fbpx

Archive for 競馬

阪神大賞典から古馬の長距離戦線に見る現実と未来!

 私は長距離のマラソンレースが大好きです。1マイルを2回も走る春の天皇賞。レース中のジョッキーと馬の会話にも似た、そのお互いの呼吸が短距離戦では決して見ることができない、いわば芸術と競走のコラボのように感じるからです。また、長距離戦には必ずといっていいくらい出て来る血統的な背景。これも長距離戦のドラマを盛り上げるのにかかせません。

 3月17日の阪神では、天皇賞の前哨戦ともいえる「阪神大賞典」。昨年はぶっち切りの人気に推されたオルフェーヴルが、アクシデント的な逸走により不覚の2着。場内は大パニックでした。

あれから1年、今年は2冠馬、そして暮れのグランプリ有馬記念を制したゴールドシップが参戦。これで今年の阪神大賞典は盛り上がりを見せるだろうと、一瞬考えたのですが顔ぶれを見て驚きました。

菊花賞4着で前走の京都記念2着のベールドインパクト、ステイヤーズS3着、万葉S優勝のデスペラード。長距離戦に実績があるフォゲッタブル。10歳でステイヤーズSを制した最年長のマラソンホースであるトウカイトリック。

まあ、これらはOKとしても、オープンでは馬券に絡んだことがなく、大敗続きでお手上げ状態のピエナファンタスト。ダートに新天地を求めたもののまったくダメで、ただ長距離で使えるレースがあれば出て来る8歳のお荷物的モンテクリスエス。前走のダイヤモンドSでは16頭中16番人気で2年以上も馬券の対象になっていないエンドマークを背負っている観のあるコスモヘレノス。おそらく条件レースに出ても勝てないような馬が、別定のGⅡに挑戦してくるのですから、2冠馬でグランプリホースのゴールドシップにあまりにも失礼。アタマ数さえ揃えばいいといった風潮のある最近の競馬の傾向が垣間見ることができます。

私たち競馬ファンは、たとえ頭数が少なくても、例えばゴールドシップVSオルフェーヴルVSルーラーシップの3頭立てでも、ファンは興奮して勝者には惜しみない拍手を送るはずです。それが本来の競馬であり、ファンが待ち望んでいる競馬だという思いがしています。

そんなお荷物的なメンバーも加わった今年の阪神大賞典。もちろん、単勝1.1倍のゴールドシップ一色でした。

1_1 2_1 3_1

ダッシュが鈍くて最後方に置かれたゴールドシップ。3番人気のデスペラードと共に後方で待機策。そのすぐ前には2番人気のベールドインパクトと、4番人気のトウカイトリックがいます。主導権を取って快調に飛ばすマカニビスティー。まさに捨て身の逃げ作戦。2番手で控えるフォゲッタブル。私の予想ではこのフォゲッタブルがゴールドップの2着争いの筆頭と予測。

前半の1000mが61秒2で、2000m通過が2分3秒3という珍しいくらいに緩みない流れで縦に長い展開。

「内回りで縦に長い展開になると前が残りやすい」と考えたゴールドシップの内田博騎手は、2週目の3コーナーからスパート。4角で先頭集団に追いついて、内から抜け出すフォゲッタブル、そこを中からベールドインパクトが接近。その外にゴールドシップ。さすがにゴールドシップの力量が一枚上手で、あっという間に先頭。内で頑張るフォゲッタブル。福永騎手が懸命に追うベールドインパクトがアッサリ脱落。そこへ満を持して外からデスペラードが強襲。

4_1 5_1 6_1

優勝は2馬身差の横綱相撲でゴールドシップ。激しい2着争いは追い込んだデスペラード。惜しいかなフォゲッタブルが3着。そこから5馬身離れてベールドインパクト。しごく順当な結果になった阪神大賞典。

昨年の同レースの売り上げを約20パーセントもダウン。長距離重賞を減らせという声も聞こえる中で、今回の阪神大賞典のように何でもかんでも出走できればいいという関係者の考え方が、改めて問われるところです。

7_1 8_1

ラストラン!未来を背負って全力投球のストレート勝負!

競走馬にとって必ずやって来るのがラストラン。その一戦でその馬の評価が決まるとあれば、関係者にとっては、まさに全力投球、渾身の仕上げで臨むことになるはずです。

 3月10日、中山では「中山牝馬S」が行われました。このレースを最後に、現役引退を決めているスマートシルエット。それは関係者の期待を一身に背負って、その最後の勇姿を披露すべく、全力投球のストレート勝負!

 彼女にとってラストランに選んだこの中山の舞台こそが、最高のパフォーマンスを演じることができる最高の舞台だったはずです。それは、もっとも得意としている芝1800mという距離。加えて、中山が初めてといってもコーナー4つの内回り。先行力を生かすこの馬にとっては大きな後押し要因。

 しかも、今回は強力な同型馬を欠いて、単騎一人旅も期待できる展開。前走の東京新聞杯は、強力な牡馬陣を相手に、直線持ったままで2番手から先頭に立ちかける見せ場十分の内容。今回は牝馬相手にハンデが54K。休養明けをひと叩きして、調教でも抜群の動きと上々の気配。私は負ける要素が見当たらず、これは押し切れると考えました。

 スマートシルエットにとっては、府中牝馬S2着など重賞好走はあるものの重賞はまだ未勝利。それゆえ今回の中山牝馬Sは、残された最後にして最大のチャンス。優勝すれば重賞優勝馬として繁殖牝馬の価値は、何倍も何十倍も違うはず。それゆえ馬主、今後の生産者にとっても、優勝という一文字に託された期待感は、おそらく過去の比ではない、という見方をしていました。

 前日の午前中のオッズは5番人気の10倍台。ところが当日は2番人気の6倍。ビックリするくらい株価が急上昇。これは尋常ではない“大量買い”が入っていることを実感。

1 2 3

 さて、注目のスタート。主導権を取ったのは好スタートを決めた1番枠のダイワズーム。2番手にスンナリとスマートシルエット。この形でも問題はないが、理想は主導権を取った一人旅と考えていた私は、やや不満が残る2番手という展開。この形でスローの直線ヨーイドンは、府中牝馬S、東京新聞杯と同じで、何かに差し込まれるかも知れないと案じたからでした。

 好位置にサンシャインが付けて、1番人気のオールザットジャズが中団。そこには4番人気のオメガハートランド。この2頭を前に見る形で内にマイネイザベル。昨年の札幌記念を制した5番人気フミノイマージンが最後方で展開。

 前半の3ハロンが37秒3、半マイル通過が49秒6。過去10年でもっとも遅いペース。

 逃げるダイワズームのペースで進み、2番手のスマートシルエット。好位置にはサンシャインという形は変わらず。4角で外からオールザットジャズが仕掛けて前に接近。そのあとには、内にオメガハートランド、外にマイネイザベル、そして大外をまわって一気に仕掛けたフミノイマージンが進出。

4 5 6

 ここからゴーサインを出したスマートシルエットが逃げるダイワズームに並びかける勢いで先頭争い。頑張るダイワズーム。外からオールザットジャズ。後ろにはオメガハートランドとマイネイサベル。直後にはフミノイマージン。

 坂を上がってスマートシルエットが抜け出たところへ、外から素晴らしい伸び脚でマイネイサベルが強襲。一気に捉えてゴールイン。2着にはスマートシルエット。そしてオールザットジャズ。

 わずかに及ばなかったスマートシルエット。有終の美は残念でしたが、その先行力としぶとさは、子供たちに伝わるような気がします。

7 8 9

 「本当に残念!勝った馬も取り口も、あの府中牝馬Sの時とまったく同じだものね・・」と、悔しそうに語る大久保龍きゅう舎の関係者であるK氏。肩を落として口をへの字に結んでいました。