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それは20年目のドラマ、父よ、父よ、見てくれたか!!


騎乗者は何度も何度も人目をはばからず涙を拭っていました。それは、彼が20年目にして、積年の思いが滝のように流れだした一瞬でした。

クラシック最高峰の日本ダービーは、一転して好位をキープした5番人気のワグネリアン。二枚腰を見せるエポカドーロをゴール寸前で捉えて優勝。福永祐一騎手にとっては、初めての日本ダービー制覇でした。

皐月賞で逃げまくったアイトーンがダービーに出走できず、強力な逃げ馬が不在。そこで「作戦通り」と言う戸崎騎手のエポカドーロが躊躇なく主導権。と、大外から仕掛けるように前に行く馬、それがワグネリアンでした。「この外枠でしたから、いつものように乗っているとポジションが悪くなるので、引っ掛かる恐れがありましたが、思い切ってあの位置を取りに行きました」と福永騎手。

1988年、この年はスペシャルウィークに次いで2番人気に推されたキングヘイロー。騎乗者はスペシャルウィークが武豊騎手。そしてキングヘイローは若き福永騎手。ところが福永騎手は本馬場に向かうときに極度の緊張感からか顔面蒼白。

皐月賞でセイウンスカイの2着。スペシャルウィークに先着。そして、スペシャルウィークに次ぐ2番人気に期待されたダービーでした。

ところが、大きく歯車が狂ってしまいキングヘイローは、まさに引っ掛かるように先頭に立ち、最後はスタミナを使い切ったようにバタバタでスペシャルウィークの14着。

「僕自身が若かったです」と後悔。この思いが長い間、福永騎手にはトラウマを背負っていたかように、重くのしかかっていたのです。

そんな思いを頭の中をかすめながら、今年のダービーはコズミックアースの外、5番手位置をキープ。前半の1000mを60秒8。半分の1200m通過が1分13秒1。予想通り明らかにスローで展開します。 快調に逃げるエポカドーロ。直後のインに1番人気のダノンプレミアム。外にジェネラーレウーノ。コズミックフォースも同じ位置の外。スタートで後手を踏んだブラストワンピースが好位に押し上げて来ました。この背後にワグネリアン。そのあとにゴーフォザサミット。そしてタイムフライヤー、サンリヴァル。少し離れてステイフーリッシュとジャンダルム。後方にエタリオウ、オウケンムーン、ステルヴィオ。グレイルはどうしたのかここまで下がりました。

エポカドーロを先頭に外からコズミックフォース、内からダノンプレミアム。そして外から追いついて来たワグネリアン。その背後にブラストワンピース。

ラスト100mで二枚腰を見せるエポカドーロ。外から襲い掛かるワグネリアン。追う者と追われる者。ゴール寸前でワグネリアンがエポカドーロを捉えてゴールイン。半馬身差でした。2着が粘ったエポカドーロ。しぶとく並びかけて来たコズミックフォースが3着。一番外から追い込んで来たエタリオウ、その内にブラストワンピース。ダノンプレミアムも内で食い下がっていました。

ゴール通過したあとダノンプレミアムの川田騎手が、福永騎手に寄り添って祝福します。1着のワグネリアンから6着ダノンプレミアムまで、僅か0秒2差のドラマでした。