3400mという東京競馬場で最も長い距離の「ダイヤモンドS」。GⅢのハンデ戦とあって、トップクラスの馬の出走を見る機会は、まず皆無に近いのですが、今年は菊花賞馬オウケンブルースリが58・5Kを背負って参戦。さらに春の天皇賞馬マイネルキッツも58・5Kで登場。ところが、オウケンブルースリが3番人気で、マイネルキッツにいたっては6番人気。GI優勝という栄光は遠く遥かにかすんで見えました。
1番人気にノシ上がったのは1000万→準オープンと連勝中の良血馬ギュスターヴクライ。母がGI馬ファビラスラフインなのです。準オープンでダコールに半馬身差勝ったような馬が1番人気。このことは出走したGI馬にファンは「ノー」を突きつけたことにもつながるわる訳で、GIという栄えある勲章は年老いた者の飾り物にすぎない、という思いがあるのかも知れません。
そして、それは現実のものとなって、いわばムーディーズが金融市場で国債の格下げを発表するがごとく、GI馬は名誉を傷つけられる結果が待っていたのでした。
優勝馬はケイアイドウソジン。騎乗した吉田豊騎手も驚いた単騎一人旅の逃げ切り勝ちという結末。なんと15番人気。単勝1万9000円の衝撃の結果だったのです。
それは戦前からほとんどのファンが予測した通り。強力な逃げ馬を欠いて、超スローの展開が予想されたのです。いつも先行していたネコパンチが中団に控える展開。この騎乗はどう考えても解せません。使いすぎて体調がよくないのであれば、出走せず休ませるべきです。
押し出されるようにして主導権を取ったのはケイアイドウソジン。昨秋の目黒記念から惨敗に次ぐ惨敗。5戦続けて二ケタ着順を繰り返している馬なのです。最下位候補のこの馬が逃げても後続の騎手の心理状態に変化はなかったでしょう。2番手で折り合いを付けたかった安藤勝騎手が騎乗したスマートファルコンには願っていた理想の形。
大敗続きのセイカアレグロが3番手で、そのあとにリッカロイヤルと、内に昨秋の京都大賞典2着のビートブラック。1番人気のギュスターヴクライは中団よりやや後ろ。後方にマイネルキッツとオウケンブルースリ。
前半1000mの通過が63秒5とスロー。2000m通過が2分11秒2。昨年は2分6秒1でしたから信じられないような超スローの流れ。こんな展開で縦長になるのが不思議なくらい。この流れで坦々とレースは進みます。
4角でうまくハミがかかった2番手のスマートロビンにとっては最高の形でしたが、このとき安藤勝騎手は後続から伸びてくる馬を待ってから追い出そうと、直線も抜群の手応えで、スパートの機会を待ちます。おそらく前にいる馬が人気馬であれば、スマートロビンは仕掛けて先頭を取りに行ったはずでした。
「大きくて不器用な馬だから、あそこで待ったのがよくなかった。ゴーサインを出しても咄嗟に反応してくれないんです」と、安藤勝騎手は悔しそう。
そんなことはお構いなし。ただひたすら逃げるだけ。ケイアイドウソジン吉田豊騎手は何かに差し込まれる覚悟はできていたのですが、少しでも上位で頑張りたい、その一念が優勝という形で転がり込んだのでした。
1番人気のギュスターヴクライが直線で狭いところを抜けて、ゴール前は外からグイグイ肉迫したものの2着まで。それでも初めての長距離で、厳しい展開の中を2着だったことは、それなりに収穫でした。4歳馬でもあり春の活躍が期待されます。
3着だったスマートロビンは、スローで直線勝負のヨーイドンという形の競馬は不向きということがハッキリしましたが、まだまだ絞り込めそうな馬体からも侮れません。
そしてGI馬のマイネルキッツが10着。オウケンブルースリに至っては14着。両馬には復活という光がまったく見えないようです。
ブービー15番人気馬が優勝!GI馬という勲章に老雄馬の現実!
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