
それは3200mの独り舞台でした。数々の名シーンを繰り広げて来た長距離の頂点、第165回
「天皇賞」・
春の陣。今年も京都ではなく阪神が舞台。
スタートと同時に外枠から真一文字に飛び出した
タイトルホルダー(2番人気)。昨年の
菊花賞で5馬身差の独走。そのスタミナは現役、古馬陣の中では屈指の存在。
横山和騎手は引き付けた逃げではなく、あくまでも
タイトルホルダーのペースを重視。2番手の
クレッシェンドラヴ以下に5、6馬身くらいの差をつけて一人旅。前半の5ハロンを60秒5(稍重馬場)。早めのペースでポンポンと快調に飛ばします。

スタートで落馬したカラ馬のシルヴァーソニックが2番手争いに絡んできます。タガノディアマンテ、4番人気のテーオーロイヤル。そこには1番人気のディープボンドもいます。それをマークする形で3番人気のアイアンバローズ、ヒートオンビート。後方にはマカオンドールと最後方にディバインフォースが展開。

2週目の3コーナーで後続を大きく離していた
タイトルホルダー。ここで一息入れさせて後続を引き付けます。ここだとばかりテーオーロイヤルが一気に仕掛けて先頭の
タイトルホルダーに迫ります。ここで遅れてはなるまいと、ディープボンドの
和田竜騎手がステッキを入れて懸命に前を追います。他の馬はここで大きく取り残されてしまいます。

ところが、後続が接近したのをゴーサインに、ここから
タイトルホルダーの真骨頂。なんとなんとグンと最加速。追いついて来た2頭を逆に突き放すスタミナ。最速のラスト36秒4!ゴール前でテーオーロイヤルを捉えたディープボンドに7馬身差。圧倒的なワンマンショー。

思えば平成16年、
イングランディーレが
春の天皇賞で7馬身差の独走を演じたときと同じ圧倒的な結末。当時の騎乗者は奇しくも父の
横山典騎手。そして
春の天皇賞を親子3代に渡る記念すべき制覇。実に見事でした。

昨年に続き2着だった1番人気のディープボンド。
和田竜騎手はこう振り返ります。「勝った馬にあんな走りをされたら、もうどうしようもないです」と完全に脱帽。

「秋は凱旋門賞だろう!」とニュースが流れるほど、圧倒的な内容の
タイトルホルダーの独走劇でした。
