ああ、絶好のチャンスだった京都金杯の逃走劇!!
「京都金杯」は過去10年で3頭の馬が逃げ切り勝ち。ビッグプラネットにマイネルスケルツィ、そしてシルポート。この3頭に共通するのが前半3ハロンを、それぞれ35秒1、35秒2、35秒4の緩いペースに持ち込んで、そのまま押し切って勝っているのでした。
ところが、34秒1で飛ばした3年前のマイネルレーニア、そして33秒8で逃げまくった昨年のシルポート。ともに15着、16着とバタバタの惨敗。とすると、今年も大きなカギを握っているのが逃げ馬。それがヤマニンウイスカーでした。好位置で折り合いがつくブリッツェンが2番手に控えると、まさしくヤマニンウイスカーの単騎一人旅だと、私は高ぶる気持ちを抑えるのに苦労するほどでした。
というのも、前走の東京キャピタルSで見事な逃げ切り勝ち。当時は18番人気でファンの度肝を抜いたものでした。それも人気のトーセンレーヴ、クラレント以下をねじ伏せたのです。時計がマイル1分32秒1で、ラストが45秒9-34秒2と、まさに完璧な圧勝劇だったのです。それは、重賞の冨士S(1分32秒4)を上回る出色のレベル。それまでの大敗続きを一掃するような大変身だったのです。
大敗続きのときには出遅れ癖もあってか、ほとんど後方でプラプラしている見どころのないレースの繰り返し。であれば、キャピタルSの逃げ切りは、新生ヤマニンウイスカーとして開眼!と、私は判断。今回は重賞とあってか伊藤工騎手から武豊騎手にチェンジ。
ただ、不安は武豊騎手が意識的に大事に乗るかも知れない。ブリッツェンが強く先手を主張したら2番手に控える。あるいは主導権を取ったにしても、後続をピッタリと引き付けておくと、重賞常連の凄い決め手のある馬に差し込まれるかも・・と考えていたのです。
結果的にそれは現実のものになってしまいました。主導権を主張したら外からにじり寄ってきたブリッツェンが2番手をわかっていたようにスンナリと、ヤマニンウイスカーの直後で承諾。3番手の内にいたトライアンフマーチが口を割って引っ掛かり、岩田騎手が立ち上がって懸命に御している様子が目に飛び込んできました。その外にはエイシンリターンズ。直後には2番人気のサウンドオブハートがイン狙い。それを目標にしたのか1番人気のダノンシャーク。その外には馬体を併せる形で4番人気のトーセンレーヴ。ショウリュウムーンは中団よりやや後ろのラチ沿いを追走。後方にはいつものようにダローネガ以下が末脚を温存策。
前半3ハロンが35秒3で、半分の4ハロンが47秒4。ペースは逃げ馬にとって理想的でしたが、他のブリッツェン以下の後続の馬も、緩い流れということもあって、楽々ついて来ているのです。
「ああ、これではマズイ!ヤマニンウイスカーの手応えはバッチリだけど、他の馬も楽について来ているし、これでは決め手の長けている馬に差し込まれてしまう」と、心の中で声を上げてしまいました。
直線で一瞬、後続を突き放しかけたのですが、4角で好位のインに進出したルメール騎手のダノンシャークの勢いが素晴らしく、あっという間に突き抜けてしまったのです。それでも執拗に頑張るヤマニンシャーク。その外に前半引っ掛かっていた岩田騎手のトライアンフマーチが馬体を併せて、熾烈な2着争い。岩田騎手独特のあの大きな騎乗アクションで、2頭並んでゴールイン。結果はヤマニンウイスカーが際どいハナ差負けで3着。私は思わず肩を落としてしまいました。
この手のタイプは有馬記念に出走したビートブラック然り、少し大きめにリードを取るか、ロングスパートを仕掛けるかしか他にないように思われます。楽な逃げを打てても後続にピッタリ張り付いていられて、ヨーイドンで勝てるくらいなら、以前からもっともっと勝っていたはずです。それゆえ今回の手緩い逃げは、残念な思いが残るのでした。
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