
それは信じられないくらいの圧巻のドラマでした。第82回「
日本ダービー」は雨降りの予報を裏切り、五月晴れのまさにご機嫌の
ダービー日和。それも記録的な暑さで、なんと30度C°を超す真夏のような
ダービー・ディーでした。
この暑さにもかかわらず、圧倒的な人気に支持されたのがドゥラメンテ。
皐月賞で直線一気のゴボウ抜きを決めた切れ者。単勝支持率は前日から気温とともにジリジリと跳ね上がり、なんと直前は2倍を切って1.9倍というダントツのオッズ。
皐月賞で2番人気だったリアルスティールは、
ダービーでも2番人気に収まり3.8倍。
皐月賞1番人気だったサトノクラウンが3番人気で6.3倍。ほぼこの3頭で決着すると思われた方が多かったようで、4番人気のレーヴ
ミストラルが大きく離れた16.2倍。
注目のドゥラメンテはパドックに出て来たときから落ち着きがあり、堂々とした馬体をファンに見せつけていました。
共同通信杯で激しい気性を見せていた同馬は、短期間の間に急激に大人になったような思いにとられました。
オークスのクルミナルのようにゲート入りに手こずるような馬もおらず、各馬スムーズにゲートに入り。スタートのガシャンという鈍い音と同時に各馬ほぼ一斉にスタート。
ドゥラメンテも五分のスタートを決めて、まずは折り合いに専念。外からキタサンブラック、スピリッツミノルがスーッと先行すると考えていたら、中央から出て来たミュゼ
エイリアンが主導権を主張。
横山典騎手が出ムチを激しく入れて飛び出して行きます。これを見たキタサンブラックの
北村宏騎手は、2番手に控えて後続の出方を待つ作戦。その後ろに内からコメート、タガノ
エスプレッソ、スピリッツミノルが並ぶように追走。
中団のインにサトノラーゼンと、その外ドゥラメンテが併走。これを直後でレーヴ
ミストラル。その後方にリアルスティール。そして出遅れたサトノクラウン。タンタアレグリアとポルトドートウィユは最後方をゆっくりと追走。
果たして1000mを何秒でいくのか。11秒台を刻み58秒8。もう少し遅い流れを予想していた私には意外でした。ところが、この5F、1000mを通過したと途端、12秒5―12秒5-12秒4―12秒4と急にダウン。
このダウンした流れによって、4コーナーを目指して後続がじわじわと、にじり寄って来ていたのです。

そして、直線に入るや否や2番手のキタサンブラックの北村
騎手がステッキを入れて追い出しにかかります。そうはさせまいとミュゼ
エイリアンも必至の粘り腰で応戦。ピッタリと先行馬の直後についていたコメートが今にも前を捉えそうな勢いで急接近。

そして、ドゥラメンテは4角で先頭グループと差があったのですが、なんと直線入り口から猛然と
デムーロ騎手の追い出しが始まりました。その一陣の風にも似たドゥラメンテ突風は、あっという間に先行各馬をのみ込み、アッサリと突き放して行きます。なんとラスト200m前にしたことでした。直線入り口から追い出してゴールまで息が続くのか、その不安もあっという間に杞憂。ゴール前先頭に立ったドゥラメンテは、そのまま脚色が衰えることなく、むしろ余裕さえ感じられるくらいの圧倒的なレベルで快勝。第82代、
東京優駿、
日本ダービー馬に輝きました。
時計が2分23秒2の
ダービー・レコード。それまでのドゥラメンテの父
キングカメハメハの持つベストタイムを0秒1短縮。ビッシリと叩き合いになっていたら2分22秒台の決着も十分可能だったはずです。自身のラストは余裕で33秒9。各馬は完全に脱帽ものでした。大変な馬です。

2着にピッタリとドゥラメンテをマークして、経済コースを走って来たサトノラーゼン。
岩田騎手も「内枠からスムーズに行けて楽しめましたよ」と満足コメント。
スタートで出負けしたサトノクラウンが外からよく追い詰めましたが3着まで。ラスト33秒8はメンバー最速。ルメール
騎手は「ミルコの馬が強すぎました」と、完全に勝ち馬に脱帽。
そしてリアルスティール。直線でサトノクラウンと追い比べに敗れてしまいました。「相手はドゥラメンテ1頭と考えて徹底的にマークしていたのですが、直線追い出すと同時に逆に離されてしまいました」と、ガッカリの
福永騎手。
その後日、経過診断で軽いはく離骨折が判明。
皐月賞、
ダービーと硬い馬場で、高速決着を戦い抜いた反動がでたのでしょうか。
また、5着コメートの健闘が光ります。経済コースにこだわり、3番手から一瞬は2着争いも考えられた内容は拍手ものです。直線苦しがって内にモタれなければ、もう少し踏ん張れたはずです。

私が応援したキタサンブラックは高速決着で、17番という枠順もさることながら、馬体が
皐月賞当時よりもプラス10K。木曜追い切り後の馬体重よりも、輸送して増えていたという考えられない事態。明らかに調整ミスだったように思いました。
それにしても、クラシック2冠達成したドゥラメンテ。秋は凱旋門賞という声が聞こえる中、まずは
菊花賞を目標に仕上げられそうです。夏の動向から目を離せません。
