単勝支持率が1.3倍。まさに不動の本命に推された2冠馬ジェンティルドンナ。史上4頭目の3冠を目指して「秋華賞」に姿を現しました。
思えば桜花賞で半馬身差、オークスが5馬身差の独走。トライアルのローズSも1馬身半差の圧勝。距離の2000mでは、まずツケ入るスキがないようにも思われて、今年の秋華賞は、まさにジェンティルドンナ一色に染まった秋華賞でした。
しかしながら、無敵の快進撃を見せるジェンティルドンナにも必ず死角はある、と私は信念のようなものを持っていたのです。
そのひとつが枠順だったのです。今回の秋華賞は当面のライバルであるヴィルシーナが1番枠。対する14番枠にジェンティル。桜花賞が15と10番枠。オークスが9と14番枠。さらにローズSが7と6番枠。最大で相手と5番枠しか開きがなかったのが、今回は13番枠と広がったのです。ジェンティルドンナにとって最大の目標としている馬が、離れれば離れるほど当然ながら見づらく競馬は難しくなります。逆に失うものがないヴィルシーナにとっては、大胆な作戦が組みやすくなるのです。
しかも、今回は強力な逃げ馬が不在。内枠には差し追い込みタイプがほとんど。「それなら一気に先手を取って経済コースを、しっかり走ってくれば、何とかなるかも知れない。ジェンティルを負かすにはこの作戦しかない」と、ヴィルシーナの内田博騎手は、胸に秘めるものがありました。
一方、大本命のジェンティルドンナにとっては、少しイレ込み気味だったので、折り合いさえ付けて行ければ、オークスで見せた強烈な末脚からも必ず勝利はついてくる、という岩田騎手の思いだったはずです。できれば、ヴィルシーナという目標を視野から離したくない、という思惑もあったでしょう。
そして、注目の秋華賞はスタートを切りました。ゲートが開くやいなや最内からヴィルシーナの白い帽子の内田騎手が、懸命に手綱を押して押して主導権を主張。これには他のジョッキーも仕方なく、それぞれのポジションで折り合いに専念。注目のジェンティルドンナも好スタート。じんわりと中団外目のポジションで機を窺う形。各馬接近した位置取りで、好位置近くには3番人気のアイムユアーズ。
ゆっくりしたペースで逃げるヴィルシーナの外側にメイショウスザンナ、その直後にアイスフォーリス。キャトルフィーユがインにいて、その直後にダイワズーム。前半3ハロンが36秒5の超スロー。過去10年で1番遅いペース。半マイル通過が49秒9と未勝利並みの流れ。先頭のヴィルシーナが1000m通過にさしかからんとしたときでした。出負けして最後方にいたチェリーメドゥーサが、イチカバチカの大勝負に出たのです。小牧太騎手が思い切って仕掛けて、馬群の外をグングン浮上。あっという間に先頭に立つとペースを緩めず、そのまま2馬身、3馬身とみるみる2番手以下の後続を引き離していきます。
1000m通過が62秒2、前半1200m通過が1分13秒8。2番手のヴィルシーナも先頭に立っているチェリーメドゥーサは無視。あくまでも照準はジェンティルドンナ。
そのジェンティルドンナも3角からジワジワ進出態勢。4角で外をまわって好位置の直後近くに浮上したものの、ここで少しモタつき気味。
一方、快調に飛ばしたチェリーメドゥーサは4角をまわったところで、後続との差が6、7馬身差。大歓声の中で大きな水をあけてゴールを目指します。
2番手のヴィルシーナが追い出しを開始。そのとき外から懸命にジェンティルドンナが接近。そしてヴィルシーナの外に並びかけたまでは良かったのですが、前を行くチェリーメドゥーサが必死の粘り腰。ここから内にヴィルシーナとジェンティルドンナ、内田と岩田の激しいバトル。ゴール50m手前でチェリーを抜き去ると、一旦、ジェンティルが出たのですが、そこからヴィルシーナの真骨頂。二枚腰で盛り返して、頭の上げ下げ状態で、両馬譲らず並んでゴールイン。
ゴールを過ぎてお互いに見つめ合う岩田・内田の両ジョッキー。何か語り合い、次の瞬間、岩田騎手がガッツポーズをして大きな声で吠えたように見えました。
その差はたった7センチ。むろん傑出した能力と、その並外れた勝負強さ。そして強運が全てミックスしたような馬がジェンティルドンナ。あのウオッカやブエナビスタでさえ成しえなかった秋華賞優勝。そして牝馬3冠制覇。その偉大さや重みは、時を刻む歴史の中で、一段と光り輝くはずです。
また、ハナ差敗れたヴィルシーナ。ベストを尽くしてジェンティルドンナの牙城を崩せなかったものの牝馬3冠全てオール2着。ジェンティルドンナがいなければ、まさに3冠馬でしたが、それでも全力投球する彼女、ヴィルシーナに心から拍手を送りたいと思います。内田博騎手自身もヴィルシーナを誉めてあげたいとコメントしていました。
たった7センチという歴史的な激戦で掴み取った3冠という重み!
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