑張って本当に良く仕上がっていたし、オーナーにも申し訳なくてね。いや最初は横山典君に頼もうと思っていたんだけど・・。まあ、北村友はクビだな。オーナーがどう判断するかだけどね、俺もあんな乗り方じゃ辛いよ・・」と、肩を落とす音無調教師。
「今後の予定としては、マイルCS一本ですか」と私。
「いや、今、考えているのは天皇賞に登録しようかなと思っているんですよ。ただ、賞金で除外になったらマイルCSだけどね」と音無師。
カンパニーの夢を再びと、この秋のGI戦線に賭けていました。
音無調教師が怒った毎日王冠のある出来事!
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