それはそれは仰天の末脚でした。ゴール寸前で突如出現したその馬は、激しいゴール前の叩き合いを演じている中で、圏外から風のようにやってきて、あっという間にそれらの馬たちを飲み込んでしまったのです。
メイショウマシュウ。明けて5歳を迎えた馬。暮れの阪神、ギャラクシーSでオープン初挑戦。ガンジス、トウショウカズン、ファリダットを相手に3着。中団から直線で強襲。敗れはしたものの優勝したガンジスと、わずか0秒1差。ファリダットに先着をして見せたのです。これでオープンでも通用することがわかったことで、今回の重賞初挑戦となったようでした。
この日、最終日のフェブラリーSを目指す有力馬が勢ぞろい。圧倒的な1番人気がギャラクシーSの優勝馬ガンジス。ダートでは着外なし。明け4歳馬で、その成長力は目を見張るものがありました。2番人気はカペラSでシルクフォーチュンの2着と、これまた戦力アップ中のエーシンウェズン。
レースはトシキャンディが引っ張り、これをタイセイレジェンド、アーリーデイズ、ダイショウジェットが追いかける形。セイクリムズン、ガンジスが先行勢を見るような形で流れに乗ります。トウショウカズンとダノンカモンが中団。後方には出負けしたメイショウマシュウ、テスタマッタ、ストローハット。
前半の3ハロンが35秒7で、ダート1400mに固定化されてから9年でもっとも遅いペース。それゆえ先頭から中団くらいまで一塊のような展開で進みます。直線は経済コースに各馬が殺到。ダノンカモンのように前が壁になり仕掛けが遅れてしまう馬もいて、直線の坂を上がってからも各馬横並びになるデットヒート。
先行馬の直後のインで末脚を温存していたセイクリムズン、その外にガンジス。その後ろからエーシンウェズンとトウショウカズンですが鋭さが今ひとつ。ダノンカモンは馬込みの中から、ようやく伸びかけてきましたが、前との差がありすぎました。
直線入り口では後方2番手だったメイショウマシュウが、外目に出してグングン接近中。同じように後方から大外に出して激しく追い上げてきたテスタマッタは、久々の一戦と、59Kが応えたのか坂を上がってからは前と同じ脚色。
そんな中で、メイショウマシュウの脚勢はずば抜けていました。ゴール寸前で見事にガンジス、セイクリムズンを捉えて優勝。かなり接近した写真判定でしたが、最後のひと追いでハナ差だけ差し切ったのです。
1分23秒7、ラスト3ハロンが35秒7。前半の流れが過去一番遅かったので、このくらいの時計は出るのですが、それにも増してメイショウマシュウの破壊力は強烈過ぎました。なんと34秒6と、むろんメンバー最速。東京ダート1400mの重賞、根岸Sの勝ち馬では、昨年のシルクフォーチュンの34秒9の切れ味が最高タイムでしたが、それを上回る神業的な破壊力。
これまでダート1400mを専門に走ってきましたが、1度走ったダート1700mで4馬身差の独走劇。フェブラリーSのマイル戦も問題ないように思えました(残念ながらレース後骨折が判明)。
昨年、根岸Sを優勝したシルクフォーチュンは藤岡康太騎手のコンビ。今年は兄の藤岡佑介騎手。兄弟騎手の連続制覇でした。
また、末脚ではストローハットも注目していたのですが、スタートで躓き最後方。直線では右寛ハ行の疾病を発症し中止。残念な結果となりました。