9月3日、秋田、快晴!カーテンを開けると、眩しいほどの光が目に飛び込んできました。眼下には秋田市の街並み、遠く奥羽山脈が広がるロケーション。
私は急いで身支度を整えてチェックアウト。急いで秋田駅構内の「みどりの窓口」まで足を急がせました。優しい色合いが感じられる駅のコンコースを行くと、目的の「みどりの窓口」に駆け込んだのです。
驚いたことに、そのルームだけは大変な賑わいで、順番待ちをしている列が続いています。私も仕方なく後列に立つと、目に入ってきたのが電光掲示板。新幹線、在来線等の予約、空席状況が流れていました。
お目当ての五能線というところに{リゾートしらかみ}という全席指定の列車があって、その空席状況によると後続の列車を含めてほとんど×のマーク。どうしても秋田駅を11時51分発の列車に乗車しないと、目的の青森駅に着くのが相当遅くなってしまうので、今回の五能線は諦めなければなりませんでした。
「どうにか1席だけ空席がありますように・・」と願いながら順番がきました。係りの駅員の方は「ちょっと見てみますからお待ちくださいね」というなり、キーボードを叩いていました。
「う~ん、お一人ですか・・」との問いに、「はい!」と即答。少し困ったような駅員の顔に不安感が過ぎります。「ああ・・ダメか~」と肩を落としそうになったときでした。
「お待たせしました。あのですね、席は取れることは取れるんですが、途中の駅で乗車される方が予約されていて、そのときは席を移って違う席になりますが、それでもよろしいでしょうか」と、尋ねてきました。藁をも掴む気持ちでいた私には乗車できることだけで大成功。即座に「はい、お願いします!」と二つ返事でにっこり。
何かスキップしたい気分。コンコースを来た通路とは反対側に出ると「リゾートしらかみ」が発車するまで時間があるので、直前に地元の人に聞いた「千秋公園」の探索に行くことにしました。
駅前の花店で忙しくしていた女性店員の方に千秋公園の行き方を教えてもらい、その方向にテクテクと歩き始めていました。ほどなくして車道の右手に一面グリーンの眩しい光景が目に飛び込んで来たのです。はすの群生でした。噴水が高く吹き上げ、暑い日だったので、一時の涼と潤いを与えてくれました。
千秋公園は、初代秋田藩主、佐竹義宣が築いた久保田城跡。桜の名所ということでも県内外に有名だとか。
はすの花は一般的に6、7月というイメージでしたが、9月に入っても咲いている千秋公園のはすの花。北国、秋田だからでしょうか。しばし見事なはすの花に目を奪われて、時が立つのも忘れていたほどでした。久保田城跡の坂道を登りかけていたところで、後ろ髪を引かれる思いで直ぐに踵を返して駅に戻らなければ・・。しらかみの発車時間が迫っていました。そして駅には5分前に到着。秋田が誇る比内鶏の地鶏弁当を手に、しらかみ号に乗り込んだのでした。
指定券の番号を頼りにたどり席に着くと、なんとそこは4人掛けボックスシート。先に座っていた方が三人。若い女性のグループでした。挨拶をして尋ねると、三人は友人同士で、秋田に住むそのグループの女性が千葉の浦安から二人を呼び寄せて、しらかみ号の旅を楽しむことになったのだそうです。
旅は道ずれとか、袖振り合うも多生の縁とかで、話の輪に入り始めたところで、車掌さんの検札。
「ああ、これはこの席ではないですね。一つ前の1号車です」と、楽しくなりかけて来たムードにストップ。というよりも、間違えて平然と着席していたことに、呆れた女性陣の視線が痛く突き刺さり、私の一番やわらかいハートの部分が崩れかけそうでした。女性に「慌て者ですみません。お騒がせしました」と陳謝して、頭をポリポリと掻きながら、すごすごと移動。
正確な席は1号車でした。一番前は空いたスペースのフロア。二人掛けでしたが隣りが途中で乗り込んでくるせいか、ゆったりとした気分で五能線のスタートとなったのです。
車内の窓が通常よりもはるかに大きく、また手入れがよく行き届いているせいか、車窓の景色が飛び込んで来るような、旅人にとっては嬉しい車内環境。
男鹿半島に行く分岐点駅の追分駅を過ぎて、干拓で有名な八郎潟駅。ここは菜の花ロードや、小泉潟公園の菖蒲がとくに有名だとか。車内から流れるアナウンスに耳を傾けながら、日本一のじゅんさいの里の森岳駅。そして奥羽本線の分岐駅、東能代駅で車両の進行方向が替わり、ここから五能線がスタート。
隣りの能代駅では駅のホーム部分で、しらかみ号の乗客向けに、バスケットシュートにチャレンジ!入れば能代駅から特別な記念品のプレゼントがあるというので、私も飛び入り参加してみたものの残念!全国制覇50回以上という輝かしい記録を持つ能代工業高等学校があることから、何でも「バスケの街」として知れ渡っているのだそうです。また、近くには日本最大級の黒松林がある「風の松原」という景勝地もあります。
美しい日本海が広がる海岸沿いを走り、人気のスポットでは、しらかみ号がゆっくりとスローに落として旅行客を楽しませてくれます。車内からは「ワーッ」という歓声と、カメラのシャッター音。
そして、世界自然遺産の白神山地の玄関口でもある、あきた白神駅に到着。観光駅長でもある菊地笑美子さんがホームでお出迎え。右手は白神山地。左手は豊かな漁場といわれる海。ここのハタハタは絶品だそうです。
隣り駅の岩館は、海岸線にせり出した岩礁が続く景勝地。もちろん有数の漁場としても有名で、夜は漁火と降るような星、実に幻想的な様相が目に浮かびます。
そして、多くの乗客が降車した五能線のベストスリーに入るといわれる人気スポットである「十二湖駅」に到着したのでした。
<続く>
さらば夏の日、感動!感激!五能線に魅せられて・・その2
たった7センチという歴史的な激戦で掴み取った3冠という重み!
単勝支持率が1.3倍。まさに不動の本命に推された2冠馬ジェンティルドンナ。史上4頭目の3冠を目指して「秋華賞」に姿を現しました。
思えば桜花賞で半馬身差、オークスが5馬身差の独走。トライアルのローズSも1馬身半差の圧勝。距離の2000mでは、まずツケ入るスキがないようにも思われて、今年の秋華賞は、まさにジェンティルドンナ一色に染まった秋華賞でした。
しかしながら、無敵の快進撃を見せるジェンティルドンナにも必ず死角はある、と私は信念のようなものを持っていたのです。
そのひとつが枠順だったのです。今回の秋華賞は当面のライバルであるヴィルシーナが1番枠。対する14番枠にジェンティル。桜花賞が15と10番枠。オークスが9と14番枠。さらにローズSが7と6番枠。最大で相手と5番枠しか開きがなかったのが、今回は13番枠と広がったのです。ジェンティルドンナにとって最大の目標としている馬が、離れれば離れるほど当然ながら見づらく競馬は難しくなります。逆に失うものがないヴィルシーナにとっては、大胆な作戦が組みやすくなるのです。
しかも、今回は強力な逃げ馬が不在。内枠には差し追い込みタイプがほとんど。「それなら一気に先手を取って経済コースを、しっかり走ってくれば、何とかなるかも知れない。ジェンティルを負かすにはこの作戦しかない」と、ヴィルシーナの内田博騎手は、胸に秘めるものがありました。
一方、大本命のジェンティルドンナにとっては、少しイレ込み気味だったので、折り合いさえ付けて行ければ、オークスで見せた強烈な末脚からも必ず勝利はついてくる、という岩田騎手の思いだったはずです。できれば、ヴィルシーナという目標を視野から離したくない、という思惑もあったでしょう。
そして、注目の秋華賞はスタートを切りました。ゲートが開くやいなや最内からヴィルシーナの白い帽子の内田騎手が、懸命に手綱を押して押して主導権を主張。これには他のジョッキーも仕方なく、それぞれのポジションで折り合いに専念。注目のジェンティルドンナも好スタート。じんわりと中団外目のポジションで機を窺う形。各馬接近した位置取りで、好位置近くには3番人気のアイムユアーズ。
ゆっくりしたペースで逃げるヴィルシーナの外側にメイショウスザンナ、その直後にアイスフォーリス。キャトルフィーユがインにいて、その直後にダイワズーム。前半3ハロンが36秒5の超スロー。過去10年で1番遅いペース。半マイル通過が49秒9と未勝利並みの流れ。先頭のヴィルシーナが1000m通過にさしかからんとしたときでした。出負けして最後方にいたチェリーメドゥーサが、イチカバチカの大勝負に出たのです。小牧太騎手が思い切って仕掛けて、馬群の外をグングン浮上。あっという間に先頭に立つとペースを緩めず、そのまま2馬身、3馬身とみるみる2番手以下の後続を引き離していきます。
1000m通過が62秒2、前半1200m通過が1分13秒8。2番手のヴィルシーナも先頭に立っているチェリーメドゥーサは無視。あくまでも照準はジェンティルドンナ。
そのジェンティルドンナも3角からジワジワ進出態勢。4角で外をまわって好位置の直後近くに浮上したものの、ここで少しモタつき気味。
一方、快調に飛ばしたチェリーメドゥーサは4角をまわったところで、後続との差が6、7馬身差。大歓声の中で大きな水をあけてゴールを目指します。
2番手のヴィルシーナが追い出しを開始。そのとき外から懸命にジェンティルドンナが接近。そしてヴィルシーナの外に並びかけたまでは良かったのですが、前を行くチェリーメドゥーサが必死の粘り腰。ここから内にヴィルシーナとジェンティルドンナ、内田と岩田の激しいバトル。ゴール50m手前でチェリーを抜き去ると、一旦、ジェンティルが出たのですが、そこからヴィルシーナの真骨頂。二枚腰で盛り返して、頭の上げ下げ状態で、両馬譲らず並んでゴールイン。
ゴールを過ぎてお互いに見つめ合う岩田・内田の両ジョッキー。何か語り合い、次の瞬間、岩田騎手がガッツポーズをして大きな声で吠えたように見えました。
その差はたった7センチ。むろん傑出した能力と、その並外れた勝負強さ。そして強運が全てミックスしたような馬がジェンティルドンナ。あのウオッカやブエナビスタでさえ成しえなかった秋華賞優勝。そして牝馬3冠制覇。その偉大さや重みは、時を刻む歴史の中で、一段と光り輝くはずです。
また、ハナ差敗れたヴィルシーナ。ベストを尽くしてジェンティルドンナの牙城を崩せなかったものの牝馬3冠全てオール2着。ジェンティルドンナがいなければ、まさに3冠馬でしたが、それでも全力投球する彼女、ヴィルシーナに心から拍手を送りたいと思います。内田博騎手自身もヴィルシーナを誉めてあげたいとコメントしていました。