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Archive for 競馬

ゴールへのブラックホールは内側にあったのか、震撼させたインサイド強襲劇!!

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 想像を絶することが起きました。開幕週の福島芝1800m。良馬場で上々のコンディション。そのトリッキーなコース形態からフルゲートの最後方グループでは、よほどペースにでも恵まれない限り、明らかに厳しい競馬を強いられることは必然の理でした。

 「ラジオNIKKEI賞」は一昨年がフレールジャック、昨年がファイナルフォームとマイラー系の強い馬が優勝。今年もその要素が強いという見方が一般的でした。

 GIのNHKマイルCで2番人気に推され、見どころ十分の僅差の5着に頑張ったガイヤースヴェルトが、当然といえば当然の1番人気。距離もダート1800mの新馬戦で楽々7馬身差。毎日杯がキズナの2着。まったく心配ご無用だったのです。しかも、先行して折り合える起用さから福島の舞台は大歓迎。宝塚記念を制して気分上々の内田博騎手を迎えて、ガイヤースヴェルトに頼るファンの気持ちは、ハンデ戦とはいえ他を圧するものがあったように思います。

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 とはいえ、初芝挑戦だった毎日杯で、1600m通過で驚きの1分33秒9という古馬の重賞級のタイムを叩き出し、NHKマイルCでも逃げたコパノリチャードを2番手で追走。ここでも先頭に立った1400m通過が1分20秒7。キャリア3戦の3歳馬にしてみれば極度の疲労が当然ながら蓄積されていたはずです。

これは担当する関係者でもわからない疲労残りのままラジオNIKKEI賞に突き進んできたのでしょう。当初は7月10日に大井競馬場で行われるジャパンダートダービーに出走の意思だったのですが、だいぶ前の段階の下調べで除外される可能性があると知り、ラジオNIKKEI賞に急遽、矛先を向けたのだとか。私の目には、もしかして疲労が残ったまま出走してきたのではないか、という危惧があったのです。

 このガイヤースヴェルトのようなケースは、過去のラジオNIKKEI賞でもGI好走馬がコロコロと敗れていたように、春の蓄積疲労がまだ解消されないままに出走に、踏み切って出走してくるケースが多かったことも事実でした。

 今回は顔ぶれから単騎逃げのナンシーシャインのマイペース。これにガイヤースヴェルト、フラムドグロワールが楽々と好位置をキープ。こういった流れでは最後方から一気差しは難しいだろう、やはり前々で対応できる馬が俄然有利と私は判断。それも開幕週で外枠より内枠。という考え方をベースにチョイスしたのがシャイニープリンセス。NHKマイルCはスタートで挟まれて躓き、直線は大外からゴール前でグイと伸びてきた脚が忘れられませんでした。連勝していた当時は前で対応していたことから、自在の脚があると判断して大きく注目したのです。

 スタートでナンシーシャインが気合をつけて先頭を奪っていきます。好スタートのフラムドグロワール、シャイニープリンスが続きます。アドマイヤドバイ、ダイワストリームが好位グループを形成。その直後の外側にガイヤースヴェルト。内にはカシノピカチュウで、中団の外目には2番人気のインプロヴァイス。そして、最後方グループにはインにケイアイチョウサンがサンブルエミューズなどと待機策。

 前半の半マイルが48秒3、1000m通過は60秒5。予測通り明らかなスローで展開。そして3コーナーでここが勝負どころと判断したのか、フラムドグロワールとシャイニープリンスが、逃げるナンシーシャインに並びかけていきます。後方各馬も前に接近してきましたが、どうもガイヤースヴェルトの動きが良くありません。この遅いペースに「前に行こうと思ったけど行けなかった。3コーナーでも反応しなかったし、直線は脚が出なくて・・」と内田騎手。

 4コーナーでは早くもフラムドグロワールが先頭に立つ構え。一緒にゴーサインを出したはずのすぐ外のシャイニープリンスがとんでもない事態。外に膨らむのを御しようとして和田騎手が自身の身体をインサイドよりにほとんど傾けて、シャイニープリンスをセーブしているのです。

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 各馬もスローで手応えが良かったのか、それぞれが前の馬の外へ外へと広がって行きます。直線の入り口では内から外へ放射状に並んで追い比べ。ここに入れなかったのがガイヤースヴェルト。こうなるとコースロスの差は断然大きく、外をまわった組は壁に当たったように直線で伸びを欠きます。

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 そのときでした。最後方から4角で最内の進路を取り、ラチ沿いを直線勝負にでたケイアイチョウサンがスルスルと前に接近。内側にいるはずの他の馬がほとんどいない、という開幕週の小回りには珍しい光景。そこを利して突き進んだケイアイチョウサンがクビ出たところがゴールでした。

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 フラムドグロワールと外のアドマイヤドバイの叩き合いの外からカシノピカチュウが強襲。2着に食い込み大きな配当。

 優勝したケイアイチョウサンの横山典騎手にしてみれば、自分が乗っていた愛着あるフラムドグロワールを差しきっての優勝。してやったりと言った表情でインタビューにご機嫌で答えていました。

 「息子が向こう(函館)に行っているし、一緒に乗るというのもね・・。それにこの歳だからもう前のように無茶は出来なくなったね。函館に行けば遅くまでドンチャンだもの。あれでは身体が続かないよ。福島は自分の家から通えるからね。身体にはこれが一番ですよ」と、私に語っていた横山典騎手。

 ラジオNIKKEI賞は多分に恵まれたところがあったとはいえ、このラッキーさと判断の良さ。今年の福島は横山典J旋風が楽しみです。

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天からの雨粒はGシップにとって歓喜の涙か!安田の悔しさを忘れなかった名手、内田J!

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 それは歴史的な圧勝劇でした。強力なライバルたちに3馬身半差。まさにゴールドシップにとっては桧舞台での栄光のゴールイン。昨年の有馬記念に続くグランプリ制覇。

 7年前、単勝1.1倍というモノ凄い人気に指示された世紀の名馬ディープインパクトが、この宝塚記念を制したときが4馬身差の独走。もっとも、当時は春の天皇賞で12着と惨敗した直後のナリタセンチュリーが2着。相手に恵まれた印象があったものです。

ところが、今回はファン投票1番人気、大将格のオルフェーヴルが突然の病気で欠席したものの、昨年の牝馬3冠にジャパンCでオルフェーヴルを下した女傑ジェンティルドンナ。直前の天皇賞を圧倒したフェノーメノ。4歳世代の代表格ゴールドシップにしてみれば、相手に不足はなかったはずです。そこで3馬身半差のワンサイドレース。それも2着だったのが人気を分けたジェンティルドンナでもなければフェノーメノでもない、GⅡやGⅢで負け続けているGIとは無縁のダノンバラード。

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いったい宝塚記念で何が起きたのか検証してみましょう。私は戦前から逃げ馬シルポートが、思い切った逃げを打つに違いないと考えていました。それしかこの顔ぶれでは活路がないからです。

それは案の定でした。スタートと同時に真っ先に飛び出し、考えていた自分の世界を作り上げに行きます。それに続いたのがダノンバラードで、外からジェンティルドンナが引っ張り切れないくらいの手応えで2番手を窺う勢い。トーセンラーもこの2頭の直後。そして一気に浮上してきたのが、スタートでダッシュがつかなかったゴールドシップが、やや掛かり気味に進出。ジェンティルドンナの外にフタをする感じで好位置をキープ。

あの安田記念で人気を分けた内田・グランプリボスを、外から終始フタをする形で封じ込めた1番人気の岩田・ロードカナロア。相手をボロボロにしてクビ差でGI制覇。その時の悔しさが内田騎手の脳裏にあったはずです。

ライバルたちを前に見てフェノーメノが仕掛けのタイミングを待つような走り。逃げるシルポートはまるでマイル戦を走っているかのようなスピードで後続との差をグングンと広げて行きます。こうなると2番手のダノンバラードがまるで主導権を取って逃げているように印象。

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半マイル46秒6、1000m通過が58秒5と、シルポートはペースなどお構いなしに逃げ脚を繰り出します。パンパンの良馬場であれば57秒台前半?勝負どころの3角でもその逃げ足は衰えず、まさに大逃げのパターン。

人気の3頭はお互いを牽制しながら好位置で我慢比べ。4角を大きなリードを保って逃げ込みを計るシルポートも、さすがにガクッとペースがダウン。2番手のダノンバラードが仕掛けて先頭に上がろうとしたときに、外から一気に伸びてきたのがゴールドシップでした。3番手の間で懸命にシゴかれるジェンティルドンナ。外に出したフェノーメノも馬場に脚をとられていつもの鋭さが見られず。大外から伸びてきたトーセンラーも抜け出したゴールドシップの脚勢には影も薄い感じです。

力強く一気にライバルを突き放したゴールドシップは、あっという間に3馬身半の独走劇。ダノンバラードが懸命に頑張ってジェンティルドンナをクビ差抑えて2着を確保。そこから半馬身遅れてモガくようにフェノーメノ。そしてトーセンラー。

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ゴールインと同時にゴールドシップの内田騎手が右手で「ヨシャー!」とばかりにガッツポーズ。内田・ゴールドシップのコンビでGI4勝目。“してやったり”の宝塚記念になったはずです。

そいえば、皐月賞のときも今回と似たような馬場。4角で各馬が外をまわる展開で、ガラッとあいたインから突き抜けたのが、やはりゴールドシップでした。

ところで、この宝塚記念は毛色別に並べると、1着芦毛、2着黒鹿毛、3着鹿毛、4着青毛という品評会のような順。栗毛のナカヤマナイトは残念ながら6着でした。

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それにしても、優勝タイムが2分13秒2、レースの上がり3ハロンが38秒0。ここ2年は2分10秒台の決着。ラストが35秒台。これで驚くなかれ「良馬場」とか。ジョッキーの勝負服にハネた泥がついていても良馬場。これって本当に正確?3年前にナカヤマナイトが優勝したときが2分13秒0で、レースのラストが36秒5で「やや重馬場」。各騎乗した騎手も口々に「馬場が悪かった」とコメント。やはり「やや重」が正解ではなかったでしょうか?