実に完璧なレースでした。それは次なる戦いの力強いメーセージ走でもありました。オールカマーは宝塚記念を圧勝したアーネストリーが登場。それは当然ながらここでは格が違うとばかりに、単勝1・4倍の飛び抜けた人気。
確かにアーネストリー以外はGIクラスの馬が見当たらず、役者が一枚も二枚も違う、いわゆる顔ぶれに恵まれた一戦でもありました。
それでも、初めて背負う59Kは大丈夫なのか?札幌記念を捻挫で急遽回避した不安はないのか?当日のマイナス12Kの馬体重は?という課題があったことも事実。
スタートで外枠からシャドウゲイトの田中勝騎手が気合を入れて、一気に飛び出しグングン引き離しにかかります。2番手に付けたコロンバスサークル。その後のアーネストリーは、2コーナーで少し離れた3番手をジックリと出撃を待つ態勢。いつでもゴーサインから飛び出していける手応えのように思えました。
シャドウゲイトが引き離して逃げたものの前半1000m通過タイムが60秒5。比較的ゆったりした流れで展開。4角でコロンバスサークルが接近。それを見てアーネストリーも馬体を外から併せにかかります。59Kを背負っていることで、佐藤哲騎手が早めの抜け出し作戦で直線先頭に立つと、そのまま楽に押し切って優勝。馬込みの中からゴール寸前で猛然と後方にいたゲシュタルトが追い込んで来ましたが、アーネストリーを脅かすまでもなく、まさに格の違いで圧勝。
勝ちタイムが2分11秒2、ラスト3ハロンが34秒9。過去10年でもっとも速い時計。立派です。
佐々木晶調教師は「期待に応えられて良かったです。59Kが気になっていましたが、問題なかったですね。馬体が減っていた?それは昨日もオーナーに伝えたのですが、このくらい減ると思っていましたよ。札幌記念を使うつもりでキッチリと仕上げていましたからね。軽い筋肉痛でパスしたあと札幌から鳥取の育成場まで運んで、それから栗東トレセンに戻り、そして今回の中山ですから、このくらい減るのは覚悟していたことですよ。まあ、59Kもなんとか克服してくれましたからね。安心しましたよ。こんな無茶苦茶な斤量はないですよ。来年からはこういう斤量はなくなるらしいですけどね」と苦笑い。
「今回はメンバーが手薄だったので良かったですね。無駄な力をほとんど使わなくて・・」と私が語りかけると、
「いやあ、本当にそれは助かりましたね・・」と佐々木晶師。
「で、このあとのローテーションは・・」と私。
「これはもう決めてあるんです。今回のオールカマーの後は天皇賞。そして有馬記念です。年内はあと2戦ですね。ただ、東京はこの馬にどうかなあ、と思っているんです。てっちゃん(佐藤哲騎手)によれば、直線が長いから馬が走っていて、どうも飽きちゃうらしんですよ。問題はそこですかね」と佐々木晶師。
「いずれにしても来年は7歳になるし、招待されれば海外のどこでも行くつもりです。オーナーともそれは相談してあります」と、目を輝かせる佐々木晶師。
来る天皇賞、そしてグランプリ有馬記念。アーネストリーがどんなレースをしてくれるのか胸が躍ります。再びあの◎に推したときのような宝塚記念の興奮と感動を味じわせて欲しいものです。
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今年は天皇賞と有馬記念だけ。来年は招待されればどこにでも行きます!
神業的オルフェーヴルのラスト“32秒8”でディープ以来の3冠馬の可能性が・・
それは完璧!でした。そして圧巻!でした。単勝支持率1・7倍。圧倒的な人気に推された2冠馬オルフェーヴル。本番の菊花賞を見据えたトライアル神戸新聞杯でしたが、パドックから受けた印象は、威圧感のような凄みさえ感じられる馬体造り。発表された計測は460K。ダービー時より16Kプラス。あまり馬格のないというより研ぎ澄まされたトップクラスの馬だけが持つオーラをもった馬でしたが、ひと夏を越してトモの辺りを中心に、全体的に筋肉のボリュームが増し、明らかに成長のあとが、そこからはっきりと訴えかけてくるのです。
「う~ん、参った!これは圧勝されるかも知れないな・・」と、直感的に私の目にはそう映ったのです。
まさにそれは本物でした。逃げ馬が不在のメンバー構成の中で、小牧太騎手のスマートロビンが前半5ハロンを63秒5で、半分の1200m通過が1分17秒2という信じられない超スローペース。そのことを見越したのか、池添騎手のオルフェーヴルが好位置の5番手を追走。いつでもスパートして抜け出せる位置取りで展開。
「よし、この流れで折り合えれば3000mの菊花賞も心配ない」という思いが、池添騎手の頭の中にあったはずです。
それに応えてオルフェーヴルもゆったりした流れのレースを楽しむかのような走りで気持ち良さそうに追走。
「これはマズイ!」と考えたライバルのウインバリアシオン・安藤勝騎手。オルフェーヴルを徹底的にマーク。その走りを見て早めに3角から動き出し、4角で勝ち馬の外に急接近。それを見ても動じない池添騎手。ライバルの追い出しを待ってから仕掛けると、それこそ異次元の破壊力でグングン加速して、先頭に立つやいなや、あっという間に突き抜けていたのです。しかも、ゴール前では抑えるほどの手応え。驚愕の強さでした。
4角でオルフェーヴルを射程権に入れたはずのウインバリアシオンも、これにはどうしようもなく、まるで無抵抗のような状態。そこには2馬身半差という大きな水が開いてしまったのでした。
「4角でがっぷり四つに組んだと思ったら、一方的に投げられた」というのが、ウインバリアシオンの正直な心情でしょうか。
スローペースゆえ一昨年の優勝馬イコピコより4秒1も遅く、今年同様にスローだった昨年のローズキングダムよりも2秒4も遅いタイム。とはいえ、余裕を残して神業的ラスト32秒8。いよいよ3冠馬へのカウントダウンが始まりました。
一方で勝ち馬をマークして2着だったウインバリアシオンも、さすがダービー2着がダテではないところを実証。馬体がプラス18K。やはり本番を意識した余裕残り造りだったように思えました。ゆえに関係者も納得の2着でしょう。
神戸新聞杯まで無敵の3連勝だったフレールジャックは、初めてのクラシック級が相手で、初体験の2400mでレース中は引っかかるような仕種。それでもウインバリアシオンと同じような末脚で3着は、さすがに一級品の素材です。馬体がプラス6Kで442K。これも歓迎材料だったように思います。
武豊騎手のショウナンマイティは後方で展開し、直線勝負に賭けたのでしたが、この高速ラスト決着では、5着もやむなしといったところでしょうか。
好位置で展開したステラロッサは馬体が絞れていい感じでしたが、4角でペースが急激に上がったときに、サッと対応できなかったことが最後まで応えた印象です。今後の成長力に期待しましょう。