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勢い止まらずノリちゃんコールに酔う観衆!!
私は、これほど美しい一瞬を見たことがありません。それはスタンドの観衆に向かって騎乗の人が立ち上がり、さっと右手をやや右斜め上、顔も腕のやや方向、腕と顔はVの字の谷間の底部分。このパフォーマンスは、まさに勝者だけに与えられた最高の美を表現しているようにも思えたのです。
注目の3歳マイルのチャンピオンを決めるGI「NHKマイルC」は、五月晴れの東京競馬場で、精鋭18頭が揃って行われました。
上位5頭が接近した人気。そのなかに勝者に輝いた1頭がいました。6.4倍の3番人気に支持されたクラリティスカイです。東京のマイル戦は昨秋のいちょうSでレコード勝ち。それ以来の東京マイル戦。今年に入り弥生賞→皐月賞とクラシック路線。皐月賞にしても果敢に先行して5着に善戦。良績あるマイル戦で当然ながら多くのファンも有力視していたわけです。
顔ぶれからレンイングランドか3連勝中の牝馬アルビアーノが主導権という予測通り、先手を取ったのがレンイングランド。予期したように2番手に控えたアルビアーノ。その直後に横山典騎手のクラリティスカイ。ギュッと手綱を絞って抜群の手応えです。
そして中団の内に支持を集めたグランシルク。その真後ろにミュゼスルタン。1番枠のアヴニールマルシェはヤングマンパワーと同じくダッシュがつかず後方グループに置かれます。
前半3ハロンが35秒3、昨年、先手を取って逃げ切ったミッキーアイル34秒6。それに比較してもかなり緩いペース。そして半マイル47秒2、1000m通過が59秒3。絶好の馬場コンディションでこのスロー。各馬は離れず団子のような展開で楽について行きます。
そんな中で、3、4番手をキープしたクラリティスカイ。4コーナーでは前を行くアルビアーノの直後にピタリとつきます。それは引っ張り切れないくらいの抜群の手応え。各馬横並びでヨーイドンではマズいと考えたのか、横山騎手は直線でアッサリ先頭に立ったアルビアーノに照準を合わせると、目前のアルビアーノを目がけて追い出しにかかります。馬体を併せると懸命に頑張るアルビアーノを捉えて、余裕綽々にゴールイン。外からミュゼスルタンが末脚を伸ばして来ましたが、外をまわる不利もあってアルビアーノを捉えることができず3着。
同じように中団からラチ沿いの最内を通ってグランシルクが前を追いましたが、直線で窮屈な場面もあって伸びきれず5着。スタートで置かれたアヴニールマルシェが内を突いて4着に食い込みました。
このスローペースだったわりには1番人気から5番人気までが上位5着に入り、GIとしても至極順当な結果となりました。
天皇賞に続きGI連覇の横山典弘騎手。あまりの嬉しさに上機嫌で検量ルーム前でも拳を高々と突き上げて栄光の帰還。ジャンプし万歳ポーズと飛び降ります。
「いやあ、具合がすごく良かったよ。追い切りの時点では正直どうかな・・、という思いもあったけど、今日はしびれるくらいの手応えで、凄い出来だったよ」とコメント。
よほど嬉しかったようで、何度も何度も拳を高く突き上げていました。本当にGIでは絵になる名ジョッキーです。
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大熱演!アカデミー賞ものの横山典・ゴールドシップに賞賛の嵐!!
それは衝撃的でした。“そんな馬鹿な!”“それは無謀だ!”という驚きの騒めきが聞こえるようでした。
ゴールドシップです。ファンの支持の高い馬で2番人気に推されていましたが、それでも少し不安もあってか、4.6倍というオッズ。
天皇賞・春は好天に恵まれた淀の京都競馬場に、古馬の精鋭17頭が集結しました。1番人気はもっともファンの多いキズナ。
ところがゴールドシップは、過去の天皇賞が直前の阪神大賞典を圧倒して臨んだのにもかかわらず、一昨年は5着。そして昨年が7着。ファンをガッカリさせました。断然強い阪神に対して、京都では菊花賞を制したものの散々の成績。
私はこう考えました。おそらく直線平坦の京都でラスト33秒台、34秒前半の決着になると、瞬発力の差で切れ負けしてしまうのだろう。道悪、スタミナは文句なしだが、開幕2周目の絶好の京都では、やはり評価が落ちるかも知れない。
と考えて、有馬記念でジャスタウェイ級の33秒7の破壊力を見せたラストインパクトに◎を打ったのです。おそらくキズナは大阪杯でラキシスに簡単に差し込まれたようにダービー時の姿にはない。追い比べならキズナには負けないだろう。最高のコンビ川田騎手で絶好の狙いだ、私はそう考えました。
ところが、ゴールドシップは私が考えた以上、常識破りのパフォーマンスを見せてくれたのです。それはゴールドシップの名指揮官、横山典騎手の存在を忘れていました。
このジョッキーは、これまでも度肝を抜く騎乗で、数々の栄光を手にしてきた職人ジョッキーなのです。
終わってみれば、今回の天皇賞もそうでした。ゲート入りする際、ゴールドシップが駄々をこねて、ゲートに入ろうとしません。後ろ向きに入れようとしてもダメ。飛び跳ねて後ろ脚を蹴り上げます。ところが、横山騎手は慌てず逆らわず、ステッキを入れるわけでもなく、尻尾を持って強引に枠入りさせるわけでもなく、坦々と係員の誘導作業を待っています。
頭からすっぽり布をかぶせて、ようやくゲート入りに従うと、抜群のスタートを決めます。
「1番枠だったからハナに行ってもいいと考えていたけど、さすがに行けなかったなあ・・」と、横山典騎手。
あっという間に、キズナとともに置いて行かれます。何が何でも主導権を取るとばかりに田辺騎手のクリールカイザーが先頭。内からカレンミロティックで、外にはスズカデヴィアス。先行したいタマモベストプレイも続きます。同じ位置にはラブリーデイ。そして中団前の外にはサウンズオブアース。フェイムゲームもその後ろに付きます。後方グループの先頭がアドマイヤデウス。その直後にラストインパクト。デニムアンドルビーがいてキズナとゴールドシップが最後方。
前半3ハロンが36秒1。比較的流れが速かったせいか、先頭から最後方まで大きく縦長の展開。そして1000m通過が61秒4。サウンズオブアースが好位に上がって来ました。フェイムゲームもその直後。最後方にポツンとゴールドシップ。
そして、2周目の向う正面のときでした。誰もが目を疑うことが起きたのです。後方にいたゴールドシップが外に出し、横山典騎手がしごいてステッキを入れて、必死に前を捉えにスパート。ぐんぐん順位を上げて行きます。3コーナーの坂の前のことでした。
“こんなところでスパートをかけたら最後まで続くわけがない”大方のファンはそう考えたに違いありません。実際に騎乗している騎手もこれには付いて行きません。
3コーナーで3番手のカレンミロティックの外に並びここで一息。アドマイヤデウスが内から7番手に進出。中団の外にサウンズオブアース、真後ろにフェイムゲーム。キズナがその後ろで外。後ろから2番手にラストインパクト。
直線に入り先頭に躍り出たカレンミロティック。その外からゴールドシップが後方を確認したのかラストスパート。サウンズオブアースが好位に上がって来ました。その外からキズナが顔を出してきました。その内にはフェイムゲーム。後方3番手のラストインパクトは、狙ったように内ラチ沿いを突っ込んで前を追います。
カレンミロティックを捉えたゴールドシップが先頭に立ちかけます。その内からラストインパクトが猛然と肉薄。そのときでした。直線外からキズナを置き去りにしたフェイムゲームが強烈な伸び脚で強襲。
それでもゴールドシップが何とか押し切って念願の天皇賞制覇。2着にフェイムゲーム。カレンミロティックが3着に頑張り、最速の34秒4の末脚でラストインパクトが僅かの差で4着。
天を仰ぎ両手を合わせて高く掲げる横山典騎手。それは思いを完結させた指揮官のパフォーマンスでした。
ゴールドシップと横山典騎手。主演ゴールドシップ。監督、横山典弘。まさにそれはアカデミー賞級のドラマのようでした。
1番人気キズナは力なく7着と敗退。あのダービーのような強烈なパフォーマンスは見ることが出来ませんでした。
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