
世界の職人はあくまでもクール。それが当然だったかのように、軽く敬礼をすると、検量室に向かったのでした。
安田記念を制したモーリスは、夏を全休し、前哨戦には目もくれず、この
マイルCS一本に絞って来たのです。
過去10年で10月出走馬が18頭も連対。残りの2頭が11月1日に出走。つまり、休養明け、ぶっつけ本番の馬はことごとく敗退しているのです。
「久しぶりだけど、調整がうまくいって、GIという大舞台に向けて仕上がっていると、堀
トレーナーから聞いている」と、世界の職人とも言われるムーア
騎手。
ぶっつけ本番、明らかに不利な16番の外枠。大丈夫だろうか、勝てばアッサリだろうけど、人気だし不安の方が大きい・・。私はそう考えました。
熟考した結果、◎に推したのがアルビアーノ。直前の
スワンSで
フィエロ以下を完封。初めての京都、初めての長距離輸送で、
スワンS完封の内容は3歳馬でもあり、私には衝撃的でした。栗東に在厩して仕上げられてきた今回は、
スワンS以上の期待が膨らんだことは当然です。

レースは主導権を取ったのが、好枠を引いたレッツゴードンキ。マイル戦はあの独走した
桜花賞以来。
戸崎騎手に乗り替わりましたが、外からシゴいてクラリティスカイが来ましたが動じず主導権を主張。トーセン
スターダムが3番手に進出。抜群の手応えでアルビアーノが続きます。
ロゴタイプがその後で、真後ろには
フィエロ。その直後にサトノアラジン、外に並んだモーリス。
カレンブラックヒルが控えて中団。後ろには出負けしたイスラボニータが取りつきました。
リアルインパクトも今回は後方待機。昨年の覇者
ダノンシャーク、最後方に
ヴァンセンヌ。

前半の3ハロンが34秒6。やや水分を含んだ馬場でこの時計は緩みないペース。ところが、4ハロン目が12秒5とガクンと落ち、1000m通過が59秒0。これで流れはスロー。
快調に逃げるレッツゴードンキ。4番手に抜群の手応えで進出したアルビアーノ。人気の
フィエロ、モーリスがまだ中団。サトノアラジンも同じ位置。イスラボニータは後方イン。

直線入り口では内を開けて走るレッツゴードンキとクラリティスカイの間に、アルビアーノは入り込むものと考えていたら、なんと
柴山騎手が内のラチ沿いを狙って進路を取ります。
「なに!各馬内側を通らないようにしているのに馬場の傷んだ最内。何故だ?真っ直ぐ走ってくれば、
フィエロの外からもう少し馬場のいいところを走れただろう!」私はこの解せない進路取りに首を捻りました。

直線中から
フィエロが抜け出して来ましたが、その外から凄い勢いでモーリスが破格の末脚。一気に飛び出してきました。大外からサトノアラジンも強襲。一方で、仕方なく内に進路を取ったイスラボニータが猛然と肉薄して来ました。最内にアルビアーノ。
アッサリと突き抜けたモーリス。
安田記念とはまた一味違った圧勝劇。強いモーリスがそこにはいました。
フィエロが2着に頑張り、3着がイスラボニータ、4着が外のサトノアラジンで、アルビアーノは5着。
フィエロからアルビアーノまで0秒1差。進路の取り方でどうにでも変わった2着争いでした。それゆえアルビアーノの進路取りは合点がいきません。
当然のように引き上げて来る勝者ムーア
騎手。GI特有の派手な
パフォーマンスはなし。ちょっとだけ軽く左手でスタンドのファンに対して敬礼。実にクールです。
マイルGIを連勝したモーリス。まだ4歳ということからも来年も一段の活躍が期待されます。
