今年のスプリンターズSは戦前から或る独特の雰囲気の中にありました。強力で大きな勢力を持つ台風17号が来襲。日本列島に近づくに従ってスピードアップ。日曜日の関西はもとより関東地方も影響が心配されました。
もしも台風接近で雨が降り出すと、スピード決着の馬場から一転、パワフルさが要求される馬場コンディションになるかも知れない。果たして・・・。
それに今年はダッシュ力が自慢のエーシンダックマンやテイエムオオタカといったスプリンターが回避。一昨年、主導権を取って、そのまま押し切った香港のウルトラファンタジーや、昨年のアジアの超特急と異名を取った1番人気ロケットマンといった外国からの主導権をとりそうな馬も不在。
前哨戦のセントウルSで逃げまくって失速したマジンプロスパー関係者は、何か前に行く馬がいて、それを前に見て折り合ってレースの流れに乗ることが理想とコメント。キーンランドCを逃げ切ったパドトロア陣営も、何かが行けば2、3番手でも問題ない、と先手にはこだわらないことをアピール。
ところが、このことが各関係者や、ジョッキーに与えた心理状態は、どうも考えた以上にペースが速くならないかも知れない。という読みがあったようでした。
そのことは、前に馬を置いて流れに乗りたいと言っていたマジンプロスパーの福永騎手はレース後「ハナにはこだわらなかったけど、まわりのみんなが牽制し合っているようだったので、それならと思って行っちゃいました」とコメント。
1番枠から主導権を得たマジンプロスパーでしたが、安田隆きゅう舎の一角、ダッシャーゴーゴーも意外と落ち着いたペースになると考えたのか、直ぐ外に並びかける形で2番手。パドトロワがその後で、内にはエーシンヴァーゴウ。そして1番人気で連覇を目指すカレンチャンと香港のリトルブリッジ。
中団のインにフィフスペトルがいてその外にロードカナロア。それらの直後にはドリームバレンチノと、セントウルS優勝のエピセアローム。スタートで大きく遅れた香港のラッキーナイン。
3角で逃げるマジンプロスパーの外からパドトロワが先頭に立つシーン。内にマジンで、その外に手応えよくダッシャーゴーゴー。
スタートして1ハロン目が12秒0と平凡だったものの2ハロン目が10秒1で、3ハロン目が10秒6。前半の3ハロンが32秒7と、過去10年で最速のペース。そして半マイルの800mが43秒9という予測されていた以上の激しい流れ。
こうなると、前で展開していた馬には厳しい形。4角で外から好位置に進出したカレンチャン。そして、それを目標に待機策で辛抱していたロードカナロアが外から進撃開始。まずカレンチャンが直線中程で一気に先頭に並びかけると、ロードカナロアもすかさず背後に接近。ゴール前で先頭に立ったカレンチャンを悠々と捉えて初めてのGI制覇。
ゴール前で内から狭い馬込みを縫ってドリームバレンチノが猛追。函館スプリントSでロードカナロアに競り勝った勝負強さを見せて3着と好走。エピセアロームも良く末脚を伸ばして4着。初めての中山で不安でしたが6ハロン戦はさすがに走ります。
スタートで出遅れたラッキーナイン。直線で素晴らしい伸び脚を見せてくれましたが、あと一息及ばず際どい5着。来日後、とくべつ追い切りらしい追い切りは行っていませんでしたが、香港で十分に仕上げて来日。馬体はキッチリと出来ていました。
いずれにしても、戦前には予測もつかない記録的なハイペースで、それぞれ積極的に乗り入れていった馬たちは壊滅状態で失速。そして、近代競馬150周年記念に1分6秒7というレコードで決着した記念すべきスプリンターズS。ロードカナロアに騎乗した岩田騎手のパフォーマンスも競馬ファンには忘れられないシーンとなりそうです。
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先行馬が撃沈したスプリンターズSの或る誤算!!
9月の雨が激しく降り続く中でドンピシャだった柴善・ナイト!
古馬陣の中距離重賞「オールカマー」。天皇賞やアルゼンチン共和国杯につながる重要な一戦。
ところが、今年からある条件が変わっていたのです。というのも、これまで同様に別定戦なのですが、昨年、優勝したアーネストリーが宝塚記念1着ということもあり59K。2着のゲシュタルトが57K、重賞未勝利のカリバーンが同じ57Kで3着。この2K差は実績上位馬に有利な別定だったのですが、今年はそれに輪をかけて実績を残している馬にはしこぶる有利な条件となっていました。ナカヤマナイトが56K、ダイワファルコンが56K。7歳牝馬のアースシンボルが54K。これは明らかに重賞で実績ある馬に有利な斤量だったのです。
このことは、長期休養明けとなった天皇賞馬で9歳のマイネルキッツは別にしても、この斤量はナカヤマナイト、ダイワファルコンにとって大きな援軍。しかも、2頭とも中山コースを滅法得意にしており、かつ、休養明けに良績がある、いわゆるポン駆けが利くタイプ。まさにオールカマーは狙い澄ました一戦だったのです。
一方で、札幌日経賞をレコードで圧倒した大器ルルーシュ。9戦5勝2着2回3着1回という底を見せていない4歳馬で、一戦毎の成長ぶりからも期待するファンが殺到。単勝2.4倍の1番人気に推されたのでした。直前の追い切りでもWコースで、とびっきりの素晴らしい動きを披露。充実ぶりをアピール。
私の目には、おそらくこの3頭の争いになると推察。馬券的に妙味がある単勝13.7倍のダイワファルコンに◎。
目下2連勝と逃げ足に磨きをかけているラッキーバニラ。今回も中舘騎手で主導権と考えたのですが、内からコスモラピュタが強引に先手にこだわり、包まれることを嫌がったのか2番枠のルルーシュも積極策。同じように好スタートを決めたダイワファルコンも先行策を強行。この後にラッキーバニラが続き、中団のインにユニバーサルバンク。その外にナカヤマナイト。雨が降りしきる馬場で、内側のダートの上に溜まった水が、キラキラ光ります。
2角で先手を取ったコスモラピュタの大野騎手がチラッと外に目をやると、ラッキーバニラがピッタリと2番手マーク。少し離れてルルーシュ、その後ろにダイワファルコン。コスモファントムが外からじわっと内のサンテミリオンと並んで4番手。その直後まで進出してきたナカヤマナイト。その内にユニバーサルバンク。前半の1000m通過が61秒4。雨の中の重馬場ということを考えると、平均的な流れ。
動きが慌ただしくなったのは、3角過ぎからでラッキーバニラが先頭で、内にコスモラピュタ、外に凄い手応えでダイワファルコンが2番手から先頭を窺うような勢い。そのとき4番手にナカヤマナイトがルルーシュを抑えて一気に進出。もう完全に射程権。また直後のルルーシュも手応えは十分。
もう我慢できないとばかりに4角で先頭に踊り出たダイワファルコン。それを見てナカヤマナイトが追撃態勢。ルルーシュもインから3番手で、その外にユニバーサルバンクが浮上。
逃げるダイワ、並びかけたナカヤマ。インからルルーシュが3番手に浮上。ああ、予想した通り、この3頭の争いと一見そう考えました。ゴール寸前で先頭に立ったナカヤマナイトは1着間違いなし。2着がダイワファルコンで決まり。一瞬、グッと伸びたルルーシュが3着に入ると見えたそのときに、外からユニバーサルバンクのピンナ騎手が懸命に追って、内のルルーシュと並んでゴール。結果は必死に追ったユニバーサルバンクが、ルルーシュをクビ差捉えて3着。絶好調に見えたルルーシュが4着とは皮肉なものです。
それぞれの敗戦の弁は道悪に脚をとられた、ノメッた、というコメント。ただし道悪が上手ではないダイワファルコンが2着の頑張り。やはり、ルルーシュは中山の急坂が初めての経験ということも、応えたのかも知れません。次開催の東京が注目されます。