太宰治の世界と津軽鉄道を背に、リゾートしらかみ・橅号は、金色に輝く津軽平野を岩木山方面に向って突き進みます。実にのどかな、みちのくの田園風景が優しさをもって迎えてくれました。
そして五能線の次なる駅が陸奥鶴田駅でした。丹頂鶴で有名な津軽富士見湖がある丹頂鶴自然公園が近くにあり、ここから望む津軽富士の岩木山は、津軽屈指の絶景ポイント。そして津軽富士見湖には三連太鼓橋(アーチ型が3つ続く)が、湖畔に優雅に手を広げて、津軽富士の岩木山と絶妙のロケーション。何でも三連太鼓橋は木造としては日本一長い橋だそうです。きっと時間が経つのを忘れてしまうほどのスポットなのでしょう。
この陸奥鶴田駅の物産コーナーでは人気の「スチューベンソフト」というソフトクリーム発売中。スチューベンとは葡萄の人気品種のひとつで鶴田町は生産日本一とか。是非一度は口にしたいスイーツです。
さて、この陸奥鶴田駅から乗り込んで来た中年とおぼしき男女。1号車の最前列のフリースペースに陣取り、マイク片手に語りかけてきました。車内アナウンスもあったのですが、津軽民話の語りべの方でした。独特のあったかい津軽弁でのむかしむかしの話。これは珍しいと聞き耳を立てていたのですが、マイクのボリュームが低かったのか、列車の車内という条件の中、また津軽弁ということも重なって、ところどころ聴き取り辛く、残念な思いが残りました。そうなると車内で雑談を始める乗客もあって、折角の語りべの方の熱弁をパーフェクトに理解することはできませんでした。
そして津軽を代表する、りんごの町で有名な板柳駅に到着。駅からりんご一色。アップルパイの旨そうなこと・・。後ろ髪を惹かれる思いで、しらかみ号は次なる川部駅に向い岩木山を右手に見て走り出したのでした。川部駅に近づくに従い田園風景の中に人家の数も増してきて、なんとなく終点の弘前が近づいていることを、感じ取ることができたのです。
奥羽本線と交わる川部駅に滑り込むと、ここでしばしの待ち時間。奥羽本線に乗り換える乗客も多く、終点の弘前駅まで行く乗客は半分となったのです。
そして、しらかみ号はここで列車が反転、最後尾の車両が先頭になり、青森とは反対の秋田方面に向って走り出したのでした。これも五能線ならではの旅のひとつ。
弘前駅に無事到着。時計の針は15時51分を指していました。5時間の五能線の旅。長かったという印象はまったくなく、逆にもっと乗っていたい、もっと旅したい、という名残りのような心情が湧き出ていたのでした。
さて、どうしょう、このまま青森駅まで行ってもいいが、やはり、名所、史跡が多い城下町の弘前。ここはひとつ街に出て弘前の歴史の風を感じ取らねば、と思い立って改札を出たのです。
駅の階段を降りると、ふっと思い立ったのが桜と城で有名な弘前城。駅前を歩いている女子高生に尋ねると、私が津軽弁ではないことに一瞬ビックリしたのか、目をきょとんとしていましたが、すぐにあったかい眼差しに変わり、津軽訛りの混じった言葉で「市内循環バスがあるんですよ」と言いかけると、一緒にいた友人が「ほらさ、そこの停留所にくっから」と指差してバスストップを教えてくれたのです。
礼を言って向おうとすると背後から「ヒャッキンだよ」と、都会で耳慣れしている言葉でいうと、「ケラケラ」と笑って、手を振って立ち去って行きました。
津軽10万石の城下町だけあって、歴史的な史跡、建造物がいたるところにあるのです。リゾートしらかみ号の旅人の何人かも市内循環バス、100円バスに乗車して目指すはいざ、弘前城。
バスから降りた弘前公園はただただ広く、桜並木が城に向って続いています。春の桜の頃にくれば、さぞかし見事だろうなあ、との思いで城前の朱色の橋に立つと、弘前城は3層の天守閣。白く美しい出で立ちで凜としていました。城の中に入ろうとすると、入館料300円也。それも17時までだというので、慌てて弘前城に突入。
城内は国の無形文化財という品々が陳列。鎧兜や日本刀、藩主の籠等々。江戸城とほぼ同じ時期に、二代目藩主によって築城した弘前城。天守閣から望む岩木山。まさに殿様気分の絶景かな、いや絶景かな。下に降りると夕日がキラキラと、これまた嬉しい景観。広い公園を探索時間の余裕もなく、仕方なく弘前城を後にしたのでした。
弘前駅に着くと、青森行きの列車が時間をおかずにやって来ました。そして一路、青森駅に向ったのです。
青森駅はもう夕闇に包まれていました。とりあえず宿にチェックイン。部屋のカーテンを開けると、予期せず素晴らしい景色が広がっていたのです。青森港が眼下に見えて、客船が桟橋に横付けされています。遠く目をやれば、かすかに見える下北半島。その半島からチカチカと光が、まるで手招きしているような水先案内をしてくれているのです。
ホテルから外に出ると、そこはもう青森港でした。というよりも海でし
さらば夏の日、感動!感激!五能線に魅せられて・・最終回
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