中山芝1800m内回り、4つのコーナーを回る条件で、まさに絶好の狙いがシルポートでした。しかも、今回の「中山記念」は、中距離戦とあってか、強力な同型馬が見当たらず、もうシルポートの単騎逃げわかりきっていたこと。
シルポートに絡んで行くということは、自分の首をしめるようなもので、他の馬は末脚温存策に徹して来ると私は読んだのです。それは間違いがありませんでした。マイル戦で4勝、1800mで3勝の中距離巧者。芝1400mの阪神カップのように前半から同型馬が激しく競り込んでくる競馬は向かないのです。それでも阪神カップで14着だったとはいえ優勝したサンカルロと0秒8差。マイルCSでサダムパテック、グランプリボス相手に0秒3差とGI級の粘り腰。
迎えて8歳とはいえ、昨年の中山記念で2着した当時よりも京都金杯をパスして、ここ一本に絞って仕上げてきていることから、関係者の中山記念に賭ける意気込みが十分に伝わってきました。私の頭にはシルポートの逃げ切るシーンしか思い浮かばず、自信の◎ということになったのです。
今回はこれまでの小牧太、川田騎手から昨年の中山記念で騎乗した松岡騎手にバトン。彼にはピッタリのタイプと好感していたのです。
スタートは好発馬とはいえなかったもののシルポートが行くものと、他馬の騎手は考えていたので仕掛けると楽々主導権。ところが、松岡・シルポートは引きつけた逃げではなく、一気に加速して2番手のダイワファルコン以下をグングン引き離しにかかりました。まさに大逃げの別世界的な競馬。
一般的にこんな形になると、2番手ダイワファルコン、3番手追走のダノンバラードの騎手は戸惑うものですが、これは計算通りとばかり、あくまでも折り合いに専念。トーセンレーヴは中団の内を今にも飛び出していきそうな勢いで追走。同じような位置には末脚を温存策のリアルインパクトと、目下4連勝と未知の魅力を秘めたアンコイルド。そのすぐ後ろには1番人気のタッチミーノット。
前半の3ハロンが36秒2だったものの驚いたことに4ハロン目から俄然ペースアップし、11秒3-11秒1-11秒4と、この中盤の3ハロンは33秒8という暴走気味のペース。そのため2番手以下が大きく離される形。
残りラスト3ハロン、大きな差をもって3コーナーを回り、4コーナーにさしかかったシルポートを見て、2番手の北村宏・ダイワファルコンが仕掛け始めます。それを察して外からダノンバラードの外に忍び寄ってきたのがナカヤマナイト。タッチミーノットはまだ離された中団の外。
大きなリードを持って直線に入ったシルポート。必死で前を追うダイワファルコン。そしてナカヤマナイト。ダノンバラードの伸び脚は今ひとつ。追い通しでトーセンレーヴは内から前を捌くようにジリジリ進出。タッチミーノットはシルポートからあまりにも水があきすぎ。
ゴール前の坂を上がってさすがのシルポートも脚色が鈍り加減。そこをすかさずナカヤマナイトが力でねじ伏せるかのように差し込んで優勝。最内で懸命に頑張るシルポートに並びかけたダイワファルコンが馬体を併せてゴール。
外からゴール寸前でタッチミーノットが際立つ脚で迫りましたが、前の馬が残って後の祭り。
1分47秒3は昨年重馬場で優勝したフェデラリストと同じ時計。ただ、レースのラスト3ハロンが37秒0だった昨年よりも劣る37秒3。一昨年のヴィクトワールピサが1分46秒0、ラスト34秒5だったことから考えて、馬場コンディションの違いか、あるいはレベル的なものか判断に迷うところですが、いずれにしても、クビ・ハナ差の大接戦。それゆえ全力投球の8番人気シルポートは逃げ切って欲しかったです。