それは、まさにまさか!でした。香港から来日したばかりの8歳馬ウルトラファンタジー。 5月のシャティンヴァーズ14着のシンガリ負け以来、4ヵ月半ぶりの実戦を難なく克服。あっさりと押し切って優勝。スタンドのファンは唖然。私も唖然!こうして第44回のスプリンターズSは意外な結末をむかえることになったのです。
そもそも今年のスプリンターズSは「抑えていっても味がないから今回は思い切って行かせたい。うん、何が何でもハナにこだわりたい」というヘッドライナーの西園調教師の逃げ宣言にありました。
とすると、ローレルゲレイロとのハナ争いに、ウルトラファンタジーも加わりこれは記録的なペースになるかも知れない、他のワンカラットやビービーガルダン、キンシャサノキセキなどの人気馬も早目に動きそうだから、ゴール前で後方から一瞬の脚を使える馬が不気味だ!それはサンカルロしかいない。今年の高松宮記念でも◎に推したら最後方から直線で馬込みを掻き分けるように追い込んできて惜しい4着だったし、京成杯AHも見どころ十分。叩いた上昇度も期待できるぞ、との思いで◎に推奨。セントウルS2着のグリーンバーディーが ○で、セントウルSで◎だったダッシャーゴーゴーが▲。ワンカラットとキンシャサノキセキという順で予想。差し追い込み予想だったのです。
スプリンターズS前の8レースが同じ芝1,200m。500万クラスで見るべきものはないと考えていたら、そこで驚きの事態が起きていたのです。なんと逃げたレッドハイヒールが前半の3ハロンを32秒9で飛ばしていたのです。優勝タイムが1分8秒2であったことから、馬場コンディションがいいことは歴然。
当たらない天気予報は曇り雨で、千葉県南部の降水率が70%だったけど、この馬場ならスプリンターズSは32秒2、3くらいの高速で、1分7秒0のトロットスターのレコード更新が期待できるかも知れない、刻々と迫るスタート時間に胸の鼓動も大きくなっていったのでした。
ところが、事態は思わぬ方向に動いていたのです。
スタートを切るやいなやポンとフライング気味のスタートで飛び出したのがウルトラファンタジー。これにようやくアイルラヴァゲインの外からローレルゲレイロが2番手に進出。そして3コーナーのところでウルトラに並びかけて先頭。あらら、逃げ宣言のヘッドライナーは中団あたりでもがいている状態。これは宣言?とは違うぞ。注目の前半3ハロンが33秒3だ。8レースのレッドハイヒールよりも遅いペース。
それでも、ローレルとウルトラが競っているような競馬に、後続はペースが速いと思い4角まで追い出しを待つ形。これで先頭に立ってからローレルが来ると、サッと2番手に控えたウルトラファンタジーには願ってもない展開になりました。直線先頭を奪い返し、そのまま最後の力を振り絞ってゴールイン。直線最内からダッシャーゴーゴーが猛然と末脚を伸ばしてきてハナ差まで肉薄。
ところが、ダッシャーゴーゴーが直線中程で最内に切りかえたときに、後方からインサイドを走って肉迫していた◎サンカルロの前をカット。鋭い脚で追い込んできていたときに、ダッシャーゴーゴーが進路に入ってきたために急ブレーキ。ラチに接触しそうになる不利。そこから態勢を立て直して追い込み切るには、もう無理でした。それでも、外から伸びたキンシャサノキセキと半馬身差。ダッシャーゴーゴーがサンカルロの進路を妨害したことにより降着。繰り上がって3着だったとはいえ、やや後味の悪い結末。1番 人気のグリーンバーディーも直線で前が壁になる不利。1,200mのGIを勝つということは、ある種、強運であることも大事なのですね。
それにしても、優勝したウルトラファンタジーのライ騎手。「馬場を歩いて見ていい感じだったし、天気が良かったのがなにより。キンシャサノキセキをマークしていたので、彼が隣に来たときに脚を残せた」と、考えていた通りの競馬ができたことで満面の笑み。
日本陣営は総じてハイペースと予測。セントウルSで強烈な末脚を見せたグリーンバーディーを警戒しつつの競馬で、まさか先行するウルトラファンタジーが残る競馬になるとは、予測しづらかったのでしょう。まさに8歳馬の香港ウルトラファンタジーに幻惑された形の今年のスプリンターズSとなりました。
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ウルトラファンタジー的まさかの香港幻想曲に唖然!
首・首・首差!ハンデ戦並みの激戦で敗れた宝塚・有馬記念馬ドリームジャーニーの命運は・・
オールカマーで圧倒的な1番人気に推されたドリームジャーニー。実績、顔ぶれから負けられない一戦でしたが、昨年同様に59Kを背負って惜しくも2着。昨秋の天皇賞以来の実戦だったシンゲンに後塵を浴びてしまいました。3着トウショウシロッコ、4着サンライズベガ。上位4頭の着差は首・首・首差の大接戦。オールカマーでの馬体重が422K。あまりにも小柄な馬格ゆえに59Kという斤量は、予想以上に応えているのかも知れません。
昨年の宝塚記念でサクラメガワンダー、ディープスカイ、カンパニー、スクリーンヒローといった錚々たるメンバーを破り、古馬になって初めてGI制覇を成し遂げたドリームジャーニー。昨年暮れには大一番の有馬記念でブエナビスタを破って優勝。一躍、古馬陣のトップにノシ上がった馬でした。
ところが、420K台の馬体がこの馬の成長を阻むのか、大崩れはないものの取りこぼすこともしばしば。今年4月のGⅡ大阪杯で1番人気。結果が3着。得意の右回りで芝2000m。相手がGI級とはいえないテイエムアンコールやゴールデンダリヤに敗退。4着フィールドベアーに首差まで肉薄。ファンをがっかりさせました。
ドリームジャーニーに横綱白鵬のようなどっしりとした安定感のある取り口で、圧倒的な強さを求めるのは無理なことは承知。59Kを背負って互角以上に戦い、確実に勝ち負けとなると、身体的弱点がどうしても結果として出てしまいます。すぐにでもGI勝ちができそうで苦労した父のステイゴールド。その父も小柄な馬でした。
それでもGI3勝で父を超えたドリームジャーニー。これから秋の陣は東京が舞台。一瞬の脚が最大の武器のこの馬には、直線の長い東京コースは苦手なタイプ。それゆえ昨年から今年にかけて、東京で走ったのが昨秋の天皇賞だけ。女傑ウオッカと逆ケースです。ドリームジャーニーにとって今年も最大の見せ場は、年末のグランプリ有馬記念かも知れません。
ところで、藤田騎手の見事な手綱捌きでオールカマーを優勝したシンゲン。昨秋の天皇賞以来、実に11ヶ月ぶりのレース。昨年のオールカマーはエプソムC以来で、マツリダゴッホ、ドリームジャーニーに続く3着。どうしても大関クラスのイメージを払拭できずにいましたが、今回の勝利で天皇賞に大手を振って挑戦できそうです。休養が重なり7歳馬でまだ17戦のキャリア。これからも成長力が期待できそうな7歳にしては珍しい馬です。
また、これだけ長い休養がありながら、ビシッと優勝を決めたシンゲンの戸田きゅう舎スタッフの方々の渾身の仕上げも見事でした。拍手!