12番人気のネコパンチが日経賞を制しました。それも初重賞制覇でGⅡ。驚いたのは3馬身半差の独走劇!
こんなシナリオを書いても、競馬ファンからは相手にされない可能性があります。それもそのはずで、重賞4勝で、昨年の有馬記念は宝塚記念以来の実戦ながら、オルフェーヴル、エイシンフラッシュ、トゥザグローリーといったGI馬を相手に0秒2差の接戦。まさに古馬を代表するトップクラスのルーラーシップを相手にするわけですから、しごく当然な話。同様に昨年のダービー2着、菊花賞2着、ジャパンCでは5着の4歳の雄ウインバリアシオンも参戦しているのですから、誰の目にも8着までの入着賞金狙い、というふうに見られても不思議がありませんでした。
実際、成績がソコソコ良ければ、勢いでということがありますが、過去4戦がボロボロの二ケタ大敗続き。先行してバタバタ状態。不良馬場のステーヤーズSでは14着でマイネルキッツから3秒7差。オープン特別の万葉Sが5秒1差も離れたシンガリで入線。むろんタイム・オーバー。直前のダイヤモンドSでは優勝したケイアイドウソジンから2秒1も離された15着。まさにどうしょうもないボロボロの大敗続きで、オープンでは無理というお荷物的な存在だったはずです。一般的なきゅう舎であれば、障害とか退きゅうということになるのですが、今年もまだ未勝利だった星野きゅう舎の実情もあって、平地のオープンに在籍。
そんな体たらくのどうしょうもない馬でも、奇跡という運命が訪れるものなのですね。
私はこの日経賞はダイヤモンドSをブービー人気で逃げ切ったケイアイドウソジンが、今回も主導権を取って粘るだろうと見ていました。ルーラーシップとウインバリアシオンはお互いを牽制して後方に待機。ネコパンチが2番手で折り合いに専念しても、いつものように直線は失速するだろうから、逃げたケイアイドウソジンを直線ルーラーシップと、ウインバリアシオンが強襲してくるという読みを立てたのです。
ところが、ケイアイドウソジンが吉田豊騎手から三浦騎手にチェンジ。このことが結果的に奇跡のドラマを生むことになったのです。
それは、スタートで騎乗者の違いがハッキリ。好スタートから直ぐに先頭に立ったケイアイドウソジン。そこを内から江田騎手のネコパンチが激しくシゴキながら競りかけてきました。仕方なく控える三浦騎手。これが吉田豊騎手であれば主導権を強行に主張する性格。江田騎手もそのことは理解しているので、無理に競りかけたりはしなかったはず。
トントンと自己のペースで逃げるネコパンチ。これに巻き込まれまいと、出来るだけペースを落として先行しようとするケイアイドウソジン。後続の有力馬は成績からネコパンチなどは眼中になく、2番手のケイアイドウソジンを射程権に入れていければ・・という思惑が、ネコパンチの単騎大逃げを楽々許すことになってしまうのでした。
2週目の3コーナーでは大きく開いたネコパンチのリードに、慌てたルーラーシップの福永騎手が早めのスパート。直線入り口で一気に2番手に進出したものの重馬場ということもあり思うように差が詰まらず、逆にゴール前ではルーラーシップの脚が鈍り、ウインバリアシオンがそこを捉えて2着。
3馬身半差で優勝した江田照騎手のしてやったりという笑顔が実に印象的でした。江田騎手は1998年の日経賞で最低の12番人気で、どうしょうもなかった9歳馬テンジンショウグンを奇跡の優勝、単勝3万5570円を導き出した伝説の騎手。胸中はあの当時の日経賞に馳せているでしょうか。
これは奇跡か幻か?タイム・オーバー馬が衝撃の日経賞3馬身半差!!
エー!GIのスプリント戦なのに1000万条件と同じだって?!
絶対的スピードの持久力比べともいえるGIの短距離6ハロン戦。今年も人間のトラック競技同様に、競走馬においてもスプリント界はガッシリとした、いわゆる馬格のある馬が圧倒的優勢を占めました。
春のGIスプリント決定戦、高松宮記念。新装なった中京競馬場で行われました。さすがにトップクラスの精鋭ともなると大型のジャンボ馬が多く、ニュー中京競馬場でも新たな歴史が刻まれたのです。
今年の高松宮記念を見事に制したのが人気のカレンチャン。牝馬ながら480K台の恵まれた馬体。昨秋のGIスプリンターズSでは牡馬相手に堂々たる圧勝劇。スプリント界の頂点に立ったのでした。
今年の高松宮記念は主導権をなんとしても取りたいという馬がエーシンダックマン1頭だけ。ゆえにこのダックマンのペースで進められることは確実と推察。これを読んだカレンチャンの池添騎手が楽に2番手。その直後に行きたがる感じでマジンプロスパー。抜群のスタートを1番枠から決めた1番人気ロードカナロアがすぐ後ろインの4番手。その外にダッシャーゴーゴーが抜群の手応え。
注目の3ハロンが34秒5、スローとも言っていいくらいのペース。ちなみに同じ日の9レース、1000万の三河特別で逃げて2着だったリュンヌが34秒5。まったく同じペースなのです。この前半3ハロンを過ぎた時点で、後方待機馬には厳しい展開なのは明白。このことは私も事前にシュミレーションしたものと同様でしたがそれよりも遅い流れでした。
スタートでややもたついたエーシンダックマンは、先頭に立つまでにかなり脚を使わされたせいか、4角をまわってもう失速気味。2番手を抜群の手応えで進んでいたカレンチャンが直線の坂を先頭。マジンプロスパー、その外にダッシャーゴーゴー。そして最内からジリジリとロードカナロア。一瞬、この4頭の上位争いか、という風に見られたのですが、外から凄い脚で追い込んできたのがサンカルロ。末脚の威力は完全に他を圧していました。鋭くグイグイと迫ったところがゴール。
軍配はカレンチャン。クビ差なんとかサンカルロの追撃を凌いだのです。もう少しペースが流れていたら間違いなくサンカルロの末脚が届いていたはず。スプリント戦でスローペース。サンカルロにはなんというツキのなさなのか。
「理想的に運べたし、最後も届くと見ていたのですが・・。残念です!」と、ガッカリした表情。
惜しくも3着に敗れたロードカナロア。4角で外に出せない不利がありながら流れと枠を読んだ福永騎手のベスト騎乗だと思います。成長段階の4歳馬。秋のスプリンターズSでのGI制覇を、福永騎手は手応えとして感じたかも知れません。
ダッシャーゴーゴーもこの中間、だいぶ立直りを見せていました。4番手追走という形で、持ち味をフルに生かして0秒1差4着。これも横山典騎手のベスト騎乗。
私の◎がマジンプロスパー。ハイペースで流れた1400mの阪急杯で、正攻法から完勝。充実ぶりと、単騎逃げのエーシンダックマンの2番手を楽について行けそうなことから展開上の魅力もあって本命にしました。1度でも芝の左回りを経験していれば、もう少し踏ん張れたような気もします。