4年前のスクリーンヒーロー、一昨年のトーセンジョーダン、そして昨年のトレイルブレーザーと、アルゼンチン共和国杯の優勝馬は、その後、GI戦線でも大活躍。ハンデ戦ではありますが、長距離部門、注目の一戦なのです。
今年は阪神大賞典でオルフェーヴルを破る大金星、春の天皇賞でも5着に頑張ったギュスターヴクライが1番人気。大器と評判になっていた京都4戦3勝のルルーシュが2番人気。夏の新潟記念で0秒1差の大接戦を演じた進境著しいムスカテールが3番人気。実績上位のオウケンブルースリが4番人気と続きましたが、今春の天皇賞でトーセンジョーダン、ウインバリアシオン、そしてオルフェーヴルを相手に、4馬身差の圧倒的強さを見せつけたビートブラックが衝撃的な7番人気。準オープンを勝ち上がったばかりのオーシャンブルーや、1000万をやっと勝ってきたマイネルマークよりも人気薄。
ビートブラックにとって59Kというハンデ頭ではありましたが、春の天皇賞時の顔ぶれから考えると、信じられないくらいの手薄なメンバー構成。7番人気とは甘くナメられたものです。これが3200mの天皇賞ではなく、宝塚記念を圧勝だったら7番人気とはならなかったはずです。
春の天皇賞といえば、3年前の天皇賞馬で、2年前の春の天皇賞でも2着に頑張ったマイネルキッツ。オールカマーをひと叩きして今回のアルゼンチン共和国杯に顔を出してきました。人気は12番人気。
ビートブラックが1番枠を引き当て好位のインと絶好のポジション。マイネルキッツも先行馬の真後ろに付けて機を窺います。共に理想的なポジションでした。
4コーナーでは逃げたミッキーペトラの2番手でガッチリと折り合いを付けていたルルーシュが、抜群の手応えでスパートの機会を窺います。その直後にトウカイパラダイスとマイネルキッツ。その後ろの内にビートブラックと、外からムスカテール。それぞれ手応えはバッチリでしたが、ここから流が11秒台。ラスト34秒5の決着。
我慢できないとばかりに先頭に立ったルルーシュ。マイネルキッツは付いていけず早々に脱落。ビートブラックもしぶとい末脚を繰り出したのですが、34秒台の決着では勝ち負けには程遠く、自分の位置を死守するだけで精一杯。そこをムスカテールが力強く伸びてルルーシュを追います。
ギュスターヴクライも前半の位置取りが悪く後方から差を詰めるだけ。大外に進路を取ったオウケンブルースリも往年の切れが見られず。
結局、錚々と抜け出したルルーシュが横綱相撲で、差を詰めてきたムスカテール以下を完封。懸命に頑張っていたビートブラックは、ゴール寸前でインから伸びてきたマイネルマークに差し込まれて4着に後退。2、3着の差が2馬身半差。これは地力と勢いの差だったような気がします。
そして、マイネルキッツはブービーの13着。ひとつ前の12着イケドラゴンと大差。9歳という年齢もあり現役続行は可哀相だというファンの声。このまま酷い成績を続けると、春の天皇賞という歴史的な冠が色あせて見えてくるのです。
また、8着と意外に走った15番人気の7歳牝馬アースシンボル(二ケタ着順続行中)に後塵を浴びた馬のオープンでの復活はあるのでしょうか。
アルゼンチン共和国杯にみる3200mの最高峰「天皇賞」を制した意義!
出たぁー!クラシック級の凄い逸材が2頭も!!
“1分33秒8”の時計が電光掲示板に輝いています。レコードでした。第1回の2歳牝馬による重賞「アルテミスS」。
優勝は1番人気に推されたコレクターアイテム。9月の阪神、新馬戦を勝ち、2戦目のデイリー杯2歳Sでは牡馬を相手に、ラスト33秒2の豪脚で差のない4着。この一戦で株価がグンとアップ。牝馬同士であれば勝てる、という思いで単勝2.7倍のオッズ。
戦前から私はある馬に心が奪われていました。アユサンという馬です。キャリア1戦の馬でした。東京のデビュー戦が私には衝撃の内容だったのです。スタートで出遅れて最後方。中団に押し上げて直線ではモノが違う脚で圧倒。とくにラスト2ハロンが10秒8-11秒1という超ハイレベルの流れの中で、横綱相撲だったわけですからゾクゾクする感覚に襲われたのです。自身のラストは33秒6。余裕でこの時計はタダモノではない、という思いで2戦目を楽しみにしていました。
競馬週刊誌に目を通しても人気がほとんどないことを確認。当日の専門誌、スポーツ紙にもそれほど人気がなく、穴党独特の高鳴る胸の鼓動を抑えきれない気持ちだったのです。
ところが、当日フタを開けてみると、これが単勝2、3番人気の支持率。これには面食らいました。新聞紙上の人気が反映していないのです。しかも、当日のグリーンチャンネルの参考レースもスルー。
それなのに何故この高い人気?改めて競馬ファンの確かな目を再確認させられたのです。結局、4番人気に落ち着きましたが、それでも、まあ、馬券はなかなかの配当。
スタートで挟まれる感じで1完歩出負けしたアユサン。一方の1番人気コレクターアイテムもスタートでダッシュつかず後方。外枠からジーニマジックが飛び出し、ウインプリメーラが追いかけたためにペースは半マイルで46秒6、1000m通過が58秒9という2歳牝馬にとっては比較的緩みないペース。
アユサンはのんびりとシンガリ近くを追走。コレクターアイテムも後方のイン。4角で最後方から大外に進路に取るアユサン。コレクターアイテムはラチ沿いのインサイド。直線に入っても最後方のアユサン。インから間を縫うようにコレクターアイテム。
直線先頭に立ったウインプリメーラ。新馬戦ではコレクターアイテムを激しく追い詰めた馬です。それでも、さすがに東京コース。直線坂を上がったところで脚色が鈍り始め、内から抜け出たコレクターアイテムが先頭。そのときでした大外からモノ凄い末脚でグングン肉迫してきたアユサン。その脚色から突き抜けそうな勢いでしたが、丸山騎手は右ステッキを入れて、コレクターアイテムに馬体を寄せて行きます。馬体を併せられそうになったコレクターアイテムもさるもので、ここから勝負強さを発揮。懸命に追うアユサン。振り切ろうとするコレクターアイテム。2頭のマッチレース。
結局、半馬身差振り切ったコレクターアイテムが優勝。アユサンが2着。3馬身離れてウインプリメーラ。もし内に馬体を併せに行かず、外側を真っ直ぐ走っていたら結果は微妙だったはずです。
むむ・・悔しい○◎☆印。ああ単勝が、馬単が、3連単が・・。◎○☆で3連単が16万余円もついたのに・・。
それにしても、この開催が進んだ時期に、マイル1分33秒8、アユサンはラスト33秒5。馬体が494Kでディープインパクト産駒。間違いなく来年の桜花賞を意識させる逸材です。
レース後、丸山騎手は「相当走る馬ですよ。まだ後ろがゆるいところがあるのに、ここまで走るのですから、パンとすれば楽しみな馬ですよ」とコメント。
もっとも、優勝したコレクターアイテムもハーツクライ譲りの勝負強さ。しっかりした馬格。これも文句なしにクラシック級です。