札幌記念で圧倒的な人気に支持された無敵の女王ブエナビスタ。今年の秋には競馬の最高峰「凱旋門賞」へ遠征と、競馬ファンの期待度を一心に集めていました。それでは渡仏の前にということで、ステップ・レースとしてチョイスしたレースが、今回の札幌記念だったのです。
フタを開けてみると、予想されたとはいえ単勝が1・5倍の断然人気。古馬初挑戦で札幌の洋芝コースも初めて。桜花賞やダービーで見せた驚異の末脚が冴え渡るのか、話題は事欠きませんでした。もっとも、よしんば負けることがあっても、よほどの負け方をしない限り、凱旋門賞には遠征をするだろう、と見ていたのですが、事態は意外な方向に動いていたのです。
天気が傘マークで雨が心配された札幌記念。どんよりとした雲は天空にあったものの雨が落ちてくる気配はなし。雨でパワーを要求される馬場状態になると不安になるブエナビスタにとって良馬場はなによりの歓迎だったはずです。
主導権を主張したのは中舘騎手を配してきたドリームサンデー。2番手にマンハッタンスカイも予定通り。ヤマニンキングリーとブラックアルタイルがその直後。前半5ハロンが60秒2。函館記念の60秒8よりいくらか速い流れでしたが、まずは平均ペース。この流れは函館記念とほとんど同じ。後方位置でいつものように走るブエナビスタ。3角過ぎにグランプリ馬マツリダゴッホが外をまくって行ったときに、ブエナビスタも付いて行こうと進出態勢。ところが、直線でマツリダゴッホはアラアラ状態。直線で好位置から抜け出したのがヤマニンキングリー。ゴール寸前で大外から強襲をかけたブエナビスタを振り切りヤマニンキングリーが優勝。首差でブエナビスタ。良く伸びていたのですが、オークスで見せたような凄み、迫力にやや欠けたような気がしました。
ヤマニンキングリーは3月の中京記念以来の実戦。にもかかわらずマイナス20K。きっちり絞り込んだとの見方もできますが、決してベストの状態ではなかったと思います。実際、勝ちタイムの2分0秒7は昨年のレコード決着(1分58秒6)に比べると、はるかに落ちますが、ほとんどが2分0秒台の優勝タイム。悲観材料ではありません。
ところが、内容を吟味してみると、ブエナビスタが海外遠征を諦めた理由が見えてくるのです。本調子にはなく9着と凡走したマツリダゴッホ以外は、どうみても二線級のオープン馬。その馬たちと52Kのブエナビスタが、まるでハンデ戦並みの大接戦。出遅れて5着に押し上げた13番人気のトーセンキャプテンと、ラスト3ハロンはまったく同じの35秒1。わずか0秒2差だったのです。レースの上がりタイムが36秒2と、先行馬がバタバタ状態で、差しきれなかった焦燥感も関係者にはあったかも知れません。
パワフルな能力も要求される凱旋門賞。そのテストケースとして札幌記念があったとしたら、凱旋門辞退は納得がいきます。残念ですが国内秋戦線に期待しましょう。
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単勝1・5倍!無敵のブエナビスタ陣営が凱旋門賞の遠征を諦めた真意は・・?!
また今年もレベルダウンしたクイーンSの重賞意義
今年のクイーンSの優勝馬はピエナビーナスでした。中団のインサイドで折り合い、直線で前が開くと、そこを一気に伸びてきました。優勝騎手の古川Jも言うように、3番枠で内の中団でじっと我慢。前が開いたら一気に仕掛けて出るという、彼ならでは作戦がズバリ的中。見事な勝利でした。
それにしても、11番人気で優勝したピエナビーナス。凡走につぐ凡走。連対したのが昨年の札幌、1,000万の羊が丘特別(芝1,200m)以来、実に1年ぶりの出来事。しかも、それが初めての重賞勝ち。15着だった阪神牝馬Sに続く2度目の重賞挑戦。準オープンからの格上挑戦でもあったわけで、3ヶ月の休養明けだったことを考えると、この優勝はまさしく事件。常識的には前走の準OPパールSが6着だったことからも、いきなり重賞というより、次走を見据えて、馬体をゆったりと作ってくることが多いように思いますが、南井調教師は前走比マイナス2K。きちっと仕上げて出してきました。本当に見事です。
とはいえ、4歳馬が圧倒的に優勢だったこのクイーンS。今年は4着に秋華賞2着のムードインディゴ。桜花賞優勝、オークス3着のレジネッタが10着。2番人気に推されたスペルバインドが8着。GⅡ1着、GⅢ2着のレッドアゲートが11着。4歳馬は壊滅状態。1着ピエナビーナス、2着ザレマ、3着アメジストリング、5着マイネカンナと上位を、ほぼ独占した形になった5歳牝馬群団。あのダイワスカーレットやウオッカと同じ世代。4歳牝馬は桜花賞2着がエフティマイア、3着がソーマジック。オークスがトールポピー(阪神JF優勝)にエフティマイア。3着が前記レジネッタ。桜花賞5着だったリトルアマポーラがエリザベス女王杯でカワカミプリンセスを破った起死回生の快走が目立つ程度で、4歳馬は5歳勢に完全に押され気味。
今回のクイーンSは4歳馬の成長度をはかる上で、重要なひとつのカギになる一戦でした。それがこの惨敗劇で4歳牝馬は頭打ち、壁に当たった印象があります。そんな状況下であったゆえのピエナビーナスの優勝があったと思います。
優勝タイムが1分48秒2で、レースの上がりタイムが35秒9。2週前の1,000万大倉山特別で優勝したミクロコスモスの1分47秒4よりも遥かに落ちるタイム。
4年前優勝したレクレドール、翌年のデアリングハート、次の年のアサヒライジング(やや重)の4歳馬は、すべて1分46秒7で1着。昨年のヤマニンメルベイユがスローペースに持ち込み1分48秒1で優勝。当時は強力な4歳馬が不在でしたが、そのときよりも落ちるタイム。間違いなくクイーンSはレベルダウンしています。重賞の異議が出てきてもおかしくはありません。