世界自然遺産、白神山地の西麓にある「十二湖」。ここは広大なブナ林の中に点在する大小33もの湖沼群の総称なのです。神秘的な濃紺色の湖水で幻想的な世界を醸し出す「青池」は、十二湖の代表格。水深9mもあって湖底の老木が手に取るように見えるそうです。また平成の名水百選に選ばれた「沸壷の池」からは天然の名水が、こんこんと湧き出ているとか。大自然の恵と素晴らしさに感謝したくなるような地なのです。
ということもあって、この十二湖駅では家族連れを始め多くの人たちが下車。リュックを背負って、探索に足を踏み入れて行きました。もっとも、この駅から乗車する旅人も多く、そして車内の景観がそれまでとは、また色合いを変化させていました。
そして、リゾートしらかみ号は、欧風のリゾート地を感じさせる「ウエスパ椿山駅」に滑り込んだのです。この駅では女性観光駅長さんがお出迎え。毎日交代で迎えるそうです。
駅のホームが、すでにウエスパ椿山のエントランス。赤い円錐状の屋根、まるで欧州の城を彷彿させます。建物にはレストラン、土地ならではの食材を使った名物料理。そしてパエリアなどの欧州料理。さらにここの売りである展望温泉。なんでも開閉式展望温泉があって、ここから眺める日本海の夕日は100点満点の絶景だそうです。そばにはスロープカーもあり展望台まで10分。さらにウエスパ椿山から車で5分足らずで、伝説の名湯「黄金崎不老ふ死温泉」。波打ち際での露天風呂から見る日本海、そして、サンセット・タイム。筆舌尽くしがたいとはこのことでしょうか。
十二湖駅、ウエスパ椿山駅、後ろ髪引かれる気持ちを振り払って、リゾートしらかみ号は海岸すれすれを右手にカーブして進みます。そして「日本の渚百選」にも名がある岡崎海岸の深浦駅。ここには室町文化の残る円覚寺。これは国の重要文化財です。
なだらかな海岸のそばを走り目に飛び込んできたのが五能線、屈指の景勝地「千畳敷」。この千畳敷駅で車内放送。「これからリゾートしらかみ号は20分ほど停車します。どうぞ見事な千畳敷の奇跡、奇岩を堪能して下さい。発車が近くなりますと警笛でお知らせいたします」と車掌さん。
下車して海岸に向って歩き出します。そして直ぐに目に飛び込んできたのが、岩畳と海岸を背に立つ文学碑。小説「津軽」の一文は太宰治の世界に足を踏み入れたことを体感させます。この千畳敷海岸には、津軽藩の殿様が千畳の畳を敷いて、宴を催したという言い伝えが残っているそうです。「日本の水浴場55選」にも顔を出す海岸。岩場で囲まれた海水プールもあるのです。畳を幾重にも敷き詰めた岩場の先には、コバルトブルーの日本海。私を温かく迎えてくれました。とてもハッピー気分です。なんとなくどっかりと腰を落としたような奇岩に目を奪われていると、発車の知らせを伝える警笛が聞こえました。
列車に戻ると空腹感に襲われて、秋田駅で購入し比内鶏弁当に箸を入れたのです。旅先の土地土地での弁当は、格別に旨いということを、ここでも実感。車窓からの景観に目を奪われながらも、あっという間に弁当を平らげていたのでした。
しらかみ号は鯵ヶ沢駅に到着。五能線で日本海が望める最終駅。ここは日本の滝百選に選ばれている「くろくまの滝」がある「ミニ白神」が有名。樹齢300年を越えるブナの森。なんでも遊歩道には聴診器の箱が設置されて、ここでブナの幹に聴診器を当てると、ブナの生きている鼓動が聞こえるのだそうです。
そして、私がいる1号車に乗り込んで来たのが初老の男性と中年の女性。1号車前のフリースペースに陣取ると、持ち込んだ風呂敷から姿を現したのは日本が誇る津軽三味線。すると車内から「これから津軽三味線の生演奏が始まります。是非、地元ならではの津軽三味線の演奏をご堪能下さい」というアナウンス。
「ジャンジャン、チャカチャカ」という独特の音色に目と耳を奪われながら「津軽じょんがら節」が始まると、車内からまた大きな拍手。と、車窓に目をやると右手に見えてきたのが津軽の象徴、別名、津軽冨士とも呼ばれる見事な岩木山。この岩木山を右手に津軽平野の美しい田園風景が広がります。この風景がなんとも懐かしい古里、日本の心の風景を感じさせてくれました。
ああ、津軽平野か・・。千昌夫さんが歌った「津軽平野
さらば夏の日、感動!感激!五能線に魅せられて・・その3
「インサイドストーリト」の主演男優賞はM・デムーロが最敬礼!
その時、赤と黒縦縞に黒袖の1頭の馬が一気に先頭。地面を揺るがすような大歓声の中をゴールへ向って真一文字に駆け抜けていきます。
それはまるでアカデミー賞の授賞式でビロードのような敷き詰められた真っ赤な絨毯の上を、選ばれし者だけがウォーキング出来る特別な空間。それにも似た誇らしげに、そして力強く勇者は駆け抜けて行きます。
エイシンフラッシュでした。あの一昨年の日本ダービーで栄冠を手にした5歳の代表格エイシンフラッシュでした。前を遮るものはなし。視界良好。対岸ではフェノーメノ、カレンブラックヒルなどが争っています。
エイシンフラッシュのためにだけ用意されたVロード。ゴールに到達した瞬間、あん上のM・デムーロは勝利のステッキを右手に高々と掲げて、興奮をそのまま全身でアピール。
それはアカデミー賞で主演男優賞を手にしたときのトロフィーを高々と掲げて、喜びを全身で表現したしたときのパフォーマンスそのものでした。
今年は近代競馬150周年という記念すべき年の天皇賞。7年ぶりに天皇皇后両陛下をお迎えして、例年以上に盛り上がった天皇賞となりました。
出走馬の中にオルフェーヴルの名前こそありませんでしたが、3歳GI馬で無敗のカレンブラックヒル、そしてダービー2着のフェノーメノが参戦。レコード決着だった昨秋の天皇賞で1、2着のトーセンジョーダン、ダークシャドウ。有馬記念でオルフェーヴルの2着だったエイシンフラッシュ。宝塚記念でオルフェーヴルの2着馬ルーラーシップ。まさにトップクラスの馬が集結。
ところが、高速馬場が続いた東京競馬場に土曜日の夜半から雨。天気予報は日曜午後から雨でしたが、ほぼ午前中で小雨は上がり、午後になると陽射しも見える天気となっていました。
それもあってか芝コースはインサイドよりアウトサイド、できるだけ外側を選択して走らせようとする各騎手の思惑があったようです。このことが結果的に大きく左右することにもなりました。
主導権を取ったのは2番枠を引いたシルポート。小牧太騎手が気合を入れて捨て身の逃げ。みるみるうちに後続との差を広げていきます。離れた2番手にカレンブラックヒル。この展開は毎日王冠と同じ。また離れてダイワファルコンが3番手で、そこからまた間が開いてフェノーメノ。直後にアーネストリー、その外にジャスタウェイ。そしてダークシャドウが中団の外。その内にエイシンフラッシュ。ナカヤマナイトがいて外にトーセンジョーダン。後方のインには出負けしたルーラーシップ。先頭のシルポートから一気に縦長になる展開。
前半の3ハロンが34秒8、4ハロンは46秒0。かなり速いピッチでシルポートが飛ばします。3コーナーでは2番手のカレンブラックヒルと優に10馬身以上もある大きな差。後続はほとんど動きません。1400m通過が1分20秒7。レコード並みのハイピッチで逃げるシルポート。4コーナーを大きな差をつけたまま先頭でまわったシルポート。1600m通過が1分32秒7。
あまりの先頭との差に4角をまわったところで、2番手のカレンブラックヒルが追い出しにかかります。ダイワファルコンが続き、少し離れてフェノーメノ。アーネストリーにジャスタウェイが進撃開始。中団のダークシャドウは進路を外に取ります。ここが勝負の分岐点でした。エイシンフラッシュが最内の経済コース。後方のルーラーシップも直線は外に進路を選択。
急激に脚色が鈍ってきたシルポートを捉えたカレンブラックヒル。とはいえ4角から仕掛けたので、初めての2000mということもあり、毎日王冠で見せた我慢強さは消え失せていました。そこを直後のフェノーメノが抜け出し、これは勝たれたかと思った瞬間、ラスト200mでガラガラの最内からもの凄い勢い伸びてきたのがエイシンフラッシュ。経済コースを走り温存した末脚を全開。一気に先頭に立つとゴールに向って真一文字。フェノーメノが抵抗する間もありませんでした。
ゴール前で外からダークシャドウがジワジワと迫って来たのですが、後方から強烈な伸び脚でルーラーシップが強襲。
結果はエイシンフラッシュ、半馬身差でフェノーメノ。3着ルーラーシップ、4着ダークシャドウ。カレンブラックヒルが5着。また3歳の同期、ジャスタウェイは毎日王冠に続きカレンブラックヒルとクビ差。この辺は格なのでしょうか。
スタンド前に引き上げてきたエイシンフラッシュのM・デムーロ騎手が、下馬して右足を地面に付き、ヘルメットを外して来賓席の天皇皇后両陛下に深く最敬礼。両陛下も賞賛の拍手で迎えられました。